濘
muhyumu3
DONEせるみぼ長編「幸せの泥濘」第四話です。「幸せの泥濘」第四話小間使いの女が出ていった。ただそれだけのこと、どうでもいいことなはずなのに。この焦燥感はなんだろう。セルは戸惑いながら、女がどこへ行ったか、なにかヒントがないか部屋中探し回った。しかし、置手紙の一つも見つからない。服や身の回りのもの、セルと暮らしてから新しく買ったほんの少しのものを除いて女の荷物は綺麗になくなっていた。セルは額を抑えながら玄関を出る。ちょうど、ファーミンがそこを通りがかった。セルはファーミン様、と呼び留める。
「セルか、どうした」
「ファーミン様、お引留めして申し訳ありません。あの……僕の小間使いを見かけなかったでしょうか」
ファーミンは少し考えてから、「ああ、あの女」と首を傾げた。なにか知っているのか、セルは前のめりになる。
5121「セルか、どうした」
「ファーミン様、お引留めして申し訳ありません。あの……僕の小間使いを見かけなかったでしょうか」
ファーミンは少し考えてから、「ああ、あの女」と首を傾げた。なにか知っているのか、セルは前のめりになる。
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DONEせるみぼ長編「幸せの泥濘」第三話です。「幸せの泥濘」第三話セルはダイニングテーブルについて、料理をしている女の後ろ姿を眺めていた。「女」という生き物とこれほど長く一緒にいたのは初めてで、女の後ろ姿を見てはその曲線美を感じた。丸みを帯びた肩、むちりと背中にはみ出した肉、柔らかそうな尻、肉付きの良い太もも。決してスタイルがいいわけではないが、男受けする肉体だとセルは思った。
「さっきからこっち見てるの気づいてますよぉ」
「えっ、はっ、え?」
女は後ろを振り返ることもなくそう言った。セルは戸惑い、意味のない音を口から出すことしかできなかった。なんでばれた?キッチンに鏡なんてないはずなのに?ぱくぱくと口を開閉させていると、へらっと笑った女が振り向く。
「やだ、本当に見てたんですか?カマかけただけだったのに」
5044「さっきからこっち見てるの気づいてますよぉ」
「えっ、はっ、え?」
女は後ろを振り返ることもなくそう言った。セルは戸惑い、意味のない音を口から出すことしかできなかった。なんでばれた?キッチンに鏡なんてないはずなのに?ぱくぱくと口を開閉させていると、へらっと笑った女が振り向く。
「やだ、本当に見てたんですか?カマかけただけだったのに」
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DONEせるみぼ長編「幸せの泥濘」第二話です。「幸せの泥濘」第二話セル・ウォーの隠し事。それはとある女を拾ってきて小間使いにしていること。ご兄弟方やお父様に知られたら、厄介なことになるに違いないと思ったセルは、女の存在をひた隠しにしていた。女にもなるべく部屋から出るなと言いつけ、女も一応それを守っているようだった。時々買い物にはでかけているみたいだが、まだ奇跡的に誰ともすれ違っていないらしい。しかし、往々にして隠し事というのはいずればれるわけで。セルの隠し事も例外なく、ばれる日が来るのであった。それが、今日。
何が起こったか説明しよう。まず、前提として。セルは毎日女からお弁当を持たされていた。栄養バランスがとれ、冷めても美味しい、食中毒にも気を付けた、なんの申し分もないお弁当。問題がひとつあるとすれば、毎回毎回可愛いハートマークが描かれていること。そぼろで、おかかで、海苔で、手を変え品を変えハートマークを描いてくるのだ。最初の二、三回はやめろと言ったが、「えぇ?可愛いじゃないですか~!!」と聞く耳を持たない女に根負けし、セルは毎日ハートマークの描かれた弁当を食べるのであった。
