8/11 「花火」「主たちと花火大会、本当に行かなくてよかったの?」
納屋の格子窓からは強い西日が差し込んでいた。本丸の刀たちは皆、万屋商店街が主催する祭りに繰り出している。盆飾りの提灯が見つからないため今年飾り付け担当の長谷部は本丸に残り、去年提灯を片付けた燭台切もまた納屋に籠もっていた。
二振りとも、そう小さなものでもないのですぐに見つかるだろうと高をくくっていたのだが一向に見つからない。木箱や段ボールを片っ端から開けては閉じる。
「護衛は例年短刀たちの役目だろう。俺が出張る幕ではない」
「でも去年は行ってたじゃないか。どこかにしまい込んだのは僕なんだし、捜し物くらい任せてくれてよかったんだよ」
「去年は近侍だったから行ったまでだ。今年は近侍でもなし。俺は人混みに興味はない」
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