住めば都
DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました。使用お題「魔法みたいだね」
ロノ夢。美味しい料理を作ってくれるロノの手は魔法の手だね、という話です。
魔法の手 自身の城とも言うべき厨房で、包丁を握り、フライパンを振り、お玉で鍋をかき混ぜる。ロノにとっては、悪魔執事となり調理担当の仕事をもらってからというもの、毎日繰り返した作業だ。
慣れた手つきで料理を作りながら、ロノは落ち着かない気持ちだった。厨房内をくるくると動き回る彼の背は、じっと注がれる視線を受け止めている。視線の主がほかの執事たちであれば歯牙にもかけないが、ロノの動きを熱心に見つめているのは、彼にとって唯一無二の主人だ。
ロノは浮ついてしまいそうな気持ちを押さえつけるために、平常心、平常心と口の中で唱える。しかし正直に言えば、効果は無いに等しかった。
「主様、お待たせしました! 簡単なもので申し訳ないですけど、夜食ができましたよ」
2761慣れた手つきで料理を作りながら、ロノは落ち着かない気持ちだった。厨房内をくるくると動き回る彼の背は、じっと注がれる視線を受け止めている。視線の主がほかの執事たちであれば歯牙にもかけないが、ロノの動きを熱心に見つめているのは、彼にとって唯一無二の主人だ。
ロノは浮ついてしまいそうな気持ちを押さえつけるために、平常心、平常心と口の中で唱える。しかし正直に言えば、効果は無いに等しかった。
「主様、お待たせしました! 簡単なもので申し訳ないですけど、夜食ができましたよ」
住めば都
DONEあくねこ、ミヤジ夢。「愛の出来損ない」の蛇足的ななにか。
↑からしばらく経って、二人が恋人になったあとのできごと。相変わらずぐるぐる悩んでる先生を主様がすくいあげるような話です。
ちなみにこれは本当に蛇足の蛇足ですが、ピロートークのつもりで書きました!
愛と呼ばせてくれ「ミヤジ」
「いっ!?」
名前を呼ばれると同時に額を弾かれて、ミヤジは痛みに呻いた。腕の中の愛しいひとに向けて、批難混じりに「痛いよ」と訴える。彼女は苦笑して、ほっそりとした指先で労るようにミヤジの額を撫でてくれた。
「だって、ミヤジが一人で悩んでいても仕方のないことをぐるぐる考えていそうな顔をしていたから」
「そ、そうか……」
それは一体どんな顔なのだろうと考えてみるが、ミヤジには想像もつかない。そもそも、ミヤジは自分のことを表情の乏しい男だと思っていた。僅かな表情の変化から、細かな心情を察することのできる、彼女の洞察力がすごいのだ。
「それで?」
「うん?」
「なにを考えていたのか、教えてはくれないの?」
1660「いっ!?」
名前を呼ばれると同時に額を弾かれて、ミヤジは痛みに呻いた。腕の中の愛しいひとに向けて、批難混じりに「痛いよ」と訴える。彼女は苦笑して、ほっそりとした指先で労るようにミヤジの額を撫でてくれた。
「だって、ミヤジが一人で悩んでいても仕方のないことをぐるぐる考えていそうな顔をしていたから」
「そ、そうか……」
それは一体どんな顔なのだろうと考えてみるが、ミヤジには想像もつかない。そもそも、ミヤジは自分のことを表情の乏しい男だと思っていた。僅かな表情の変化から、細かな心情を察することのできる、彼女の洞察力がすごいのだ。
「それで?」
「うん?」
「なにを考えていたのか、教えてはくれないの?」
住めば都
DONEあくねこ、ミヤジ夢。手を離すことが愛ならば、自分が抱えている感情はなんなのだろうかとぐるぐるするミヤジ先生の話。
薄暗くなってしまったけど、ネタがネタなので仕方ないと言えばそう。
穏やかで自分より周りを優先するひとに見えるけれど、実際は、頑固だし愛情が重いし我を通しがちな先生が好きです。
愛の出来損ない「次はわたし!」
「ぼくが先だよ!」
子どもたちの騒ぐ声が聞こえて、ミヤジは慌てて部屋のドアを開けた。今回、教室として使わせてもらった孤児院の一室には、まだ生徒たちと彼の主人がいるはずだった。
ミヤジは休日を利用して、子どもたちに勉強を教えるため街を訪れていた。
教室となる場所はその時々によっていろいろだが、今日は以前から、町外れにあるこの孤児院の部屋を使わせてもらう約束になっていた。ひととおりの授業のあと、ミヤジは子どもたちを主人に任せ、挨拶と次回の約束のため院長の元を訪ねていたのだが。
