【たまにはメンテナンスを】
「司くん……」
心配そうに眉尻を下げた類の両手で、ぎゅっと手を握られる。
放課後の屋上だ。類に呼び出されてここに来てからこちら、ずっと同じ問答と同じ会話を続けている。今日はフェニランでの練習も休みの日だから時間はあるが、いい加減にうんざりだった。
オレはややオーバーにため息をついて繰り返す。
「何度も言うが、本当に何もない」
「嘘だ。じゃあどうして、今日一日そんなに口数が少ないんだい?」
「いや普通に喋っていたが……」
自分の行動の記憶をざっと遡って思い出してみたものの、類に言われるほど黙っていたような覚えはない。友人に話しかけられた世間話にも応えたし、授業中、教師に当てられた問題にもそつなく答えた。廊下ですれ違った冬弥と彰人には、逆にオレの方から話しかけたりもした。──極めていつも通り、だったはずだ。
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