子供のようなあなた 「さっみぃ……」
「あ、おはようKK。コタツあったまってるよ」
暁人が言い終わるよりも先にKKがコタツに吸い込まれるように入っていく。肩まですっぽりと入って、朝の冷気で冷えた足を温める。
「KK、靴下履きなよ。いくら布団で温まっても裸足でフローリングを歩けばすぐに冷えちゃうだろ」
「室内で靴下履くのが嫌なんだよ」
「もー、子供みたいなこと言って」
暁人は台所で朝ごはんを作りながら、コタツで体を小さくしているKKを見てほっこりしていた。ベーコンエッグを仕上げながら、焼きあがったトーストを皿に乗せる。KKの目の前に朝ごはんを乗せた皿を置くと「美味そうだな」とKKが笑った。無糖のカフェオレをその隣に置けば、それをちびちびと飲み始める。つい、その様を眺めて暁人は満足そうに微笑んだ。
「なぁに笑ってんだよ」
「えー?可愛いなぁって思って」
「あ?……何でだよ」
「いつもはカッコいいKKのだらしないところとか、可愛いところをさ、見られるのは僕だけなんだなぁって思うと……ね?」
マレビト相手に好戦的に戦うKKの姿はかっこいい。派手に火のエーテルを爆発させて華麗に一掃していく様子は、共に戦う暁人から見ても気持ちがいいものだった。戦闘が終われば、真っ先に怪我はないかと心配してくれるところも好きだった。それに、戦い方が派手なせいでしょっちゅう顔や手に傷を作る彼が、どんどん愛おしくなる。まるで外で遊んで来る度に擦り傷をつくってくる、ワンパクな子供のようで。
「カッコイイKKも好きだけど、可愛いKKも大好きだよ」
「…………そうかよ」
KKが少し顔を赤くして目を逸らす。笑いながら、暁人が自分の分の食事をテーブルに置くと、向かい合って「いただきます」と共に朝食を食べ始めた。
冬を迎えた、ある日のこと。
朝目覚めると、外は真っ白な銀世界になっていた。
「わぁ……都心でここまで積もるなんて珍しい…」
ふと窓からベランダを覗くと、白い塊が見えた。それと、雪を踏み締めた足跡が少し。
暁人がベランダに出てその雪の塊を見ると、それは少し歪な形の雪だるだった。誰が作ったかは明白である。陽の光で溶けないよう、日陰になる場所に移動させた。
「おう、おはよう」
「あ、おはようKK」
大きな欠伸をし、腹を掻きながら少し眠そうな声を発するKKを見て、愛おしさで胸をいっぱいにさせ堪らなくなった暁人は、その頬にキスを落とす。それでもまだ寝ぼけている彼を見て、不意に冷たくなった手を腹に突っ込んでやる。
「ぉうわッッ!?つめてッッ…!」
「お腹出してたら冷えちゃうだろ」
「だったら冷やすんじゃねぇよッ」
「KKのお腹、温かいなぁ……」
可愛い可愛い、僕の恋人。
この腹の奥を知っているのも、僕だけなんだ。
積もった雪が溶けきってしまうまで、歪な雪だるまと綺麗な雪だるまが、寄り添うように並んでいた。