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    まっぴーの残念創作

    REHABILI【音の覚書】

    今回は楽の先輩、音兄さんのお話です。
    本編にも登場させているのでキャラ作りのために書きました。
    自分の作品のキャラは全員愛していますが、彼は特にお気に入りのキャラなのでもっと理解してあげたいなと思って。
    楽ちゃんや颯ちゃんよりだいぶ大人なので思考も多少大人…なはず。
    お暇つぶしになりますように。
    音の覚書このところ睿様がどうにもよそよそしく、何か隠し事でもあるのかと不安になることがある。

     しかしながら。世話役が下の者に全てを話す義務も義理もない。本来こちらがいちいち気にかける必要もないことだ。だが、そうとわかってはいても不安になるのは側で仕えているからこそのものだと直感が告げる。尋ねるべきか。気付かぬふりを続けるべきか。その僅かな戸惑いさえ睿様に気付かれていようものだが、お互いあえて普段通りを装う。
     そんな他人行儀を平静で覆い隠したままの日々を過ごすのにももう慣れたものだ。

     その日は楽が西火へと旅立つ日であった。早朝から用意しておいた饅頭を紙で包み、小さかった頃の楽を思い出す。文使の弟子入りは5歳からだが、おそらく楽は3歳かそこらだったのではないか。先輩がどこからともなく連れてきた当時の楽は体も小さかったが言葉もまだたどたどしく、とにかく手がかかる子ではあった。しかし愛らしい顔立ちが幸いしたのか兄姉弟子たちがこぞって世話を焼き、常に誰かしらに手を引かれて過ごしていたものだ。ここへ来る前のことを思い出すのか夜中にわんわんと泣き出すこともあった。そんな時は夜番の先輩に抱かれてあやされていたり、時に睿様に泣き疲れるまで背負われていたりもした。そんな楽を遠目で眺めながら、私も背負う時がきたら子守唄でも歌って庭を歩いてやろうと思っていた。だがそんな日はこないまま楽はどんどん成長していった。他の子供たちと同じように。時は待ってはくれないものだ。
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