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    ジュナカル

    zoutokani

    MAIKING兄の日だから書きかけのしょたおに(ジュナカル)
    何歳差か分からなくなっている
    ピオ先生もいる
    14

    プロローグ

     思い返すほど、不自然なシチュエーションであったのだ。
     カルナと二人で暮らしていた頃がある。何でもしてくれた。毎日温かい食事を整えてくれて、話を聞いてくれて、あたたかな毛布で眠ることも、季節に合わせた服を着ることも、不自由なく与えられて育った。
     色々な所へ連れ出してくれた。海も川も山も、美術館も博物館も、お祭りもお花見も。だけど一番好きだったのは、晴れた日に手を繋いで、何もない近所の公園に行くことだった。
     海も川も山も美術館も博物館もお祭りもお花見にだって、連れて行ってくれるだけ。カルナはそこには居なかった。でも公園になら一緒に歩いて行けたから、それが一番嬉しかったんだ。

     朝起きて、今日は、「かいすいよく」だと言って、沢山体を動かすからと、大きなおにぎりをお皿に並べるものだから、必死でほおばった。海に行くのはその日が初めてだったけど、全然楽しみじゃなくて、胸が詰まりそうなのを堪えながら麦茶で流し込む。
     カルナはその日も何も食べず、中身が見える透明な鞄に、子供用の水着とかタオルとか、空気で膨らますビニールボールとかを詰めて支度をしていたと思う。
     助手席 2265

    yotou_ga

    PROGRESS五月の新刊になる予定のもの。ひょんなことから現代の北欧に向かうことになったジュナカルとマスターとマルタ姐さん(裁)がわちゃわちゃする話。1.5部時空と思われる。Oollt

    1.

    「と、言うわけでだ立香ちゃん。君には北欧に行ってもらうことになった。それも特異点のじゃない、現代の北欧だ。じゃ、グッドラック!」
    「待って? まってダ・ヴィンチちゃん、ちゃんと順を追って説明して!」
     人理保証機関フィニス・カルデア。その管制室に藤丸立香の叫び声がこだました。
     何しろ管制室に呼び出され、一も二も無く告げられたのが冒頭の台詞である。というわけも何もない。人理修復からこちら、確かに微小特異点やら亜種特異点やらの修復に駆り出されてはいるが、流石に説明なしで北ヨーロッパに送り込まれる理由などさっぱり分からないのである。しかも特異点ではないと来た。
     狼狽える立香に、カルデア技術顧問、レオナルド・ダ・ヴィンチは悪戯げに微笑んでみせた。
    「勿論冗談さ。ちゃんと説明するよ」
    「よ、良かった……」
     ほっと胸を撫で下ろす立香。たまたま管制室にいたサーヴァントたちは呆れ顔でダ・ヴィンチを見るが、当の天才はまるでどこ吹く風である。
    「さっきも言ったけど、今回の任務は特異点修復ではない。実は魔術協会からの依頼でね」
    「協会から……?」
    「そうだ。まあつまるところ、どう 9968

    botomafly

    DONE【ジュナカル】片割れ二つ ひらブーのあれだんだん慣れ親しんできたインターホンを褐色肌の指が押す。部屋主がいることは予め確認済みだが、応答の気配はない。
     寒い冬、日曜日の朝。とあるマンションを訪れていたアルジュナは嘆息してインターホンを睨むともう一度ボタンを押した。インターホンの音が廊下に静かに響く。が、応答はない。毎週この時間にアルジュナが訪ねているのだから家主は気付いているはず。電車に乗ってここまで来るのは距離があるわけではないが夏と冬とくれば楽ではない。相手は客人を待たせるタイプの人間ではないのでトイレで用でも済ませているのだろうか。
     腕を組んで呼吸を十数えたところで上着のポケットに入れていたスマートフォンが音を鳴らした。見れば家主からのメッセージで、鍵は開いてるから入ってくれという内容だった。インターホンの近くにはいないがスマートフォンを触れる環境にはいるようだ。
     しかし。
    「……お邪魔します」
     ドアの先へ踏み込めばキッチンのついた廊下があり、廊下を仕切るドアを潜ればそこにあるのはワンルームだ。あの部屋の広さでインターホンに手が届かないとはどんな状況だ。
     何となく予想がつきつつも鍵を締めて廊下を進む。途中のキ 2216

