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カチャリ、パタンと。隣の部屋から外に出る気配があった。
ぼんやりと寝台の上に腰かけながら、窓の方を見上げた。雲ひとつない空で煌々と輝く月が空の高い位置に浮かんでいる。
今は何時ぐらいなのか分からないが、いつもならばこんな時間に起きているのは見張りの兵と……俺ぐらいだろう。他には夜遊びに繰り出すシルヴァンぐらいだが、このような中途半端な時間帯にうろつくことはしない。
あいつにしては珍しい。早朝から鍛錬に励むあいつは夜遊びとは無縁で、休息を取るべき時には速やかに就寝する。
だから、特に何の理由も無いはずの――帝都を攻め落として、大修道院に一旦引き上げて戦争の後処理に明け暮れている今、フェリクスが夜中に起き出して、向かう場所に心当たりは無かった。
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