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    #HADES

    Yako_san8

    DONEhadesweekly4回目お題・《さよなら》
    王子から突然さよならを告げられ動揺する死神とその顛末について。Twitterでフォロワーさんが上げてた死神友情選択時のセリフが妙に印象に残って出来た話です。死神にとって王子に向く過分な感情はすべて二神の関係を脅かすもの(それが恋や愛でも)で、自覚する以前にとても恐れてるのかな~と。ずっ友だった場合自身の恋心に気付けないままなんだろな。気付いて……!
    さよならの後先 「―なぁ、タナトス。俺たちここで《さよなら》しないか?」

     待ち合わせていたわけではない。けれどふたりのこれからについて一度きちんと話さなければならないと考えた死の化身は、冥界王子の私室で気まぐれな友神の帰りを待っていた。
     部屋に戻り佇む影に気付いた王子は一瞬顔を輝かせたものの、すぐハッとした風に頬を強張らせる。不安げな表情といつになく緊張した声で、けれど地下で育まれた宝石めいた双眸は真っ直ぐ死神の姿を捉えていた。ひどく神妙な面持ちで薄く開かれた唇にタナトスは自然注意を向ける。

     正面切ってザグレウスから告げられた先の言葉はあまりに衝撃的で、ハデスの館内で大抵床に降りている死神の足裏が少し宙に浮いたくらいだ。そんな動揺を悟られぬようタナトスは金の目を伏せ一呼吸おいてから口を開く。
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    Yako_san8

    DONE★hadesweekly一回目お題・My first…/初めての…
    冥界王子淡い初(失)恋か~ら~の~、死神が何かを察する小話です。王子と死神はなんだかんだ付き合いの長い親友同士という感じ。お題なので3000字以内のライトな感じを目指したのですが、ちょっとオーバーしました。切れのいい短編が書けるようになりたいです。そしてお題に沿えているのか不安になってきました。ファイトォ!
    魂の片割れ 深い緑に囲まれた地を疾走する影があった。深紅の衣をひらめかせ軽快に駆け抜ける。弾む息と踏みしめた地に刻まれた燃え盛る足裏の熱の残照とが、久遠の楽土を彩る何よりも生命の輝きに満ちていた。

     年経た石造りの橋を渡り新たな区画に足を踏み入れたその影は、かすかに風に乗って届いた控え目な声に顔を上げると歩みを止める。そして再び、今度はゆったりとした足取りで進み出した。最近とみに絆を深めた友人達の元へと。
     柔らかな草地を過ぎてひび割れた石の階段に足をかけ、数段上がったところでようやく談笑している二人の姿が目に映る。―刹那、影は息を呑んで立ち止まった。

    「ザグレウス?」
     立ち竦む影に気付いた金の髪の男が少し驚いた風に目を丸くしたのち、穏やかな声をかける。その視線を辿るようにして振り向いた黒髪に褐色の肌の男も一瞬遅れて微笑んだ。
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    triste_273

    REHABILIお題「タナザグ前提で、ザグへの惚気にしか聞こえない独り言を誰かに聞かれてしまうタナトス」
    表情や言葉ではあまり変化はないけれど、内側ではめちゃくちゃ影響受けていて思わず言葉で出てしまったタナトス…という像で書かせて頂きました。ありがとう御座いました!
    肖像画は笑わずとも かつて、死の神にとって休息とは無縁の物であった。
     世界が世界である限り時間は止まらない。常にどこかで新たな命が花開く様に、常にどこかで命の灯火が消え死者が案内を待っている。そう、死の神は常に多忙なのだ。己の疲弊を顧みず職務に没頭しなければならぬ程に。だが神であれ肉体を伴う以上「限界」は存在する。タナトス自身はその疲労を顔色に出す事はほぼ無いものの、母たる夜母神にその事を指摘されて以来、意図的に「休憩」を挟むようになった。地上の喧騒、死者たちの呪詛、そんな雑音と言葉の洪水の中に身を置く反動だろう……休息で必然的に静寂を求めるようになったのは。ハデスの館も従者や裁定待ちの死者がいる以上完全な静寂が漂っているわけではないが、地上のそれに比べれば大分マシだ。厳かな館の片隅で、ステュクスの川面に視線を落とし、そのせせらぎに耳を傾ける。かの神にとって、それだけでも十分に心休まる平穏な時であった。
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