ラストダンスを踊るビジパ 静かな夜だった。
最近、無限城の中で板張りの広間を作り、アーチ型の天井に合わせ輸入したばかりの華やかなシャンデリアを設置し、窓はステンドグラス、柱には唐草模様の細工が施されている。
壁紙も輸入した最高級の物を使い、政府肝煎りの迎賓館よりも豪華なダンスホールがこの地下深い無限城には作られているのだ。
無惨はそこでひとり、手に入れたばかりの蓄音機で音楽を流す。
手回しのゼンマイ式で西洋の音楽を流す。ワルツという曲調を好むようで、機嫌の良い時は流した音楽に合わせて歌っている姿を黒死牟は何度も見かけていた。
掠れたレコードの音と軋むゼンマイの音。
本当に静かな夜だった。
「黒死牟」
無惨に呼ばれ、足元に跪く。
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