「ちょっとお兄さま、ちょ、っと。聞いてますか、ねぇっ」
リビングにはユーリア君の電話の声が響いていた。
相手は彼の兄、だろうな。よく電話をしているが、俺と話す時とはまた違った接し方をしているのが見ていて新鮮だ。敬語もよく外れる。
それにしても、何の話をしているのだろう。
「だ、から、無理ですってば。数時間でもっ、小さい子の面倒なんて見られませんよ」
どうやら、何か頼み事をされているようだが。子供? 面倒を見る? 数時間? 何だかなかなかな面倒ごとな予感がするな。
「聞いてますか? お兄さま、お兄さま? ちょ、聞いてるのっ! リアムっ!……あぁ"〜……」
ユーリア君にしてはやや強い語気を最後に通話は切られたようで、リビングに静寂が訪れる。
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