SF
夜中に拾う
DONE現代SFマスタード色のコート「ああ、足元気を付けてくださいよ。滑りますからね」
店主の声に目を落とすと確かに木の床が濡れている。私はわかりましたというのを視線に込めて店主に笑顔を送った。店主は丸顔の30代くらいの痩身のひとであった。
仕事場から自宅を結ぶ線上に最近開いた雑貨店があって、かねてから気になっていたのを今日ふと寄ってみようという気になった。ガラス張りの扉の濃い色の木枠には節がたくさんあって、月並だがどれもまるで私を監視する目のようであった。
湿った空気の雑貨店は薄暗いなかに売り物がごちゃごちゃとひしめいていた。大きいものは壁際に堂々と並んだ古めかしいタンスから、小さいものはオーク材の机に陳列された色のついたクリップまで品ぞろえも多様で、これはしっかり見て回るには時間がかかる、来るならば休日にすればよかったと私は後悔した。
3113店主の声に目を落とすと確かに木の床が濡れている。私はわかりましたというのを視線に込めて店主に笑顔を送った。店主は丸顔の30代くらいの痩身のひとであった。
仕事場から自宅を結ぶ線上に最近開いた雑貨店があって、かねてから気になっていたのを今日ふと寄ってみようという気になった。ガラス張りの扉の濃い色の木枠には節がたくさんあって、月並だがどれもまるで私を監視する目のようであった。
湿った空気の雑貨店は薄暗いなかに売り物がごちゃごちゃとひしめいていた。大きいものは壁際に堂々と並んだ古めかしいタンスから、小さいものはオーク材の机に陳列された色のついたクリップまで品ぞろえも多様で、これはしっかり見て回るには時間がかかる、来るならば休日にすればよかったと私は後悔した。
夜中に拾う
DONESF。何を食べても良い人向け。あらすじ:長期の仕事を終えた女用心棒ファロマーは、さびれたレストランで居合わせた気さくなひとエィと食事をともにする。エィに勧められるがままに最近話題の大胆な料理「宇宙鍋」に舌鼓を打ちながら、己の悲しい出自を語る。宇宙鍋 宇宙には悲劇が溢れている。そうとは悟られぬよう息を潜める、狡猾な悲劇が。――
恒星ザニアでの長期の用心棒の仕事を終え、わが家に帰る途中だった女戦士ファロマーは、青色にきらきら光るお気に入りの一人乗り宇宙艇を、酷く寂れたとある小惑星に停めた。ときおり利用するレストラン“ファボメの荒れ者屋”で腹ごしらえをするつもりなのだ。大型艇を十台ほど停められる田舎独特のいやに広い駐艇場はあまり有効活用されておらず、並ばずとも食事にありつけそうだった。
レストランの建物は数世代前にもてはやされた暗緑色の物質ギルメニウムでできた、今にも崩れそうなあばら屋だ。外気の硫黄のような匂いと店内から滲む食べ物のあぶらの匂いがまざって、正常な鼻であればとっくにひん曲がっているだろう有様である。しかし幸運にもファロマーの原始嗅覚は正常とは言い難かった。
9552恒星ザニアでの長期の用心棒の仕事を終え、わが家に帰る途中だった女戦士ファロマーは、青色にきらきら光るお気に入りの一人乗り宇宙艇を、酷く寂れたとある小惑星に停めた。ときおり利用するレストラン“ファボメの荒れ者屋”で腹ごしらえをするつもりなのだ。大型艇を十台ほど停められる田舎独特のいやに広い駐艇場はあまり有効活用されておらず、並ばずとも食事にありつけそうだった。
レストランの建物は数世代前にもてはやされた暗緑色の物質ギルメニウムでできた、今にも崩れそうなあばら屋だ。外気の硫黄のような匂いと店内から滲む食べ物のあぶらの匂いがまざって、正常な鼻であればとっくにひん曲がっているだろう有様である。しかし幸運にもファロマーの原始嗅覚は正常とは言い難かった。
RaiTsushima
