卵料理と知らない彼と。「Quisiera unos huevos y café, por favor.」
猫が喉の奥で鳴くような聞き慣れたはずのキースの声が、知らない音で話すのに驚いて、思わず目を向けた。
「¿dos」
「Sí.」
無愛想に見える年老いた店の主人と、たったそれだけ言葉を交わすと、コーヒーカップを二つ持って俺の居るテーブルに戻ってきた。
「…スペイン語か。」
「んー…まあな。」
「……話せたのか。」
「少しだけな。」
「…そうか。」
この男とはもうそこそこ長い付き合いになるが、そんな話は聞いた事がなかったな。とほんの少し苦々しい気持ちでコーヒーに口をつけた。
「…初めて聞いた。」
「あー…まぁ。普段は必要ねぇし。」
「…どこで?」
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