新書
kayu64
DOODLE司ブラ新書メーカーのはこっち
→https://twitter.com/mr64t/status/1466780076973129730
「お、ブラッド。いいところに来たな」
「司令、明日の会議について少し相談が。……いいところ、とは?」
司令室の扉を開け、すぐに小首を傾げることになったブラッドに、先ほど広報部から渡されたものを見せる。尋ねれば相談は急ぎではないようで、まずは私の話を聞いてくれるらしい。行儀悪くデスクのふちに体重を預けていた私の前にきて、ブラッドは手にあるそれを確認した。
「カチューシャ?」
「ああ。猫耳カチューシャ。夏にやる企業コラボの一環でね。撮影用のものを広報部が参考にとくれたんだ。お前もつけることになると思うぞ」
そう言って、黒くふわふわとした素材で作られたそれをブラッドに差し出す。とんとんと自らの頭を指させば、ブラッドは抵抗なく持っていたカチューシャを身に着けた。
2065「司令、明日の会議について少し相談が。……いいところ、とは?」
司令室の扉を開け、すぐに小首を傾げることになったブラッドに、先ほど広報部から渡されたものを見せる。尋ねれば相談は急ぎではないようで、まずは私の話を聞いてくれるらしい。行儀悪くデスクのふちに体重を預けていた私の前にきて、ブラッドは手にあるそれを確認した。
「カチューシャ?」
「ああ。猫耳カチューシャ。夏にやる企業コラボの一環でね。撮影用のものを広報部が参考にとくれたんだ。お前もつけることになると思うぞ」
そう言って、黒くふわふわとした素材で作られたそれをブラッドに差し出す。とんとんと自らの頭を指させば、ブラッドは抵抗なく持っていたカチューシャを身に着けた。
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「ドライブ?」
今日の仕事も終え、あとは電気を消して司令室を出るだけというところだった。
「ああ。片づけたい仕事も終わったし、明日はオフだ。気分転換にこれから一人で走ろうかと思っていたんだが、司令もどうだろうか。以前、そういう話をしていただろう」
急だから、難しければまた次の機会に。そう続けるブラッドに言葉を被せる。
「行こう! すぐに準備する。着替えるから、三十分だけ待ってくれ」
「いや、俺も一度シャワーを浴びたい。一時間後にタワーの裏口に降りてきてくれるか」
それから急いで自室に戻り、シャワーを浴びて着替えが終わる頃には、もう既に待ち合わせの十分前だった。端末にはブラッドからの『なるべく暖かい服装で来てくれ』というメッセージが入っていて、ダウンジャケットにマフラーを巻いた。財布とスマートフォンとカードキー、必要なものだけを持ってエレベーターへ向かう。
2368今日の仕事も終え、あとは電気を消して司令室を出るだけというところだった。
「ああ。片づけたい仕事も終わったし、明日はオフだ。気分転換にこれから一人で走ろうかと思っていたんだが、司令もどうだろうか。以前、そういう話をしていただろう」
急だから、難しければまた次の機会に。そう続けるブラッドに言葉を被せる。
「行こう! すぐに準備する。着替えるから、三十分だけ待ってくれ」
「いや、俺も一度シャワーを浴びたい。一時間後にタワーの裏口に降りてきてくれるか」
それから急いで自室に戻り、シャワーを浴びて着替えが終わる頃には、もう既に待ち合わせの十分前だった。端末にはブラッドからの『なるべく暖かい服装で来てくれ』というメッセージが入っていて、ダウンジャケットにマフラーを巻いた。財布とスマートフォンとカードキー、必要なものだけを持ってエレベーターへ向かう。
kayu64
DOODLE司ブラ※女性司令と区別するために司ブラ表記を使ってますが左右にこだわりが無いです。
し、CPじゃないかもしれない…。+かも…。まだふわふわです。
10期でミラトリじゃないチームのメンターをしていた元ヒーローの男性司令です。
その司令って思ってきくと、ブの「司令の協力なくしては…」てボイスめっちゃいいと思うんですけど、どう!?