「なにかあったのかい!?」
思いのほか大きな音を立てて開いた扉に、中にいた者は皆、驚いたようだった。言い争っていた二人の子どもも口を噤んで、ぽかんとミヤジを見つめている。
2399「ぼくが先だよ!」
子どもたちの騒ぐ声が聞こえて、ミヤジは慌てて部屋のドアを開けた。今回、教室として使わせてもらった孤児院の一室には、まだ生徒たちと彼の主人がいるはずだった。
ミヤジは休日を利用して、子どもたちに勉強を教えるため街を訪れていた。
教室となる場所はその時々によっていろいろだが、今日は以前から、町外れにあるこの孤児院の部屋を使わせてもらう約束になっていた。ひととおりの授業のあと、ミヤジは子どもたちを主人に任せ、挨拶と次回の約束のため院長の元を訪ねていたのだが。
「なにかあったのかい!?」
思いのほか大きな音を立てて開いた扉に、中にいた者は皆、驚いたようだった。言い争っていた二人の子どもも口を噤んで、ぽかんとミヤジを見つめている。
住めば都
DONEあくねこ、ボスキ夢。冷房の効きすぎた電車が寒すぎて、途中下車して帰ってきた主様をボスキが出迎える話。
ボスキは、自己肯定感はそれなりだけど、自己評価はあんまり高くなさそうだなと思っています。
気遣いは細やかだし、ひとのことを全然見てないようで、一番見ているのは実は彼なんじゃないかなと思います。
気づけばあんたのことばかり いつ主人が帰ってきてもいいよう部屋を整えたボスキは、作業を終えると手持ち無沙汰になって、時計を見やった。
時刻は二十時をすぎたところだ。いつもならあちらの世界で仕事を終えた主人が帰ってくるころだが、今日は予め、遅くなると聞かされている。少なくともあと一時間は帰ってこないだろう。
つい「早く帰ってこねえかな」と独り言ち、ボスキは慌てて周囲を見回した。屋敷の主人の帰宅を待ちわびているのは彼だけではないが、それをほかの執事に聞かれるのは面映ゆい。ましてや本人に聞かれてしまったら、しばらくはどんな顔をすればいいのかわからなくなるだろう。
緩んだ気を引き締め直すように深呼吸を一つ。待っている間にトレーニングでもしようかと思ったところで、まだしばらく帰らないはずの主人が帰ってきた。
2420時刻は二十時をすぎたところだ。いつもならあちらの世界で仕事を終えた主人が帰ってくるころだが、今日は予め、遅くなると聞かされている。少なくともあと一時間は帰ってこないだろう。
つい「早く帰ってこねえかな」と独り言ち、ボスキは慌てて周囲を見回した。屋敷の主人の帰宅を待ちわびているのは彼だけではないが、それをほかの執事に聞かれるのは面映ゆい。ましてや本人に聞かれてしまったら、しばらくはどんな顔をすればいいのかわからなくなるだろう。
緩んだ気を引き締め直すように深呼吸を一つ。待っている間にトレーニングでもしようかと思ったところで、まだしばらく帰らないはずの主人が帰ってきた。
住めば都
DONEあくねこ、ルカス夢。善意が裏目に出たというか、藪をつついて蛇を出したというか、そういう話。もう逃げられない。
雉も鳴かずば撃たれまい「私にできることがあれば、なんでも言ってください」
片手を胸に当て、担当執事のルカスが言った。それは、女が不思議な縁で彼ら悪魔執事たちの主人となってから、何度も聞いた言葉だった。
出会ったころは、単なる社交辞令だと聞き流していた。しかし、いくつもの困難をともに乗り越えた今では、彼らが偽らざる真心からそう言っていることを女は知っている。だからこそ心配で、彼女は初めて、その台詞を聞くたびに思っていたことをぶつけてみることにした。
「ずっと、思っていたんだけどさ。そんなに簡単に"なんでも"って、言わないほうがいいんじゃない?」
「おや、どうしてですか?」
ルカスは金色の瞳を瞬かせた。聡い彼のことだから、女が言いたいことは理解しているだろうに。彼女はちょっとムッとして語気を強めた。
1634片手を胸に当て、担当執事のルカスが言った。それは、女が不思議な縁で彼ら悪魔執事たちの主人となってから、何度も聞いた言葉だった。
