Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    triste_273

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💗 💜 🍁 🎉
    POIPOI 15

    triste_273

    ☆quiet follow

    ハデスwebオンリーのエアss。
    「タナザグくっついてる世界線でそれを見ているヒュプノスの小話」
    リクエストありがとう御座いました!!

    #HADES

    柔らかな宝物 ハデスの館において、眠りの神であるヒュプノスの仕事は基本ステュクスの泉の監視と、ハデス王への謁見者の管理である。
     勿論その他にも諸々の仕事を抱えている。タナトスやヘルメスより送られてくる死者数のリストアップ、カロンが送ってきた死者の整列、ハデス王への謁見者の書類作成と整理などなど……すべてを彼一人が行っているわけではないが、それでも本来「居眠り」する暇もないほどの仕事を抱えている。
     なので、時としてヒュプノスも持ち場となる謁見の間を離れることがある。特に書類整理は廊下の真ん中では行えない。場合によっては執務室を使う事が多く、その時も瞬間移動を使うのが常であった。
     だから「たまには歩いて行こう」などと本当に、本当にただの気まぐれだった。だがその気まぐれのお陰で、かの神は普段目にしない光景を見ることとなる。

    (……あ、お兄ちゃんとザグ君。)

     謁見の間から西に抜けて執務室へ向かう廊の終わりはステュクス川に面するテラスになっている。そしてそこは、彼の兄神が次の仕事へ向かうまでの羽休めをしている定位置だ。死の気配が漂う上に、西の廊の明かりは他の区画よりも薄暗い分、亡者もあまり近づかないエリアであった。
     だが、最近はそうでもない。ある時を境に、死の神の隣には冥府の王子が共に立っている事が多くなった。はじめ、ザグレウスはタナトスに対して地上の事や彼の職務の事について尋ねている様であった。だが、回数が増えるにつれ、少しずつ二人は「並ぶ」様になり……そして、ある時を境に「寄り添う」様に変わった。それからだろう。西の廊に漂う死の気配に、刺々しさが消えて、かつての静寂なる死の姿に戻ったのは。
     周りの亡者達は「女王が戻り、王子の素行が落ち着いたので、死の神もようやく心落ち着けたのだろう」と噂する。ただ、ヒュプノスの見解は少しばかり違う。

    (……今日も笑ってる。)

     ヒュプノスは声に出さず呟く。廊下の隅に目に入ったのは、タナトスとザグレウスが談笑する姿だ。ザグレウスは「いつもの様に」楽し気に、時に大げさに手を広げ会話を楽しんでいる。そしてその隣に佇むタナトスは……その眉を柔らかく下げ、琥珀の様な瞳をほんのりと溶かし、その唇に優しく弧を描いて……ほんの少しばかり微笑んでいた。だが、その僅かな変化は遠くからでなくとも気付けるものは少ない事だろう。

     ヒュプノスには、この二柱だけが胸中に抱いている思いがどんな感触か、具体的には分からない。ただ自身が「眠り」という肉体より魂に近しい感覚を司る神だからだろうか? ほんの数秒、二神の視線が交わった瞬間、その「感触」は近くでそれを見ていたヒュプノスにもなんとなく伝わってくるのだ。
     それは時にふんわりと柔らかくて、かと思えばツヤツヤと輝いて眩しい。ただ共通して暖かで、でもどこかこそばゆくて……。

    (この「ふわふわ」は何なんだろう?)

     ただ、自分だけが知っているその感覚について、ヒュプノスはいつもの様に軽率に口に出すことは無い。ヒュプノスはこの二神が好きだ。タナトスは敬愛すべき兄であり、ザグレウスは唯一ともいえる自身を邪険にしない友である。その二神が、お互いにお互いが「好き」なのだ。そこから生まれる感情の触り心地が心地よくない筈がない。

    (ま、二人が幸せそうなら僕はそれでいいんだろうなぁ。)

     手のひらに収まりきらないふわふわした気持ちを抱えながら、ヒュプノスもまた一人にっこりと微笑む。綿花の様なふんわりとした白い髪の合間から、蜂蜜の様に濃い黄金色の瞳をゆったりと瞬かせ、遠くで寄り添う二柱を嬉しそうに見守る。
     その柔らかな「感触」は、眠りの神だけが触れることが出来る、優しい宝物だ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭🙏💕💕💯💯💖☺💖💗😍😍💕💕🙏💖💖❤❤❤💯💯❤❤💖👏👍☺☺☺☺☺❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    triste_273