5181何が起こったか説明しよう。まず、前提として。セルは毎日女からお弁当を持たされていた。栄養バランスがとれ、冷めても美味しい、食中毒にも気を付けた、なんの申し分もないお弁当。問題がひとつあるとすれば、毎回毎回可愛いハートマークが描かれていること。そぼろで、おかかで、海苔で、手を変え品を変えハートマークを描いてくるのだ。最初の二、三回はやめろと言ったが、「えぇ?可愛いじゃないですか~!!」と聞く耳を持たない女に根負けし、セルは毎日ハートマークの描かれた弁当を食べるのであった。
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DONEせるみぼ長編「幸せの泥濘」第一話です。「幸せの泥濘」第一話深夜、路地裏にて。セルはマゴル城から逃げ出した召使を一人殺したところだった。返り血を拭い、魔法で死体を始末する。いつもの仕事に比べれば、数倍楽な仕事だった。これで今日は直帰していいなんて、幸運な日だ、とすら思った。しかし、その幸運は長くは続かなかった。
「ひっ、人殺しっ……」
背後から小さな悲鳴が聞こえた。振り返ると、そこには女が一人立っていた。闇夜に紛れる黒髪、黒い瞳、黒い服。セルと目が合うと、女は思わず悲鳴を上げてしまった口を手で抑えた。
「見られたか、しかたがない。お前にも死んでもらおう」
セルはにたりと笑って女に杖を向ける。一本線で杖を構える様子もない一般人だ。ほんの一言呪文を唱えれば殺せる。呪文を唱えようとしたセルが口を開いたその時、女は動いた。
5120「ひっ、人殺しっ……」
背後から小さな悲鳴が聞こえた。振り返ると、そこには女が一人立っていた。闇夜に紛れる黒髪、黒い瞳、黒い服。セルと目が合うと、女は思わず悲鳴を上げてしまった口を手で抑えた。
「見られたか、しかたがない。お前にも死んでもらおう」
セルはにたりと笑って女に杖を向ける。一本線で杖を構える様子もない一般人だ。ほんの一言呪文を唱えれば殺せる。呪文を唱えようとしたセルが口を開いたその時、女は動いた。
Kane520000
MOURNINGケビスウ「信仰と泥濘」のあとがきてきな、構想メモ的な、あとエリシアのはなしケビスウって似ているところもある(無口で、確信めいたところは語らない、れないところとか)と思うんですよ、だから学生時代は意気投合して仲良くなっだと思うんです。ケビンが一方的に興味を持ったってのがきっかけだとは思うんですが……
でもお互い、というかスウから見たケビンっての崩壊に打ち勝つための象徴、希望で、きっと対等ではないと思ってる部分もあると私は解釈しました。そこを信仰(ケビンがスウよりも格式高く、手の届かない正しい存在)として書かせて頂きました。
ケビンにとってはスウ含め13英傑は対等な存在であったと、そう思います。けれど、13英傑から見た彼はどうなんだろう。そう思ったのがきっかけでした。特に、スウから見たケビンは、特別な存在であったと思います。これには私なりの解釈が含まれていますが、陰気な自分を気にかけてくれた輝かしい存在、自分をいつも導いてくれる太陽のような存在、そんなものをイメージして話を構成しました。スウは、どんなことがあってもケビンのことを信じてくれていると思います。それが、どんな形であってもです。ケビンもです。
955でもお互い、というかスウから見たケビンっての崩壊に打ち勝つための象徴、希望で、きっと対等ではないと思ってる部分もあると私は解釈しました。そこを信仰(ケビンがスウよりも格式高く、手の届かない正しい存在)として書かせて頂きました。
ケビンにとってはスウ含め13英傑は対等な存在であったと、そう思います。けれど、13英傑から見た彼はどうなんだろう。そう思ったのがきっかけでした。特に、スウから見たケビンは、特別な存在であったと思います。これには私なりの解釈が含まれていますが、陰気な自分を気にかけてくれた輝かしい存在、自分をいつも導いてくれる太陽のような存在、そんなものをイメージして話を構成しました。スウは、どんなことがあってもケビンのことを信じてくれていると思います。それが、どんな形であってもです。ケビンもです。