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修道院の鐘の音が聞こえて、どれくらいの時間が経っただろうか。
眩しい。ほとんど動かせない頭の角度を僅かに変えて目線を動かすと、修道院の石造りの窓から光が差し込んでいるのが目の端に写った。
ああ、微かに階下からの喧噪も聞こえる。下働きとして働いてくれている者たちはもちろん、軍の皆も起きだしている頃だろう。保護した戦災孤児の跳ねるような高い声に、修道士達の静かな話し声、せわしない足音と、見回りをする飛竜や天馬の羽ばたく音。今日の食堂の当番は誰なのだろうか。炊事も、洗濯も、掃除も。その他にも様々な雑務の工面を先生やセテス殿を取り纏めとしてやってくれているのだろう。
俺も、先生やギュスタヴに殆ど丸投げしていた軍の管理やら資金やらの仕事を引き取ってやらねばならない。
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