「公子」タルタリヤは璃月で悪名高き男だ。
岩王帝君の暗殺に関わったとされ、帝君の死が陰謀ではなかったことが明らかになってなお、その疑惑は根深い。
あのオセルの復活に加担し、璃月を壊滅させようとしたのは事実でもあるため、タルタリヤは璃月の人々の冷たい視線も特に気になどしていなかった。
そもそもが闘争を望む人間だ。安寧と真逆の人生を送っている。
嫌われ者であるならば、より好敵手にも出逢えるだろうと期待をしているのだが、あの事件以来、タルタリヤのもとに舞い込んでくるのは、タルタリヤに預けられた北国銀行の事務仕事とつまらない取り立てばかりである。
先の事件が刺激的だっただけに、この落差が耐えがたく、タルタリヤは仕事に区切りをつけては街の外の魔物を相手にしてきたり、芝居を見に行ってみたり、釣りに出かけてみたり、果ては秘境を荒らしてきたりと真剣に気晴らしを試してみたのだが、どうにも退屈から逃れられずにいた。
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