きみを攫うは夏の青「ロナルド!!そっちに行ったぞ!!」
背後から響くショットの声に、おう!!と。任されたと応えるべく、後ろも見ずにただそれだけを告げた。
蠅叩きを片手に、するするとまるで蛇のように。器用に石段を駆け上がっていく下等吸血鬼を追いかけながら、昏闇が深くなる石段を踏み込んだ。
歴史を刻んだ古びた石段。乱暴に駆け上がる度に、からん、と石が鳴った。
古くからこの地にある常夜神社。普段であれば丁寧に踏み締める石段も、緊急事態とあってはその配慮も難しい。
目の前の下等吸血鬼を逃せば、市民に害が及ぶかもしれない。
一刻も早く退治しなければ、と。
目の前にぶら下げられた大義名分を言い訳に、多少の無礼は目を瞑って貰いたい。
神様の住む社。それを目の前に一体何の許しを乞うというのだろう。
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