推しより先に死にたくない! あなたの好きなものを教えて、と言われて、そのとき思いついたものを伝える。車内に響くラジオがタイミングよくいい感じの曲を流していると、これなんていい感じだよね、と便乗して。こちらがハンドルを握っているというだけで容易くそこそこのムードを作り出せるのだから、それで十分だった。
しかし後日、「あれを聴いた」「同じ歌手の他の曲を聴いた」などと報告されたって、反応に困る。添えられる感想が、ほとんどの場合自分が抱いた所感の熱量を上回っているからだ。
だから、良くないことだとわかっていて、ああそう、と生返事をするたびに、好きなんじゃなかったの、と怪訝な顔をされる。そういった些細なことがきっかけになって、関係に亀裂が入って。弁明に力を尽くしてまで繋ぎ止める気力はないので、去っていく背中を追ったことはない。あまりにもろくに続かないものだから、最近はもうめっきり枯れ気味だ。
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