出会ったころは、単なる社交辞令だと聞き流していた。しかし、いくつもの困難をともに乗り越えた今では、彼らが偽らざる真心からそう言っていることを女は知っている。だからこそ心配で、彼女は初めて、その台詞を聞くたびに思っていたことをぶつけてみることにした。
「ずっと、思っていたんだけどさ。そんなに簡単に"なんでも"って、言わないほうがいいんじゃない?」
「おや、どうしてですか?」
ルカスは金色の瞳を瞬かせた。聡い彼のことだから、女が言いたいことは理解しているだろうに。彼女はちょっとムッとして語気を強めた。
住めば都
DONEあくねこ、アモン夢。花を育てたい主様と、手伝いをするアモンの話。
アモンの小悪魔っぽさを全然表現できませんでした。難しい……でもまた挑戦したい……
作中の花の育て方については、ウェブで調べながら書きましたが、間違っているところもあるかもしれません。ご容赦ください。
開花のためのプレリュード「私もなにか育ててみたいなあ」
アモンが主人の私室に飾る花を変えようと、瑞々しく咲いた庭の花を持っていたときのこと。その花たちを見た主人が、ぽつりと漏らした。
遠慮ばかりのアモンの主人が、執事たちの仕事を手伝う以外で自らなにかをやりたいと言い出すのは、とても珍しいことだった。幸運にも、彼女の希望を聞く栄誉に与ったアモンとしては、是が非でも叶えてやりたいところだ。
しかし、いくら本人の要望とはいえ、主人に土いじりをさせるのはいかがなものか。外で育てるのであれば、陽光に晒されるのは免れないし、虫だって出る。少し考えただけでも、多方面から反対をくらいそうだ。例えば日焼け対策にうるさい衣装係とか、虫嫌いのマナー指導係とか。
4027アモンが主人の私室に飾る花を変えようと、瑞々しく咲いた庭の花を持っていたときのこと。その花たちを見た主人が、ぽつりと漏らした。
遠慮ばかりのアモンの主人が、執事たちの仕事を手伝う以外で自らなにかをやりたいと言い出すのは、とても珍しいことだった。幸運にも、彼女の希望を聞く栄誉に与ったアモンとしては、是が非でも叶えてやりたいところだ。
しかし、いくら本人の要望とはいえ、主人に土いじりをさせるのはいかがなものか。外で育てるのであれば、陽光に晒されるのは免れないし、虫だって出る。少し考えただけでも、多方面から反対をくらいそうだ。例えば日焼け対策にうるさい衣装係とか、虫嫌いのマナー指導係とか。
住めば都
DONEあくねこ、テディ夢。階段を上る気力を失って段差に腰掛けていた主様を、テディが部屋まで抱き上げて運ぶ話。テディがオープンすけべになってしまったような気がしないでもない……
パレス広すぎるよ…ネタ第二弾です
甘える姿はSSR 玄関ホールの大階段に小柄な人影を見つけて、テディは内心、ラッキーと喜びの声を上げた。彼は厨房での手伝いを終えて、別邸に戻るところだった。慣れない作業をこなすのは大変だったが、その疲れも、彼女に会えば途端に吹き飛んでしまう。
「主様、おかえりなさいませ!」
「あ……テディ。うん、ただいま」
元気いっぱい出迎えたテディとは対照的に、主人は疲れきった様子だ。応える声も、どこかぼんやりとしている。
こんなにお疲れなのに、仕事のあとわざわざ屋敷に顔を出してくださるのだから、主様は本当に優しい人だなあ。そんなふうに思って、テディは自然と笑顔になる。
「主様、こんなところで、なにをしていらっしゃるんですか?」
「いやあ……特になにをしていたわけでもないんだけど……」
2345「主様、おかえりなさいませ!」
「あ……テディ。うん、ただいま」
元気いっぱい出迎えたテディとは対照的に、主人は疲れきった様子だ。応える声も、どこかぼんやりとしている。
こんなにお疲れなのに、仕事のあとわざわざ屋敷に顔を出してくださるのだから、主様は本当に優しい人だなあ。そんなふうに思って、テディは自然と笑顔になる。
「主様、こんなところで、なにをしていらっしゃるんですか?」
「いやあ……特になにをしていたわけでもないんだけど……」
住めば都
DONEあくねこ、ハウレス夢。夏の終わりにセンチメンタルになってしまった主様とハウレスの話。
企画「貴方が紡ぐ物語_弍」参加作品。「もうすぐ、夏が終わる」という書き出しで作品を作るという企画でした。楽しく参加させていただきました。ありがとうございました!