PAST試験的にオリジナルの近未来SF少女物。ほんのりブロマンス。当たり前は流星群とともに散ってゆく
Pixiv: https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9382289
カクヨム: https://kakuyomu.jp/works/1177354054885444077
連れ去らないで私の……を、 「ごめんね、私レポートがあるんだ」
そういってベテルギウス周辺星人――ベテルギウスからおおよそ三十光年は離れているそうなので、便宜上周辺星人と名乗っている彼女――は私たちの前から足早と駆けて行った。帰る方向は全く一緒なので、必然的にその駆けて行った方向を見るのは自分の帰り道を見ているようだ。自転車やその他のテクノロジーに関して一切合切知識が無いのではないのだろうか、と想うほどに彼女はそういう物に疎(うと)く、今日も結局歩いて帰るらしい。駆けて行ったのだからといっても、そのスピードも持久力も大したことなくて、ヒイヒイいう姿が容易に思い起こさせる。容姿が地球人と何一つ変わったところが見られない点も併せて。
16380そういってベテルギウス周辺星人――ベテルギウスからおおよそ三十光年は離れているそうなので、便宜上周辺星人と名乗っている彼女――は私たちの前から足早と駆けて行った。帰る方向は全く一緒なので、必然的にその駆けて行った方向を見るのは自分の帰り道を見ているようだ。自転車やその他のテクノロジーに関して一切合切知識が無いのではないのだろうか、と想うほどに彼女はそういう物に疎(うと)く、今日も結局歩いて帰るらしい。駆けて行ったのだからといっても、そのスピードも持久力も大したことなくて、ヒイヒイいう姿が容易に思い起こさせる。容姿が地球人と何一つ変わったところが見られない点も併せて。
nogoodu_u
DOODLE擬似おにショタ付喪神時代出会いど捏造幻覚。SF(史実不心得)です群れよ、降れよ、地に満ちよ(さみくも) ――五月雨や。
己が名を呼ぶ音が頭上から降り注ぎ、鋼のからだにしみ入る。十七字の福音に導かれ、景色を名に宿した名刀は幸福なまどろみから目覚めた。
+++
自我の輪郭を得て起き出した五月雨がまず抱いたのは、まだ見ぬ外の景色に対する憧憬だった。そのとき江戸城の外には絶えず雨が降っていて、城を囲む堀の水嵩が増すごとに、この雨が川の水流をも急き立てるのがどうしても見たい、そして自分もその眺めを言の葉にしたためたいという思いは増し、五月雨は旅に出ることを決めた。
本体を残した江戸城を背に、五月雨は当代の主を思う。犬を大事にしているのは好ましい。文治政治を推し進めたことが、かの俳聖やすぐれた歌人を生むことに繋がったのも功績だと思う。義理を抱くには十分だと思うが、それだけだ。五月雨の心はすでに、あの方とともにあった。向かうのはむろん、北である。
2425己が名を呼ぶ音が頭上から降り注ぎ、鋼のからだにしみ入る。十七字の福音に導かれ、景色を名に宿した名刀は幸福なまどろみから目覚めた。
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自我の輪郭を得て起き出した五月雨がまず抱いたのは、まだ見ぬ外の景色に対する憧憬だった。そのとき江戸城の外には絶えず雨が降っていて、城を囲む堀の水嵩が増すごとに、この雨が川の水流をも急き立てるのがどうしても見たい、そして自分もその眺めを言の葉にしたためたいという思いは増し、五月雨は旅に出ることを決めた。