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「冷える前に部屋へ戻ろう」
スキーグローブを外した左手を差し出され、私は思わず固まってしまった。
「手を繋いでくれるのか?」
彼の行動が私の思っている通りなのか尋ねれば、自分と変わらない位置にあるマゼンタが伏せられ、彼は差し出した手を引っ込めようとする。
「……気を悪くしたのなら」
「いいや」
何か続けようとしたブラッドの言葉を遮り、手をとる。きんと冷えていた私の指に、じんわりと彼の体温が広がった。
気を悪くするなんてとんでもない。そんな風に思わせてしまうとは、まだまだ私もブラッドとの信頼関係が築けていないな、と、ルーキー研修でメンターを務めた最初の世代として、少しばかり反省をする。
グローブで温められていた手は、己のそれより少しだけ細く、滑らかで、日頃から指の先までケアの行き届いている彼らしかった。
1919スキーグローブを外した左手を差し出され、私は思わず固まってしまった。
「手を繋いでくれるのか?」
彼の行動が私の思っている通りなのか尋ねれば、自分と変わらない位置にあるマゼンタが伏せられ、彼は差し出した手を引っ込めようとする。
「……気を悪くしたのなら」
「いいや」
何か続けようとしたブラッドの言葉を遮り、手をとる。きんと冷えていた私の指に、じんわりと彼の体温が広がった。
気を悪くするなんてとんでもない。そんな風に思わせてしまうとは、まだまだ私もブラッドとの信頼関係が築けていないな、と、ルーキー研修でメンターを務めた最初の世代として、少しばかり反省をする。
グローブで温められていた手は、己のそれより少しだけ細く、滑らかで、日頃から指の先までケアの行き届いている彼らしかった。
kayu64
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「冷える前に部屋へ戻ろう」
スキーグローブを外した左手を差し出され、私は思わず固まった。
「え…っと」
「吹雪いてきた。足元も悪いし、司令にまで遭難されてはかなわない」
まるでこうするのが当然という態度に、動揺したこちらがおかしいのかと混乱してしまう。オスカー、ウィルと共に、既に先を歩いているアキラの「おせーぞ、司令! ブラッド!」という声が飛んできて、手を振り、すぐいくと返事をした。
「グローブはしたままでいいよ。ブラッドの手が冷えちゃう」
「それでは司令の手袋が濡れてしまうだろう」
そこでようやく、ブラッドの意図を理解した。
私の手には、ウィルが編んでくれた手編みの手袋がはまっている。暖かくて、柔らかい、編んだ本人を思い出させるようなそれは、もちろん防水ではなく。雪遊びなんてしたらすぐべしょべしょになってしまうだろう。ブラッドは、これが濡れてしまうのを懸念して、素手を差し出したのだ。変にどきどきしてしまった。
1060スキーグローブを外した左手を差し出され、私は思わず固まった。
「え…っと」
「吹雪いてきた。足元も悪いし、司令にまで遭難されてはかなわない」
まるでこうするのが当然という態度に、動揺したこちらがおかしいのかと混乱してしまう。オスカー、ウィルと共に、既に先を歩いているアキラの「おせーぞ、司令! ブラッド!」という声が飛んできて、手を振り、すぐいくと返事をした。
「グローブはしたままでいいよ。ブラッドの手が冷えちゃう」
「それでは司令の手袋が濡れてしまうだろう」
そこでようやく、ブラッドの意図を理解した。
私の手には、ウィルが編んでくれた手編みの手袋がはまっている。暖かくて、柔らかい、編んだ本人を思い出させるようなそれは、もちろん防水ではなく。雪遊びなんてしたらすぐべしょべしょになってしまうだろう。ブラッドは、これが濡れてしまうのを懸念して、素手を差し出したのだ。変にどきどきしてしまった。
yahiro_niizawa
MAIKING前回ぶん投げたcqlベースの忘羨転生現代AUを新書ページメーカーさんをお借りして読みやすくしてみたものです。ラストの尻切れトンボだったところだけカットしています#忘羨 #mdzs #cql 22
AmatsuBmb
DONE守ってあげたいDomなモと、構って欲しいsubなチェのどむさぶパロです。前半モ視点、後半チェ視点。
画像(新書ページメーカー版)はツイッターで↓