愛しき日々よ、続け もうすぐ、夏が終わる。
私たちはフガヤマでの滞在を終え、屋敷に戻ってきていた。かの地での賑やかなお祭りは、夏という季節の楽しさを凝縮したようで、慣れた場所へ帰ってきた安心感より、寂しさのほうが勝ってしまう。
夏の終わりは、どうにもセンチメンタルになってしまっていけない。
「主様、大丈夫ですか?」
「え?」
「いえ、ため息をついていらしたので」
傍に控えてくれていた担当執事のハウレスは、そう言うと心配そうに眉尻を下げた。私は元気そうに見えるよう笑顔を作って、大丈夫だよと答える。きちんと誤解を解いておかないと、この過保護な執事はどこまでも心配を加速させてしまうのだ。
「ただ……ちょっと寂しいなって思っただけなの。フガヤマで過ごした時間が、とても楽しかったから」
2034私たちはフガヤマでの滞在を終え、屋敷に戻ってきていた。かの地での賑やかなお祭りは、夏という季節の楽しさを凝縮したようで、慣れた場所へ帰ってきた安心感より、寂しさのほうが勝ってしまう。
夏の終わりは、どうにもセンチメンタルになってしまっていけない。
「主様、大丈夫ですか?」
「え?」
「いえ、ため息をついていらしたので」
傍に控えてくれていた担当執事のハウレスは、そう言うと心配そうに眉尻を下げた。私は元気そうに見えるよう笑顔を作って、大丈夫だよと答える。きちんと誤解を解いておかないと、この過保護な執事はどこまでも心配を加速させてしまうのだ。
「ただ……ちょっと寂しいなって思っただけなの。フガヤマで過ごした時間が、とても楽しかったから」
住めば都
DONEあくねこ、ユーハン夢。屋敷の玄関で寝落ちしている主様を見つけて取り乱すユーハンの話。
この後ユーハンは「主様には別邸で生活してもらうのがいいのでは?」という結論に達し、テディやハナマルも巻き込んで策略を巡らすも、本邸の執事たちの猛反対にあう、なーんて騒ぎがあったとかなかったとか。
主様の悪癖 入浴を終えて別邸に戻ろうとしていたユーハンは、玄関にうつ伏せで倒れている主人を見つめて目を剥いた。
「主様!!」
大音声で呼ばわって、傍に駆けつける。頭を揺らさぬようにとそれだけは十二分に気をつけて、ぐったりとした体を抱き起こした。
「主様、主様……!」
肩を叩いて呼びかけるが、反応はない。見たところ外傷は無さそうだが、主人の身になにがあったのか――ケガなのか病なのかそれとも他のなにかなのかは、医者ではないユーハンには判断がつかなかった。
「ルカスさん……ルカスさんをお呼びしないと……」
ああ、けれどユーハンが傍を離れた途端に状態が悪化して、主人が帰らぬ人となってしまったら。
その可能性に思い至ってしまったユーハンは、その場に凍りついたように動けなくなった。
2868「主様!!」
大音声で呼ばわって、傍に駆けつける。頭を揺らさぬようにとそれだけは十二分に気をつけて、ぐったりとした体を抱き起こした。
「主様、主様……!」
肩を叩いて呼びかけるが、反応はない。見たところ外傷は無さそうだが、主人の身になにがあったのか――ケガなのか病なのかそれとも他のなにかなのかは、医者ではないユーハンには判断がつかなかった。
「ルカスさん……ルカスさんをお呼びしないと……」
ああ、けれどユーハンが傍を離れた途端に状態が悪化して、主人が帰らぬ人となってしまったら。
その可能性に思い至ってしまったユーハンは、その場に凍りついたように動けなくなった。
住めば都
DONEあくねこ、ハナマル夢。飄々として掴みどころのないハナマルを掴みたい主様の話。
今日のログストを読んで思ったことを書きなぐっただけ。捏造と妄想100%。解釈違いだったらそっと閉じてください。
つかまえた「おーい、主様?」
思考の大海を漂っていた悪魔執事の主は、本日の担当を務めるカワカミ・ハナマルの呼びかけで我に返った。視界いっぱいに整った顔が飛び込んできて、彼女は思わず背を仰け反らせる。
こんなに近くまで来られても気づかなかったのかと、女は内心、自分自身に呆れてしまった。考え事に没頭すると周りが見えなくなってしまうのは、彼女の昔からの悪癖だ。しかしさすがに、ここまで近づかれても気がつかないというのは、今までになかった。
それだけこの屋敷が安心できる場所で、気を抜いて過ごしているということなのだろう。それがいいことなのか、悪いことなのかはさておき。
「主様ってば、このハナマル様が一緒にいるっていうのに、ほか事に浮気か〜? まったく、妬けちまうねえ」