本体を残した江戸城を背に、五月雨は当代の主を思う。犬を大事にしているのは好ましい。文治政治を推し進めたことが、かの俳聖やすぐれた歌人を生むことに繋がったのも功績だと思う。義理を抱くには十分だと思うが、それだけだ。五月雨の心はすでに、あの方とともにあった。向かうのはむろん、北である。
85_yako_p
DONESF(少し不思議)四季漣(2021/02/22)Moonlight drops 月がきれいですね。
意味を知ったばかりの言葉をぽつりと呟いた夜は美しい満月の夜だった。寒くて真っ暗な冬の日だった。星のきれいな、それだけの夜だった。
素敵なことが始まる予感なんてひとつもなくて、ただオレは冷たい夜をテクテクと歩く。のんびり今度カラオケで歌おうと思ってるヒットソングなんかを歌ってみたら、街灯に照らされてオレの息が白く濁った。
コンビニに、行くだけ。恋も、冒険も、ファンタジーも始まる予感はない。別に明日でも済むような用事を後回しにしなかった理由を、どうやらオレは覚えていない。
何を買ったのかも覚えていない。あの日はオレにとって、寒い日でもコンビニに行った日でも受験の三日前でもない、特別な日だったから。
3581意味を知ったばかりの言葉をぽつりと呟いた夜は美しい満月の夜だった。寒くて真っ暗な冬の日だった。星のきれいな、それだけの夜だった。
素敵なことが始まる予感なんてひとつもなくて、ただオレは冷たい夜をテクテクと歩く。のんびり今度カラオケで歌おうと思ってるヒットソングなんかを歌ってみたら、街灯に照らされてオレの息が白く濁った。
コンビニに、行くだけ。恋も、冒険も、ファンタジーも始まる予感はない。別に明日でも済むような用事を後回しにしなかった理由を、どうやらオレは覚えていない。
何を買ったのかも覚えていない。あの日はオレにとって、寒い日でもコンビニに行った日でも受験の三日前でもない、特別な日だったから。
85_yako_p
DONESF(少し不思議)タケ漣(2019/07/05)月下に恋心 思えばコイツが人間であるという証拠は一つもなかった。だけどそんなことを疑ったことなんてなかったから、それを見たときは驚いた。
男道ラーメンで夕飯を食べて、コイツと一緒に帰り道を歩いていた。コイツは二つ先の角で俺と分かれるはずだった。
冬は寒いから家に来ればいいと思う。だけど、円城寺さんの家にすら行かなかったコイツが俺の家になんてくるはずもない。だから誘いを口にすることもできず、ただ雨が降らないようにとぼんやり考えていた。
寒いのに外のがいいのか。夜はなんでこんなにも静かなのか。眺めた月明かりを湛えた目はどこを見ているのか。視線で撫でた表面のその下、内側を一切見せないその皮膚が青白く見える。
その内側を覗いてみたい。そんな叶うはずもない欲求を抱いた相手はコイツが初めてだったかもしれない。
4499男道ラーメンで夕飯を食べて、コイツと一緒に帰り道を歩いていた。コイツは二つ先の角で俺と分かれるはずだった。
冬は寒いから家に来ればいいと思う。だけど、円城寺さんの家にすら行かなかったコイツが俺の家になんてくるはずもない。だから誘いを口にすることもできず、ただ雨が降らないようにとぼんやり考えていた。
寒いのに外のがいいのか。夜はなんでこんなにも静かなのか。眺めた月明かりを湛えた目はどこを見ているのか。視線で撫でた表面のその下、内側を一切見せないその皮膚が青白く見える。
その内側を覗いてみたい。そんな叶うはずもない欲求を抱いた相手はコイツが初めてだったかもしれない。
x_kumo0715
DONER18鋼未起ちょっと露骨倫理観が二人ともおかしいのでご注意ください。SFっぽくしたくてですね。
こんなでも二人は相思相愛イチャイチャ仲良しに変わりはないのです。うむ。
高校卒業済みの18歳以上ですか?