https://twitter.com/AmatsuBmb/status/1424922544155414530?s=20
https://twitter.com/AmatsuBmb/status/1432684512656310281?s=20
Dom/subユニバースなモクチェズ***
「私たちもそろそろ、パートナーになることを考えませんか」
二人が生活するセーフハウスの一室でなされたチェズレイの提案に、モクマは思考も動作も停止した。
夕食を終え、二人は並んでソファに座っている。時折晩酌に付き合ってくれる相棒に、今日は酒は無し、と言われていたので、何か大事が話があるのだろうと思ってはいたのだが。
パートナー? 俺たちは、すでに唯一無二の相棒だと思っていたのだが、違ったのだろうか。落胆しかけてすぐに、いや、違う意味なのだとわかった。
「……おじさん、これでもDomなんだけど」
「それが何か問題でも?」
「へっ? ってことは――お前さん、subだったの!?」
「ええ」
男や女という身体的あるいは精神的な性別の他に、人間は第二の性別をもつ。それが、DomとSubだ。一般的に、Domは支配したい性、subは支配されたい性、と理解されている。欲求が満たされない状態が長く続くと、Domもsubも抑うつ症状などの体調不良を起こすため、特定のパートナーがいない場合は、一時的なパートナーとの行為に及ぶか、抑制剤を服用する場合が多い。
5253「私たちもそろそろ、パートナーになることを考えませんか」
二人が生活するセーフハウスの一室でなされたチェズレイの提案に、モクマは思考も動作も停止した。
夕食を終え、二人は並んでソファに座っている。時折晩酌に付き合ってくれる相棒に、今日は酒は無し、と言われていたので、何か大事が話があるのだろうと思ってはいたのだが。
パートナー? 俺たちは、すでに唯一無二の相棒だと思っていたのだが、違ったのだろうか。落胆しかけてすぐに、いや、違う意味なのだとわかった。
「……おじさん、これでもDomなんだけど」
「それが何か問題でも?」
「へっ? ってことは――お前さん、subだったの!?」
「ええ」
男や女という身体的あるいは精神的な性別の他に、人間は第二の性別をもつ。それが、DomとSubだ。一般的に、Domは支配したい性、subは支配されたい性、と理解されている。欲求が満たされない状態が長く続くと、Domもsubも抑うつ症状などの体調不良を起こすため、特定のパートナーがいない場合は、一時的なパートナーとの行為に及ぶか、抑制剤を服用する場合が多い。
すぺ2
DOODLE若利くんお誕生日に思いついたネタなんですが、なんか、薄暗い…?いや。めっちゃハートフルハッピーエンドのつもりで書きました。新書メーカー背景付きで投稿しましたが、なんか読みにくかったので
Dear… 牛島家にはいつからかサンタが夏にやって来る。
ある日の夕方、牛島若利がバレークラブから帰ってくると、玄関に両手で抱える程度のダンボール箱が置かれていた。差出人の名はなく、『若利へ』という右上がりのメモが貼られている。
玄関まで出迎えに来てくれた母を見上げると、母は若利に小さく頷く。
「季節外れですが、サンタさんが来ました。若利にだそうです。手を洗ったら開けてみなさい」
何の疑問を感じないのか、若利はただ素直にこくりと頷く。そぉっとそのダンボール箱を持ち上げると、大きさの割には軽く感じられた。
中身がなにかさえも分からないので、若利はそれを慎重に持ち運び、洗面台の足元にそっと置く。それからいつものように固形石鹸を丁寧に泡立て、爪の中まで丁寧に洗った。いつでも乾いた清潔な物がかけられているタオル掛けのタオルで丁寧に指先までしっかりと水分を拭き取ってから、もう一度若利はダンボールを抱えて居間に向かう。
1835ある日の夕方、牛島若利がバレークラブから帰ってくると、玄関に両手で抱える程度のダンボール箱が置かれていた。差出人の名はなく、『若利へ』という右上がりのメモが貼られている。
玄関まで出迎えに来てくれた母を見上げると、母は若利に小さく頷く。
「季節外れですが、サンタさんが来ました。若利にだそうです。手を洗ったら開けてみなさい」
何の疑問を感じないのか、若利はただ素直にこくりと頷く。そぉっとそのダンボール箱を持ち上げると、大きさの割には軽く感じられた。