1561思考の大海を漂っていた悪魔執事の主は、本日の担当を務めるカワカミ・ハナマルの呼びかけで我に返った。視界いっぱいに整った顔が飛び込んできて、彼女は思わず背を仰け反らせる。
こんなに近くまで来られても気づかなかったのかと、女は内心、自分自身に呆れてしまった。考え事に没頭すると周りが見えなくなってしまうのは、彼女の昔からの悪癖だ。しかしさすがに、ここまで近づかれても気がつかないというのは、今までになかった。
それだけこの屋敷が安心できる場所で、気を抜いて過ごしているということなのだろう。それがいいことなのか、悪いことなのかはさておき。
「主様ってば、このハナマル様が一緒にいるっていうのに、ほか事に浮気か〜? まったく、妬けちまうねえ」
住めば都
DONEあくねこ、ハウレス夢。朝、しんどそうにしている主様に四葉のクローバーを渡すハウレスの話。生活の思い出ネタバレあり。
これなんと、ほぼ実話でして。ある朝、仕事行きたくね〜と思いながら起きて、家出る前の時間にハウレスを担当にしてつんつんしてたら、四葉を持ってきておまじないをしてくれたんですよ……そういうとこだぞハウレス……
幸福が降り注ぎますように とある朝のこと。主人の起床時刻に寝室を訪ねたハウレスは、いつまでたってもノックに応答がないことに首を傾げた。
常であれば、すぐに「どうぞ」と応えがあるのだが。ハウレスの主人は寝坊も二度寝もめったにしないしっかり者で、彼が起床の声掛けにくるころには、身支度まで済ませていることがほとんどなのだ。
「失礼いたします。主様、起床のお時間ですよ」
もしかしたら今朝は、主人の貴重な寝起き姿が見られるかもしれない。不謹慎とは思いながらも、胸を躍らせながらハウレスは扉を開けた。しかし、ことは彼が思っていたほど簡単ではないようだった。
まだ眠っていると思われた主人は、ぱっちりと目を開いていた。しかし体は未だベッドの上にあり、毛布にくるまったまま。起きたくないと、全身で主張しているようにハウレスには見えた。
2408常であれば、すぐに「どうぞ」と応えがあるのだが。ハウレスの主人は寝坊も二度寝もめったにしないしっかり者で、彼が起床の声掛けにくるころには、身支度まで済ませていることがほとんどなのだ。
「失礼いたします。主様、起床のお時間ですよ」
もしかしたら今朝は、主人の貴重な寝起き姿が見られるかもしれない。不謹慎とは思いながらも、胸を躍らせながらハウレスは扉を開けた。しかし、ことは彼が思っていたほど簡単ではないようだった。
まだ眠っていると思われた主人は、ぱっちりと目を開いていた。しかし体は未だベッドの上にあり、毛布にくるまったまま。起きたくないと、全身で主張しているようにハウレスには見えた。
住めば都
DONEあくねこ、フェネス夢ハウレスに代わって担当執事を務めることになったフェネスの葛藤。
日常の思い出vol1で、自分にはハウレスの代わりなんて務まらないと思い悩むフェネスを見たときからずっと思っていたことを書いてみました。
たぶんこのフェネスは、白黒の館に行く前の彼だと思います。後だったらここまで卑屈にはならなさそう。
ありのままの君でいて 主人の部屋の扉を前に、フェネスは重苦しいため息を落とした。この部屋を、こんなに暗い気持ちで訪うのは、悪魔執事となってからの三百年で初めてのことかもしれない。
フェネスは今日一日、依頼で不在のハウレスに変わって、主人の担当執事を務めることになっていた。
平生であれば、主人の手伝いをする担当の日は、眩いほどの幸福に満ちている。この日だけは、誰に憚ることなく、無条件で主人の傍にいられるからだ。この屋敷に住む執事たちは皆、主の担当を務めたがっていて、だから担当執事はローテーション制となっていた。
順番が回ってくるのは、おおよそ半月に一度ほど。多くの者と同様、フェネスはその日が来るのを指折り数えて待ち焦がれている。
2248フェネスは今日一日、依頼で不在のハウレスに変わって、主人の担当執事を務めることになっていた。
平生であれば、主人の手伝いをする担当の日は、眩いほどの幸福に満ちている。この日だけは、誰に憚ることなく、無条件で主人の傍にいられるからだ。この屋敷に住む執事たちは皆、主の担当を務めたがっていて、だから担当執事はローテーション制となっていた。
順番が回ってくるのは、おおよそ半月に一度ほど。多くの者と同様、フェネスはその日が来るのを指折り数えて待ち焦がれている。
住めば都
DONEあくねこ、ハナマル夢。ホーム会話ネタバレありハナマルと桃を半分こして食べる話です
