通報のあった路地裏には、血の匂いが漂っていた。奥の薄闇に目を遣れば、鈍くネオンを反射する液体が見える。一つ一つは大した量ではないが、いかんせん数が多い。この先に平和な情景が広がっていることは有り得ないだろう。酔っ払いの喧嘩よりはマシだが、話が通じるか分からないという点においては同じようなものだ。
こんなことになっている原因は、アシストロイドの暴走らしい。オーナーの顔色が随分悪かったところから見ても、ある程度は正確な情報だろう。あの様子では自分を守れと命令したかも怪しい。これがどこぞの成金野郎であれば弱みとして事実確認を行う所だが、さすがのブラッドリーでも、若いワーキングクラスの兄弟をどうこうしようとは思わない。子供の扱いがうまい者に対応を任せ、他の部下を連れて路地裏の奥へと進む。
2025