中身がなにかさえも分からないので、若利はそれを慎重に持ち運び、洗面台の足元にそっと置く。それからいつものように固形石鹸を丁寧に泡立て、爪の中まで丁寧に洗った。いつでも乾いた清潔な物がかけられているタオル掛けのタオルで丁寧に指先までしっかりと水分を拭き取ってから、もう一度若利はダンボールを抱えて居間に向かう。
serendipity_gf
MOURNING捨てられた村雲江を拾う話、一日目~六日目。雲さに。女審神者。
Twitterで上げたところまとめ。
新書メーカーの仕様が好きなので画像で。テキスト形式は支部にあげてます。 46
yaginoura0811
DONE事後ツバショ。新書で読みにくかった人のためのポイピク投稿。爽やかな朝には程遠い【ツバショウ】ツバサと、所謂そういった行為の後は大体ツバサの方が先に寝落ちするパターンが多かった。
御多分に洩れず今もすやすやと鼻ちょうちんでも膨らんでそうな寝息を漏らしながら夢の中にいるツバサを置いてショウはベッドから降りた。
足音を立てないように洗面台まで顔を洗いに向かい、心なしか重い足を擦るように歩く。その音で起きてしまいそうだったが、あいにく普通に歩ける状態じゃない事に若干面倒くさささえ感じる。
ほんの数秒の距離なのに何分も歩いた気分だ。
そっと洗面所のドアを閉めて汗でベタつく顔を水で軽く洗ってからタオルで拭きながら、ショウは自分の緩んだ顔を見やる。
切長で吊り目な目は下がっていて覇気がなくアンニュイな雰囲気だ。
1150御多分に洩れず今もすやすやと鼻ちょうちんでも膨らんでそうな寝息を漏らしながら夢の中にいるツバサを置いてショウはベッドから降りた。
足音を立てないように洗面台まで顔を洗いに向かい、心なしか重い足を擦るように歩く。その音で起きてしまいそうだったが、あいにく普通に歩ける状態じゃない事に若干面倒くさささえ感じる。
ほんの数秒の距離なのに何分も歩いた気分だ。
そっと洗面所のドアを閉めて汗でベタつく顔を水で軽く洗ってからタオルで拭きながら、ショウは自分の緩んだ顔を見やる。
切長で吊り目な目は下がっていて覇気がなくアンニュイな雰囲気だ。
鴫野江 Kea 洛杜
DONE # 5月4日は呉子の日←私が勝手に作りました
今回は兵卒姿です
「呉起は、将軍となると士卒の中の最も低い身分の者と食事や衣服を同じにし、寝るときもごろ寝をし、進軍するときも馬に乗ったりせず、自分で食料を包んでそれを背負い、士卒と苦労を共にした(新書漢文大系より引用)」そうです。私の推しエピソードのひとつです
鉈︎︎︎︎✌✌
DONE桐野 博(きりの はく) 共鳴者性別:♀
年齢:23歳
誕生日:3/21(作った日)
身長:170cm
職業:研究者
趣味:解剖
嫌い・苦手なもの:剣技
一人称:僕
二人称:君
イメージカラー:朱色
命の危険を顧みず、好奇心と探究心の赴くままに思いついたら即行動を絵に描いたような人間。
1番好きな本は解体新書。1番興味のあるものは人間。
口癖は「人間とは、この世で一番身近な謎だ。」 4
komenyan3
DONE峻玲小話。玲ちゃんのつむじの吸引力はハンパないので峻さんは気がつくと唇が吸い寄せられてるお話。スタマイ履歴書に付けるために書いたんだけど思いのほか長くなったので、新書メーカーの画像はここに置いておく。 5kazeaki_twst
MAIKINGジャミ監🌸タイトルは未定
ジャミル先輩、感情が難しくて表現出来ない…。
書き出しのため、すごく短くて新書メーカーしてみても寂しかった…
バックアップも兼ねてテキストのみ。茜色に砂漠が染まる。それはまるで、御伽噺に出てくる黄金の山のように見えた。そんな砂漠を黙々と歩く。足元の砂は自分の足を飲み込むかのように、サラサラと崩れていく。
ふと、顔を上げたら遠くに白亜の宮殿が見えた。蜃気楼ではない本物だ。誰もが羨むその宮殿は、茜色の太陽を浴びて泰然と佇む。
それを黙って見ていたら、何故か無性に叫びたくもなり、泣きたくもなった。
誰もいない砂漠に一人、佇む。 194
pochi_stage
TRAINING手と脚と脚手描くのだんだん楽しくなってきて嬉しい〜〜 もの持たせるの難しい……あとちゃんとデフォルメしないと絵柄にあわないな……
太ももはマジで描くのが楽しいのですがなぜこんな太くなる!?欲出過ぎや
模写、参考元:
