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    KGM

    Asahikawa_kamo

    DONEオーマで医者やってるidと12歳で身体年齢が止まったmcと敬語が使える5歳kgmとわんぱく9歳fwの話。
    大遅刻ハロウィンネタです。あと家庭教師してるolvもいます。
    続きもので前作は支部( https://www.pixiv.net/novel/series/11342157 )にて。こちらも季節ものなのである程度溜まったら削除して支部に行く予定です。
    ハロウィンネタ「オリバーせんせー」
    「ん? どうしたの、不破くん」
    「これなに?」
    「これ?」

     何の変哲もない、秋の夜長を肌身で感じられるようになったある夕暮れ時のこと。いつものように甲斐田家では家庭教師兼甲斐田不在中の仮保護者として、オリバーが三人の子供たちの面倒を見ている最中だった。今日の勉強を途中でほっぽり出した後に休憩として少し席を外していた不破が、唐突に何かをオリバーの元へ持ってきたのである。
     これ、と称されたものにオリバーが視線を向けると、そこには小学生向けの本が開かれていた。以前、オリバーがいつも勉強を頑張っている不破と加賀美へと幾つか本を見繕って持ってきたことがあったのだが、どうやらその中の一冊であるようだ。桜魔皇国外の国々にしかない珍しいお祭りをかわいらしい絵や写真でまとめたその本の見開きには、とある国で丁度この時期に行われているひとつのイベントについて描かれてあった。
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    Asahikawa_kamo

    PAST研究のため怪我の多いidと、それを心配するkgmの話。idに怪我の描写があります。
     加賀美が初めて異変に気付いたのは、以前収録の折に甲斐田が作業のためにと袖を捲った時、前腕に真新しい傷のようなものを見たのが最初だった。インナーの端からちらりと顔を覗かせたそれはまだ痛々しいほどに赤く、おそらく最近出来たものだろうと察するのは容易なものではあった。が、加賀美はそれに声をかけることはなく、知らないふりをして視線を逸らすことにしたのだ。
     自らのユニットメンバーが異世界人であることは勿論理解している。彼の国は当たり前のように未知の何かと戦い、尊い命が喪われることもあるような場所であるとも。住む世界が違えばそんなこともあるか、と加賀美は結成時頭のどこか遠いところでそんなことを思ってはいたが、目の前の甲斐田は割と普通そうだったとでも言えばいいだろうか。彼と過ごすことが増えた半年か一年の節目頃に、一人で今までのことを振り返り何となくひとりごちたことをよく覚えていた。そりゃあそうだ、普通そうにしているに決まっているだろうなんて、自分が傲岸不遜な面を取っていないのと一緒だと気付いたのだ。まあそもそも、加賀美自身代表取締役としての一面の時も傲岸不遜な面など取ることはあまりないのだが。
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    Asahikawa_kamo

    PAST電車に乗るkgmの話。マシ"ラホ"、雑キ(というかchaiチャン)、のわ、rfがいます。
    漂う死表現、ざっくりファンタジー時空。
    選は「不老」及び「長命」、「異世界人」でした。
    転生電車 かたんかたんと、電車の音がする。眠気に揺られながらも少しずつ醒めた意識を持ち上げるように瞼を開いて、ぼうっとする頭を少しだけ擡げる。ああ、どうやら知らぬ間に寝てしまっていたようだった。ふと視線を左右に彷徨わせて、辺りには私以外の人がいないことに気付く。どうやらこの車両には私しか乗っていないらしかった。
     身体は小刻みに心地の良いリズムで私を揺らしていた。電車はずっと真っ直ぐに向かって走っている。眠気からまだぼんやりとする意識が、鈍く私の思考を遅らせていく。思えばいつ電車に乗っていたのだろう。ひどく長く眠っていた気がするが、寝てしまう前のことが何も思い出せなかった。
     途轍もない眠気に欠伸を噛み殺して、ふわふわ、ゆらゆらと揺れる頭をそのままに、電車の揺れに身を任せる。振動に合わせて視界に映る前髪が右往左往し、何となく身体を包む温かさが更に眠気を助長させていた。もう一度寝てもいいだろうか、なんて少しばかり思考が過ぎりながらも、どうにかして視線をゆるやかに上げた。
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    Asahikawa_kamo

    PASTリプきたセリフで一コマ描く のタグでそらさん(@._S0R4__40B4_)から頂いたセリフ「ちゃんと目を見て言えますか」で書きました。
    無理しがちkgmとそれを叱るidの話。
     一番最初に出来なくなったのは、咄嗟に誰かの一言を掬うことだったと記憶している。次に、喋ることが少し億劫だなと思うことが増えてきていた。そうして、外に出ることがつらくなってきて、食事が面倒だと感じることが多くなった。どうにかこなしているうちに、遂に目の前が霞むようなことが何度も起こるようになってしまった。
     心因性のストレスだろうというのは大いに理解していたけれど、それでも病院にかかる程度が精々関の山。入院は出来ない、もっと言えば休むことさえ難しいと医者に言えば、難しい顔でいくつかの処方箋を出してくれた。それを飲みながらどうこう誤魔化しつつ動いている内に、その朝がやってきてしまった。

    「……?」

     歌が歌えないと、唐突に気付いた。気付いてしまった。声を音にすることが出来ない。メロディを紡ぐことさえままならない。喋ることは出来る、音を出すことも出来る。けれど、この声が明確な音階にならなかった。それを知った時、はくりと口が呼吸を薄く吐き出して、溜息にもならず気化していった。自分の存在意義が、不明瞭になったのだ。
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