    REHABILIお題「タナザグ前提で、ザグへの惚気にしか聞こえない独り言を誰かに聞かれてしまうタナトス」
    表情や言葉ではあまり変化はないけれど、内側ではめちゃくちゃ影響受けていて思わず言葉で出てしまったタナトス…という像で書かせて頂きました。ありがとう御座いました!
    肖像画は笑わずとも かつて、死の神にとって休息とは無縁の物であった。
     世界が世界である限り時間は止まらない。常にどこかで新たな命が花開く様に、常にどこかで命の灯火が消え死者が案内を待っている。そう、死の神は常に多忙なのだ。己の疲弊を顧みず職務に没頭しなければならぬ程に。だが神であれ肉体を伴う以上「限界」は存在する。タナトス自身はその疲労を顔色に出す事はほぼ無いものの、母たる夜母神にその事を指摘されて以来、意図的に「休憩」を挟むようになった。地上の喧騒、死者たちの呪詛、そんな雑音と言葉の洪水の中に身を置く反動だろう……休息で必然的に静寂を求めるようになったのは。ハデスの館も従者や裁定待ちの死者がいる以上完全な静寂が漂っているわけではないが、地上のそれに比べれば大分マシだ。厳かな館の片隅で、ステュクスの川面に視線を落とし、そのせせらぎに耳を傾ける。かの神にとって、それだけでも十分に心休まる平穏な時であった。
    2795

    Yako_san8

    DONE★hadesweekly一回目お題・My first…/初めての…
    冥界王子淡い初(失)恋か~ら~の~、死神が何かを察する小話です。王子と死神はなんだかんだ付き合いの長い親友同士という感じ。お題なので3000字以内のライトな感じを目指したのですが、ちょっとオーバーしました。切れのいい短編が書けるようになりたいです。そしてお題に沿えているのか不安になってきました。ファイトォ!
    魂の片割れ 深い緑に囲まれた地を疾走する影があった。深紅の衣をひらめかせ軽快に駆け抜ける。弾む息と踏みしめた地に刻まれた燃え盛る足裏の熱の残照とが、久遠の楽土を彩る何よりも生命の輝きに満ちていた。

     年経た石造りの橋を渡り新たな区画に足を踏み入れたその影は、かすかに風に乗って届いた控え目な声に顔を上げると歩みを止める。そして再び、今度はゆったりとした足取りで進み出した。最近とみに絆を深めた友人達の元へと。
     柔らかな草地を過ぎてひび割れた石の階段に足をかけ、数段上がったところでようやく談笑している二人の姿が目に映る。―刹那、影は息を呑んで立ち止まった。

    「ザグレウス?」
     立ち竦む影に気付いた金の髪の男が少し驚いた風に目を丸くしたのち、穏やかな声をかける。その視線を辿るようにして振り向いた黒髪に褐色の肌の男も一瞬遅れて微笑んだ。
    3496

    recommended works

    Yako_san8

    DONE★hadesweekly一回目お題・My first…/初めての…
    冥界王子淡い初(失)恋か~ら~の~、死神が何かを察する小話です。王子と死神はなんだかんだ付き合いの長い親友同士という感じ。お題なので3000字以内のライトな感じを目指したのですが、ちょっとオーバーしました。切れのいい短編が書けるようになりたいです。そしてお題に沿えているのか不安になってきました。ファイトォ!
    魂の片割れ 深い緑に囲まれた地を疾走する影があった。深紅の衣をひらめかせ軽快に駆け抜ける。弾む息と踏みしめた地に刻まれた燃え盛る足裏の熱の残照とが、久遠の楽土を彩る何よりも生命の輝きに満ちていた。

     年経た石造りの橋を渡り新たな区画に足を踏み入れたその影は、かすかに風に乗って届いた控え目な声に顔を上げると歩みを止める。そして再び、今度はゆったりとした足取りで進み出した。最近とみに絆を深めた友人達の元へと。
     柔らかな草地を過ぎてひび割れた石の階段に足をかけ、数段上がったところでようやく談笑している二人の姿が目に映る。―刹那、影は息を呑んで立ち止まった。

    「ザグレウス?」
     立ち竦む影に気付いた金の髪の男が少し驚いた風に目を丸くしたのち、穏やかな声をかける。その視線を辿るようにして振り向いた黒髪に褐色の肌の男も一瞬遅れて微笑んだ。
    3496