PW→y/n 2
渡辺こよ(akuta)
MOURNINGサイボーグ夫と生身嫁前編没ネーム。
我ながらワカバが面倒くさい女ムーブになってしまったのと(後編でタネ明かし予定だったけど中止)2人ってこんな感じではないかもってことで。 18
hanikamind
DOODLEサンプル、こちらにも投げときます。興味ある方は以下の部数アンケもよろしくお願いします。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdGc0_S6bF5IRj50NWGu_ulBK6h4p3xJEznL-fFTlItvXRRsw/viewform?usp=sf_link 3
秘みつ。
DONE凪茨▼凪砂のクローンの話。アズラエルの揺籠※モブがたくさん喋ります去年考えてたネタを凪砂の過去が出る前に出したいと思って殴り書きしました。SF(すこしふしぎ)です。
アズラエルの揺籠
アッラーフがミカール、ジブリール、イスラーフィール、アズラーイールの四天使に、四方から七掴みの土を集めて人を創るよう命じられたとき、アズラーイールだけがそれに成功した。というのも、彼は人の肉体と魂を分けるすべを心得ていたからである。――『民間伝承』
砂埃が風で舞い上がる。中東の地図にない《都市》に茨は潜入していた。武装をして。どうしてここにきたか――単刀直入に云えば凪砂の為だ。乱凪砂が失踪して一ヶ月。いつもの気まぐれの発掘旅行でもないとわかった時には遅かった。忍ばせていた発信機も取り外され、消息が立たれ、これは完全にプロによる犯行。一縷の望みをかけて、世界中のメガデータの防犯カメラデータ中にAIによる顔認識システムでハックをかけ、物量でしらみつぶしに凪砂を探した。そして引っかかったIPが中東。そこから重点的に追跡したところの《都市》。ここに拉致されたにちがいなかった。
3722アッラーフがミカール、ジブリール、イスラーフィール、アズラーイールの四天使に、四方から七掴みの土を集めて人を創るよう命じられたとき、アズラーイールだけがそれに成功した。というのも、彼は人の肉体と魂を分けるすべを心得ていたからである。――『民間伝承』
砂埃が風で舞い上がる。中東の地図にない《都市》に茨は潜入していた。武装をして。どうしてここにきたか――単刀直入に云えば凪砂の為だ。乱凪砂が失踪して一ヶ月。いつもの気まぐれの発掘旅行でもないとわかった時には遅かった。忍ばせていた発信機も取り外され、消息が立たれ、これは完全にプロによる犯行。一縷の望みをかけて、世界中のメガデータの防犯カメラデータ中にAIによる顔認識システムでハックをかけ、物量でしらみつぶしに凪砂を探した。そして引っかかったIPが中東。そこから重点的に追跡したところの《都市》。ここに拉致されたにちがいなかった。
パヒン
SPOILERこんこん、こんこん誰かいますか
(心覚ネタバレ絵です)
まさか、刀ミュの桑名くんにこんなポストアポカリプスSFな光景を見せられるとは思いませんでした。正直に言うとドチャクソに滾る大好きシチュエーション(火星の人やナウシカやエヴァを思い出す・・・)なので、個人的にはものすごく楽しかったです。しかしまあ、あのふんわりのどかな入りのソロ曲から、まさかこんな荒涼とした世界に連れていかれるとは・・・
cohal2010
DOODLE19才ぁまゃどさんアマヤドさんの秘密もそろそろ分かってきそうだから捏造放出しとかなきゃ…!!で、年表見てたら山田兄弟は軍に入ってからの子供だからクローン説も捨てがたい🤔けどそこまで行くとSF味が強すぎる〜っ 2
ミヌエット
PROGRESSSF途中。今年も頑張るといった傍からちょっと趣味が滞ってしまってますが一応描いてます;
大分間が空いてしまいましたが年末のSF絵の続き
アニメとかで見たことあるシチュですが
道路沿いに戦車の防衛ライン展開するシーンいいですな。
大体やられ役なんですけど; 2
ミヌエット
DONE謹賀新年MAL 2021明けましておめでとうございます!
今年もSF中二病のお絵描きマンでいけたらと思います。
相も変わらずで恐縮ですが、うちの子と人類のバトルにお付き合い頂ければ幸いです。
今年もよろしくお願いいたします。
SF!万歳!
nanashiyrmt
MEMO取り急ぎメモ一回消えて悲しくなった…SFもどきSF。地球が滅びる!というので脱出することになった優秀な1万人の中に選ばれた二人。産めよ増やせよと圧をかけられる。
兄上は後継を作ること自体には熱心だがかなり悪質なストーカー被害に遭遇したとかで人との接触があると吐き気や過呼吸を起こす。自分が辛いときにそばにいてくれたからよりいちには触れられる。
弟は頑強な天才だが子作りに興味がない。兄上に頼りにされることが嬉しい。兄上のことが好き。
「私と交わればいいじゃないですか」
「男同士では子は成せんだろう馬鹿!」
よりいちは天才だったので男性妊娠を可能にした。
「これでいいですね」
こうして入植した星は栄え、誰もが幸せに暮らしましたとさ 293