最後のところ、本当は、守りたい存在として重なるのに、向かう思いは子どもたちへのものとは少し違っていて、恋の芽吹きというか自覚というか、そういう感じにしたかったんですが、気づいたハナマルがその感情をどう扱のか、蓋をして見ないフリをするのか、大事に育てていくのか、私の中で解釈が殴りあって結論が出ませんでした……
重ねて、分け合って 街で所用を済ませ屋敷に戻ったハナマルは、玄関でユーハンに呼び止められてぎくりと肩を揺らした。
もっとも、なにか叱られるようなことをしでかした覚えがあるわけではなかった。今日はきちんと言いつけられた用件を果たしてきたし、賭場へ寄り道もしていない。
だからこれは、条件反射のようなものだ。ハナマルは普段、同じ部屋で暮らすこの真面目な青年から、小言をもらってばかりいるので。
「な、なんだよユーハン。今日はまだ、なにもしてねえぞ」
「……これからなにかしでかすような物言いはやめてください。小言を言うために呼び止めたわけではないですよ」
「あれ、そうなのか?」
なにを言われるのかと構えていたハナマルは、ユーハンの応えに拍子抜けして首を傾げた。ユーハンは大仰にため息をつく。
2355もっとも、なにか叱られるようなことをしでかした覚えがあるわけではなかった。今日はきちんと言いつけられた用件を果たしてきたし、賭場へ寄り道もしていない。
だからこれは、条件反射のようなものだ。ハナマルは普段、同じ部屋で暮らすこの真面目な青年から、小言をもらってばかりいるので。
「な、なんだよユーハン。今日はまだ、なにもしてねえぞ」
「……これからなにかしでかすような物言いはやめてください。小言を言うために呼び止めたわけではないですよ」
「あれ、そうなのか?」
なにを言われるのかと構えていたハナマルは、ユーハンの応えに拍子抜けして首を傾げた。ユーハンは大仰にため息をつく。
住めば都
DONEあくねこ、フルーレ夢。主様は、どうやらフルーレにお願いがあるようです。
夏イベが楽しみで楽しみで仕方ない今日この頃です。
夏の暑さと繁忙期がマジのマジで辛すぎる日々ですが、執事たちの浴衣姿に癒されながら乗り越えていきたいと思います。
俺のレッスンは厳しいですよ! フルーレは、地下の執事室で新しい衣装のデザインを考えていた。進み具合は、残念ながら芳しいとはいえない。ペンを握ってはいるものの、その手はしばらく止まったままだった。
少し気分転換でもしてこようか。外の空気を吸えば、なにかいいアイディアが浮かぶかもしれない。
そう考えたフルーレがペンを置いたところで、扉を叩く音が響いた。
「はい、どうぞ」
「入るね」
応答を受け、ドアの向こうから返されたのは柔らかな女性の声だ。十人を超えるデビルズパレスの住人の中に、女性はたった一人。訪ねてきたのが大切な主人であることに気づいて、フルーレは目を丸くした。
「あ、主様!? 呼んでくだされば、俺のほうからお伺いしましたのに……!」
1870少し気分転換でもしてこようか。外の空気を吸えば、なにかいいアイディアが浮かぶかもしれない。
そう考えたフルーレがペンを置いたところで、扉を叩く音が響いた。
「はい、どうぞ」
「入るね」
応答を受け、ドアの向こうから返されたのは柔らかな女性の声だ。十人を超えるデビルズパレスの住人の中に、女性はたった一人。訪ねてきたのが大切な主人であることに気づいて、フルーレは目を丸くした。
「あ、主様!? 呼んでくだされば、俺のほうからお伺いしましたのに……!」
住めば都
DONEあくねこ、ハウレス夢。過労で熱を出したハウレスが主様に看病される話。
なおハウレスは回復したあと、ボスキやアモンから主様に甲斐甲斐しく世話されたことをさんざんからかわれたそうな。
担当執事をつついてると、いやそのセリフそっくりそのまま返すよ!?って思うことが多くて、この話もそういうアレから生まれました( ˇωˇ )
きみに捧げる特効薬 今になって思い返して見ると、朝起きたとき、いつもより体が重いような気はしたのだ。けれど、頭が痛いとか咳や鼻汁が出るとか喉が痛むとか、ほかの症状がなかったものだから。少し疲れが溜まっているのだろうと、ハウレスは軽く考えてしまった。
「おそらくは、過労だね」
診察していたルカスが真剣な表情で告げるのを聞いて、ハウレスの主人はひどくショックを受けた表情になった。主様がそのように悲しそうなお顔をされる必要はないのにと、ハウレスは思ったけれど、熱があることを自覚してしまった体はやたらと重だるくて、口を開くこともままならなかった。
