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    RemFeline

    DONE『N県の山奥に極上のキノコソバを出す店があるらしい』
    私はそんな都市伝説を頼りにバイクを駆っていた。

    とある山奥で一人の女バイカーが見たものとは。
    キノコとバイクと都市伝説 あのトンネルには地縛霊が出るだとか、あの橋の上では首なしバイカーが並走してくるだとか、バイカーの間で語り継がれる都市伝説は枚挙に暇がない。
    バイクを駆るのは好きだけど、幽霊のたぐいが苦手な私はそういう都市伝説については聞こえないふりをしてきた。でも、私が一つだけ記憶に残している都市伝説がある。

    『N県の山奥に極上のキノコソバを出す店があるらしい』

     私にとってのツーリングはもちろんバイクで走ることが第一目標だ。そして、第二目標が『食』。バイクで美味しいものを食べに行く。それが私のツーリングだ。そんな話を聞いてじっとしていられるだろうか。いられないだろう。
     そうして私は週末になるとN県に向かってはしらみつぶしに山々の道を駆けていた。まだその蕎麦屋は見つかっていない。捜索が空振りに終わっては目についた店にふらっと入って、ソバの気分の口にそれ以外の料理を詰め込んでいる日々だった。その虚しさに疑いの心が芽生えていた。イマドキ地図で事前に探せない店なんて本当にあるのだろうか、所詮都市伝説なのだろうか。
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    hujino_05

    DOODLEコンビニ店員伏×リーマン五(未満)小話
     伏黒恵はコンビニでバイトをしている。
     理由は一人暮らしをしているアパートから近かったからである。それ以外の理由などない。伏黒は愛嬌があるタイプではないが、(昔はヤンチャもしたが)どちらかと言えば真面目な方である。遅刻もせずにきっちり働き、品出しを任せれば美しく棚が整える。レジではすこし不愛想に見える時もあるが、稀に浮かべるほほえみが一部の客にウケて人気にすらなっているし、たいていの客も伏黒の顔に笑顔が浮かんでいないことよりも、手際がよく礼儀正しいところを評価した。そうやって、伏黒はそのコンビニに、好意的に受け入れられていった。
     その日の伏黒は、先輩の代わりとして初めて夜勤に入っていた。日付が変わった直後のそのコンビニには、客はめったにこない。品出しや掃除、賞味期限のチェックも終わり、発注に関してももう一人のバイトが率先して行ってくれたおかげで、すっかり仕事は終わっていた。ホワイト思考な店長のおかげでワンオペは無く、必ず二人はいるのがこの店舗の良いところではあるが、今に限って言えば「良い」と言い切れないところがあった。つまりは暇だった。伏黒恵は暇をしているのである。暇すぎて、もうひとりのバイトとの会話も早々に下火になり、互いに黙っているのも気まずくなり、ふらふらと用もなくレジに立ちに出て来てしまったぐらいには暇だった。バックヤードでは上着をきていたが、空調の効いた店内ではすこし暑い。上着をバックヤードの入り口脇に畳んで置き、意味もなく店内を眺める。そんな時だった。入口に人影が見え、入店のメロディが聞こえてきたのは。
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