    botomafly

    PROGRESS【ジュナカル】 箍を食む人の悪意の成れの果ては悪魔だ。
     生前の行いで純粋な死者の国、つまり黄泉や天国へ行けなくなった者の魂が行き着く先は地獄。そこに落ちた魂が悪魔になるか無事輪廻を迎えられるかはその魂の質による。悪魔になった際には人々を苦しめることで快楽を得たり、あるいは自身が崇拝する悪魔の許で働く害悪な存在と言われていた。――百年ほど前までは。


    「原子の味がするんだが」
     下手くそにパスタをフォークで巻いて口に運んだ白髪に白肌の、十五、六くらいの少年がそう言った。
     彼に食事を奢ることにしていた黒髪にチョコレート色の肌の男性アルジュナは、この少年のどうしようもない、耳を疑うような発言に怪訝な声で返す。
    「いや、トマト味ですけど」
     どういう味覚をしているのだ、とアルジュナはぼやきながら自分のパスタを口に運んだ。全く同じものを注文したが、しっかりトマトソースがかかったパスタである。
     ここはお昼時のイタリア料理店だ。それなりに人気のある店で、二人が入るのにも少しばかり時間を要した。美味しくなかったら困る。
     二人で食事をしているが、アルジュナはこの少年とは出会ったばかりだ。ここ一時間の出来事である。腹を 5678

    botomafly

    PROGRESSジュナカル 遠路春々 7_2雑踏の中人とぶつかりそうになるのを避けると次の人とぶつかりそうになる。常に誰かが喋っていて、足音が途切れることはない。少しでも歩調が緩い者は後ろの人に足を踏まれ、あるいはイラつかれながら後ろから追い抜かれ、歩調が急な者は前の人を避けるべく踏み出し人の間を縫うように歩いていく。
     その中に紛れ込んでいたカルナは視界に入る人間たちの目線や足先からルートを予想してぶつからないように先へ進んでいた。歩くのにまさかこれほど神経を使うとは思わなかった。いや、普通に歩く分には構わないのだ。自分の歩幅で歩こうとすると人の足並みから外れるので周囲をよく見なければならないだけで。
     首都圏に来ると人混みの中歩くのはストレスだ。母から車を借りられるのは彼女の仕事がない日に限り、今回は数日滞在する予定だったので交通機関を利用して訪れている。車で来られたらこうも苦労はしないだろう。就職活動で何度かこちらに来ているが交通機関を利用すると目的地に辿り着いたときには既に疲れていたりする。夕方ともなれば尚更だ。
     冬にもかかわらず人の熱気と暖房で建物の中は暑い。カルナの髪は一つに括られていたがそれだけでは熱を逃せず、彼 4926

    botomafly

    PROGRESSジュナカル 遠路春々 7_1その日最後の授業を終えてアルジュナは下駄箱兼ロッカーへと向かっていた。厚手のコートにマフラーと手袋。冬の装いだ。
     ロッカーが見えてきたところで後ろから声をかけられ、肩を組まれる。衝撃を受けながらアルジュナは声の主を見上げた。
    「アシュバッターマン……随分お元気そうで」
     高三の冬、冬休み前。受験生ならそろそろ最後の追い込みをする。同じ中学、高校に通い進学する大学までもが同じというこの同級生だって暇ではないはずだ。だというのに何故か物凄く晴れやかな顔をしている。
    「シケた顔してんじゃねえかアルジュナ! お前もどうだよ、クリスマスの息抜き」
    「……というと?」
    「バスケ。学期最後の部活くらい後輩の顔を見に行ってやらねえとな」
     暇だろ、と言われてアルジュナは目を据わらせる。絶対むさい。何が悲しくてクリスマスの日にそんなことをしなければならないのか。
     アシュバッターマンは面倒見がいい。夏に引退してからも所属している部活には何度か顔を出しているようだ。アルジュナはというと高校では部活に入らず生徒会に精をだしていて、学期末の挨拶は生徒会室で軽く済ませて終わりだ。
     暇かといえば、まあそうだ。 1995