ハウレスの異変に気づいてルカスの元へと連れてきたのは、他ならぬ主人だった。
この日――。ハウレスは寝起きに体のだるさを覚えたものの、大したことではないと断じて普段どおりに仕事に取りかかった。屋敷中の窓を開けて空気を入れ替え、トレーニングをこなし、主人に起床時間を知らせにいった。身支度を済ませた彼女を食堂までエスコートするために手をとって、そこで眉間に皺を寄せ険しい顔になった主人に手首や首筋、額などを触られた。そうして、有無を言わさずここへ連れてこられたのだ。
2523「おそらくは、過労だね」
診察していたルカスが真剣な表情で告げるのを聞いて、ハウレスの主人はひどくショックを受けた表情になった。主様がそのように悲しそうなお顔をされる必要はないのにと、ハウレスは思ったけれど、熱があることを自覚してしまった体はやたらと重だるくて、口を開くこともままならなかった。
ハウレスの異変に気づいてルカスの元へと連れてきたのは、他ならぬ主人だった。
この日――。ハウレスは寝起きに体のだるさを覚えたものの、大したことではないと断じて普段どおりに仕事に取りかかった。屋敷中の窓を開けて空気を入れ替え、トレーニングをこなし、主人に起床時間を知らせにいった。身支度を済ませた彼女を食堂までエスコートするために手をとって、そこで眉間に皺を寄せ険しい顔になった主人に手首や首筋、額などを触られた。そうして、有無を言わさずここへ連れてこられたのだ。
住めば都
DONEあくねこ、ベリアン夢ある休日の朝、ベリアンが主様におまじないをかけてもらう話
仕事終わりにアニメイトに飛び込んで、サンリオコラボのグッズを買ってきました! コラボフェアの期間に買いに行けてよかった!
ぱしゃこれを1袋だけ買ったんですが、ベリアンが来てくれました!やっぱり書くと出ますね( ˇωˇ )
とっておきの魔法をかけてよ ベリアン・クライアンの一日は、主人の起床時間に彼女の寝室を訪うことから始まる。
「主様、おはようございます。起きていらっしゃいますか?」
「起きてるよ。どうぞ、入って」
「失礼いたします」
ドア越しのやりとりを経て入室する。このときには大抵、主人は身支度を終えているので、ベリアンが主人のためにできるのはアーリーモーニングティーを淹れることくらいだ。
こことは異なる世界でも生活を営む主人は、身の回りのことはほとんど自分でこなしてしまう。よっぽど疲れているときくらいしか寝過ごすこともないので、朝の手伝いはそれほど必要ではないのだろうなと、実のところベリアンは思っている。
優しい主人は、ただ執事たちの仕事を奪わないでくれているだけなのだ。それでも、主人が毎朝ベリアンの用意する紅茶を美味しそうに飲んで、笑顔で礼を言ってくれるのが幸せで。だからベリアンは主人が拒否しないかぎり、毎朝主人の部屋を訪ね、朝の紅茶を淹れるのをやめるつもりはない。
1968「主様、おはようございます。起きていらっしゃいますか?」
「起きてるよ。どうぞ、入って」
「失礼いたします」
ドア越しのやりとりを経て入室する。このときには大抵、主人は身支度を終えているので、ベリアンが主人のためにできるのはアーリーモーニングティーを淹れることくらいだ。
こことは異なる世界でも生活を営む主人は、身の回りのことはほとんど自分でこなしてしまう。よっぽど疲れているときくらいしか寝過ごすこともないので、朝の手伝いはそれほど必要ではないのだろうなと、実のところベリアンは思っている。
優しい主人は、ただ執事たちの仕事を奪わないでくれているだけなのだ。それでも、主人が毎朝ベリアンの用意する紅茶を美味しそうに飲んで、笑顔で礼を言ってくれるのが幸せで。だからベリアンは主人が拒否しないかぎり、毎朝主人の部屋を訪ね、朝の紅茶を淹れるのをやめるつもりはない。
住めば都
DONEあくねこ、ベリアン夢本編2章の直後くらい。悪魔執事が不老だと知った主様の反応が怖くてたまらないベリアンの話
楽園にはほど遠い わざと隠していたつもりでは、なかった。
だから、主人と墓参りに出かけていたハウレスから報告を聞いたとき、ショックを受けている自分に気づいて、ベリアンは驚いたのだ。
「ベリアンさん。先ほど主様に、俺たち悪魔執事が不老であることをお伝えしました。トリシアの墓石がかなり古いことを疑問に思われたのでしょう。いつごろ作られたものなのかと聞かれて、その流れで……」
「そう、ですか……わかりました」
主様は、なんと?