加々美高浩『加々美高浩が全力で教える「手」の描き方』SBクリエイティブ株式会社 2019.11
ダテナオト、弐藤潔『イラスト解体新書』マイナビ出版 2018.3 3
kazeaki_twst
MAIKINGアズ監🌸①タイトルはまだ未定です。
新書メーカーはやってみたかっただけ笑
作中に使われている曲は、ポカホンタスの「カラー・オブ・ザ・ウィンド」の日本語版の歌詞です。 9
pochi_stage
TRAINING腕の練習とかデュとかカトゅくんちゃん様とか(時系列は画像順と逆)マジでなんも変わってないように見えますが自分的にはスゲーーーッ顔のバランスが取れるようになって髪も描きやすくなってスゲーーッ本スゲーーッ
顔の向き全部同じだけど
ハイ
1P目参考元:ダテナオト、弐藤潔『イラスト解体新書』マイナビ出版 2018.3 3
pochi_stage
TRAININGこりゃまずいと基礎を勉強したらちょっとはマシに描けるようになったかも!?本の力すご!!!!!???いままで無理すぎた横顔もマシになってる、、、、本ってすごい
参考元:ダテナオト、弐藤潔『イラスト解体新書』マイナビ出版 2018.3 2
palco_WT
MAIKINGフィルター みんぐと王子と。新書メーカーでTwitterにあげたやつ。https://twitter.com/palco87/status/1337402360893587456災害や内乱などで壊れ、復興しかけた場所を、ずっと撮って回っているのだと彼は言った。それこそ世界各地を。
もし行けるなら、近界だっけ、向こうの世界もフィルムに収めてみたいな、と子どもみたいな笑顔で男は笑った。
壊れかけ、修復のまだただなかにある風景で、そこで生きていく人たちの姿を、一枚の銀塩に写し取る。三門市までやってきた男が、そのモデルに選んだうちのひとりは、意外なことに水上だった。
風が吹き、春の予感をはらんだほのかな温もりをともなった風が、ばさばさと屋上に佇み、警戒区域を見下ろす水上のバッグワームをはためかせる。本来、トリオンではない物理法則の影響を受けないバッグワームが風に揺れるのは、それが換装体ではなく、生身に隊服をまとい、更にバッグワームを模したマントを羽織っているからだった。
「なんで、彼なんですか」
「色気かな」
「色気?」
「そう。一秒後には自分を害してしまいそうな危うさって言ったらいいのかな。不意に気まぐれで、線路やビルの屋上から飛び降りてしまいそうな」
「確かに、ぼくたちの防衛任務《しごと》はとてもじゃないが安全というものではありませんが、彼はそこまで捨て 931
palco_WT
DONEいっそ恋なら弓場×嵐山。原作時間軸より一年~二年くらい前。
Twitterに新書メーカーで流したやつ。https://twitter.com/palco87/status/1321870729906774016知り合った高校の頃から、アポなしで遊びに来る時は、必ずメールなりメッセージアプリなり電話なりで連絡してくる男だった。
嵐山准という人間は。
だが今にして思えば、広報部隊という任を背負ったあたりのことだったろう。突然、独り暮らしの弓場の部屋を「少し、いいかな」と訪れて、途中のコンビニやファストフードで買ってきたらしいジャンクフードを手土産にして、その癖自分は全然それに手をつけず、弓場が淹れてくれた紅茶を黙って啜って、空になったら「また」と出ていく。そんなことが何度かあった。
そして何度目かに気づいた。「突然悪いな」といつものボーダーの顔で見せているものよりもどこか影の薄い笑顔を浮かべて、玄関口に立つ嵐山の、僅かに濡れた襟足や彼が絶対まとわないコロンか、トワレか、とにかく高校生の男子には相応しくない香りに。
「悪かねェーから、いい加減きっちり事情《ハナシ》聞かせろ。……迅や柿崎《ザキ》も呼ぶか、おい」
それはよしてくれるかな、とそれでも笑顔を崩さないのは、いっそ立派と言えただろう。
弓場が嵐山から引き出した「事情」はだいたい想像の通りだった。それだけ、陳腐な話ではあった。あくまで 2907
masicalbanana
MOURNING通称「家を探す話」街という新書(https://portalbanana.tumblr.com/post/189286146207/)のマンガ部分・全年齢のほう 61