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    月見

    keskikiki

    DONE没原稿④お月見の浮京
    生者に似合わぬ月光よ「せいぜい月の光を浴びるがいいよ」
              ──『魍魎の匣』

     秋の始まりといえば陽の落ちる早さだとか朝に寒くて目が醒めるだとか人により知る術があるだろう。京楽にとっては残念ながら、ようやく酷暑を乗り切った浮竹が寒暖差で体調を崩すことで知れた。一番悔しい思いをしているのは当人だろうから決して口にはしない。卯ノ花ぐらいだ、公言するのは。
    「昔はまだ持ち堪えてた筈だがな」
    「ボクらも歳を食ったってことでしょ。気にしなさんな。夏風邪と違って掛け布団があっても暑くならないんだし、大人しくしててよ」
     宥められたところで浮竹の顔は晴れない。
     昔はもっと耐えようがあった。なにせ中秋の名月、もとい中秋節に合わせて宴会があってそこに新人は駆り出されていた。拙くも琵琶を弾いたり筝を弾いたりした覚えがある。一方で京楽は風流な振る舞いに恥じぬ見事な横笛を披露して、本人は野郎相手に無駄な音を奏でたと嘆いていたが意地の悪い同僚たちでさえ感嘆の声を漏らすほどだった。浮竹は師匠がいたから聞くに耐えぬ音を出すことはなかったものの皆が皆そうであった訳でもなく、そもそも豊作の返礼が色濃くなってきて、そこに京楽の横笛で肥えてしまった耳で素人の音色に用がある者など居らず、二人が官位を戴いて暫くした頃にはそんな風習はなくなっていた。二人揃って若くして隊長羽織を受けた頃には廷内の茶屋が商魂逞しく気張る程度で、隊ごとに内々で屋根に上ったり見晴らしのいい丘へ行ったりすることもあるぐらいだ。今に至っては浮竹なぞ団子を食べる日とさえ捉えている。
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    um040d

    TRAINING大遅刻です。島テルのお月見。
    主には島崎の視界の話。色々捏造しながら解釈しています。全部妄想。
    団子も月も最後は空気どころか何故か星座の話になります。あとテルくんが少し島崎に当たりが強めかもしれない。
    地の文練習だったけど途中から力尽きています。小説はこれが初めてなので大目に見ていただけるとうれしいです・・・。
    おつきみ「島崎さんって良いタイミングで来るよね」

    輝気は突然の来訪に驚きもせずそう言った。輝気はちょうど台所の片付けをしているところで、もし来たのが調理の最中なら色々手伝わせたのにと思うと嫌味の一つも言いたくなる。
    台所のシンクに跳ねる水の音は洗面台のものと違って少しうるさい。少し声を張りながら話す。

    「お月見団子を作ったんだ。今日は満月だから。たくさんあるから食べて良いよ」

    片付けを終えた輝気は、団子が乗っている皿を島崎にも分かるよう音を立てて置いた。
    ゴトリ。団子というよりは夕食の大皿を想像させるような、かなり鈍く重い音だった。それを聞いた島崎は耐えきれずと言ったふうに笑った。
    ・・・確かに作りすぎた自覚はある。砂糖を使わないレシピを選んだから、余ったら味噌汁に入れても良いな、せっかくだし明日も食べようかな、なんて思ってレシピより多めに材料を出してみたらちょっとすごい量になってしまった。団子を丸めすぎて手が疲れたし、細かくちぎって丸めるのが面倒になったので後半の団子はかなり大きい。でも輝気は2日かければ食べきれる自信があった。だから、この男が来て助かったとかは別に思っていない。本当に。
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    はとこ

    DONE死神キと執事(南ハロ)ブさまの月見話と言いはる。シリアスめ。キスブラ。
    キはそのまま西ハロの死神ですが、ブさまは自動人形執事という設定になっています。それらを始め、ほのかな我設定が垣間見える感じのお話ですが、雰囲気で読んで頂ければと…。
    月だけが見ている頬に当たる空気はキンっと冷えきってる。いつもここは寒いけど、今日は一段と冷えてる。つっても、寒くて凍えるなんて弱い体とは昔々にオサラバしてるけど。
    冷えても焼いても切ってもオレは死なない。なんたって、その死を運ぶ死神さまなんだから。今日も今日とてお仕事お仕事~っと、懐から出した箱から煙草を一本咥える。あれ、火、火ぃどこに仕舞ったっけな…?別に魔力を使えば火のひとつ付けるなんざ造作もねぇけど…こんなことで力を使ったらお上がうるせぇし。
    ゴソゴソと重っ苦しいマントの中やら服を漁る…その、最中。

    「ひぇ!?」

    目深にかぶったフードを浅く裂いて、目の前を通りすぎたなにかに声を上げる。瞬きの間に通り抜けてったそれは、鈍色に光るカトラリーだった。いや、カトラリーってのは食事に使うもんで人様に投げるもんでもねぇし、こんな切れ味良かったら料理ごと皿が真っ二つになる。
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