そう聞きたくて、けれどベリアンはハウレスに問うことができなかった。若い執事たちのまとめ役を務めるこの青年は、腹芸の類があまり得意ではない。その彼の様子からして、不老の事実を知った主人が悪魔執事を恐れるような事態には、なっていないだろうと思うけれど。
2871だから、主人と墓参りに出かけていたハウレスから報告を聞いたとき、ショックを受けている自分に気づいて、ベリアンは驚いたのだ。
「ベリアンさん。先ほど主様に、俺たち悪魔執事が不老であることをお伝えしました。トリシアの墓石がかなり古いことを疑問に思われたのでしょう。いつごろ作られたものなのかと聞かれて、その流れで……」
「そう、ですか……わかりました」
主様は、なんと?
そう聞きたくて、けれどベリアンはハウレスに問うことができなかった。若い執事たちのまとめ役を務めるこの青年は、腹芸の類があまり得意ではない。その彼の様子からして、不老の事実を知った主人が悪魔執事を恐れるような事態には、なっていないだろうと思うけれど。
住めば都
DONEあくねこ、ハウレス夢本編2章の直後くらいに、セラフィムの騙った主様の処刑を夢に見るハウレスの話。
始めたばっかりですが、生きてるだけで褒めてくれるあくねこくんにズブズブです。
本編は3章1部まで、イベストは全て読了、未所持カードばっかりだし執事たちのレベルもまだまだなので解釈が甘いところも多いかと思いますが、薄目でご覧いただければと思います( ˇωˇ )
悪夢のしりぞけ方 ハウレスはエスポワールの街中に佇んで、呆然と雑踏を眺めていた。
多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
「火あぶりだってさ」
「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
「許せないよ。死んで当然だ」
虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。
4518多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
「火あぶりだってさ」
「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
「許せないよ。死んで当然だ」
虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。
kuon
DOODLEぽいぴく試し書き。💮💍(💮🌸)夢。
💮の力の代償を捏造しています。
続きは夜プラ予定。
#aknkプラス
ハナマルの力の代償に応えたい「ハナマル…大丈夫かな」
宿屋の窓越しにすっかり暗くなった外を眺めていた私は思わず彼を思い浮かべそう呟いていた。
***
時刻は3時間程前に遡る。
ある依頼の為に私はハナマルと二人で街に出ていた。依頼の内容を卒なくこなしたハナマルのリクエストにより街で一杯飲んでから屋敷に戻ろうかと話していた時だった。運悪く天使の襲撃に遭ってしまったのだ。相手は知能天使ではなかったものの、数が6体と多かった。いち早く力の解放を行い、ハナマルは見事天使を倒したのだったが…。
「…悪い、主様。ちょっと疲れちまった。馬車まで歩けそうになくて…何処か泊まれる宿屋ってありそうかい?」
天使を倒しホッとしたのも束の間、そう言ってハナマルはよろよろした足取りで路地裏に入ると、壁にもたれ掛かりズルズルと座り込んでしまった。大丈夫?と声をかける私の声が聞こえるのか聞こえていないのか、ハナマルは浅い呼吸をするばかりだ。これはマズイと、私は近くにいた通行人に声を掛け急いで宿屋を探す。幸いにも空きのある宿屋を見つけたため、途中で薬等を買込み宿屋へ向かった。
2456宿屋の窓越しにすっかり暗くなった外を眺めていた私は思わず彼を思い浮かべそう呟いていた。
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時刻は3時間程前に遡る。
ある依頼の為に私はハナマルと二人で街に出ていた。依頼の内容を卒なくこなしたハナマルのリクエストにより街で一杯飲んでから屋敷に戻ろうかと話していた時だった。運悪く天使の襲撃に遭ってしまったのだ。相手は知能天使ではなかったものの、数が6体と多かった。いち早く力の解放を行い、ハナマルは見事天使を倒したのだったが…。
「…悪い、主様。ちょっと疲れちまった。馬車まで歩けそうになくて…何処か泊まれる宿屋ってありそうかい?」
天使を倒しホッとしたのも束の間、そう言ってハナマルはよろよろした足取りで路地裏に入ると、壁にもたれ掛かりズルズルと座り込んでしまった。大丈夫?と声をかける私の声が聞こえるのか聞こえていないのか、ハナマルは浅い呼吸をするばかりだ。これはマズイと、私は近くにいた通行人に声を掛け急いで宿屋を探す。幸いにも空きのある宿屋を見つけたため、途中で薬等を買込み宿屋へ向かった。