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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    よーでる

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    第2話。さっくり合流させるつもりでしたが、考えてた流れをそのままなぞるだけだとつまらなくなりそうなので四苦八苦中です。

    ##龍のうたった祭り歌
    #龍のうたった祭り歌
    festivalSongsSungByDragons

    シリィ・カーニバル第2話「若草の案内と水底の砦」01 草原に吹く風に、かすかに花の香りが混じる。にこにこと笑う若草色の髪の少女、の姿をした何かと、戸惑いながらも絆された笑顔を浮かべるレクトに、カイは速やかに背を向けた。

    「じゃあ、ここでお別れだな」

    「ぇっなんで!?」

     なんでもクソもあるか。罵りたいのを堪えて足を動かすが、忙しくなく後ろを付いてくる気配がする。時間稼ぎに、カイは適当な方角を指差した。

    「ここがどこだかわからないだろ。俺はこっちの方角を探すから、お前はあっちに街がないか……」

    「人がいっぱいいるとこがいいの?」

     割り込んできたラン、と名乗る生き物がカイの返事を待たずに走り出す。素足がいつの間にか艶やかな革の靴を履いて、白い寝巻きが袖をはためかせる鮮やかに赤い短衣に変わっている。
     煌びやかな花の刺繍が施された衣装はまるで踊り子のようだったが、薄い生地が草に引っかからないのが奇異だった。
     くるりとふり向いたランが、「こっちこっち!」と元気に手を振ってくる。苦虫を噛み潰すような心地で、カイはそちらに足を向けた。付いてくるレクトが、カイの渋面を見上げて心配そうにささやく。

    「カイ、具合悪いの?」

    「……朝から歩き通しだからな」

    「うっ、ごめん。疲れたら言ってね! おぶるから!」

     本当にそのくらいさせてもバチは当たらないかもしれない。魔が差す思考を振り落として、カイはランの背中を追った。
     ステップを踏むように先を指差したランが、天気でも告げるようにのたまう。

    「魔物(モンスター)!」

    「何?」

     その言葉通り。風のそよぐ草原に、無数の目玉が咲いた。

    「ぴぎゃあああああああああっ!!?」

    「ッ潰れろ!!」

     レクトが悲鳴をあげるのに構わず、カイは即座に編み上げた術式を宙に放った。青い光が閃き、一瞬の悪い夢だったかのように目玉たちが掻き消える。

    「おい、とっとと立て。一時的に散らしただけだ。すぐに復活(リスポーン)する」

    「まっ、待って。びっくりしちゃ、って?」

     腰を抜かしていたレクトが、ランに見下ろされて動きを止める。
     ランは微笑んでいた。無邪気な明るい笑みではない。静かで慈しむような、在るか無きか如き微笑み。

    「こわくない~♪ こわくない~♪」

     神聖な気配が霧散するような気の抜けたメロディに、場の空気が弛緩する。実際元気づけられたレクトがすぐに立ち上がったので効果はあったのだろうが。
     先に進もうとして、カイはランが動こうとしないのに訝しんだ。

    「いたくない~♪ いたくない~♪」

     ランがくるくると回る。その場のすべてに語りかけるように。そこに見えない誰かがいるように。
     実際に聴いている者がいることに気づいて、カイは瞠目した。大気を漂う澱んだ気配。魔物を生やす死者の魂――未練を宿す思念が、ランの周りに集まり、その指先に慰撫されている。

    「もう♪ こわくない~♪」

     草原に、光が灯った。青草のそよぐ野原に、色とりどりの花が咲き誇り、その花弁が淡く輝く。陽射しの下でもはっきりとわかるのに、目に快い光。魔を祓う精霊の祝福、霊菫(たますみれ)。

    「カイ、これって……」

    「【還元(ピュリファイ)】だ」

     大地を蝕む病毒と成り果てていた死者の魂が精霊に還ることで、大地の恵みとなる現象。
     だが、神官が何年も供養を続けてやっとわずかながら荒廃した土地に緑が戻る程度の話だ。こんな急速に、しかも都市の神殿並みに霊菫が灯るなど。
     霊菫の光を浴びながら、ランが再び駆け出す。カイたちが動こうとしないでいると、立ち止まって手を振ってくる。早く早くと、張り切って道案内をする子どものように。

    「えっと、とりあえず、ランはいい子、で、いいんだよね?」

    「……そうだな」

     精霊への祈り……巫術は信心や慈しみの心があれば一概に強力になるというものでもないが、悪心があれば効力を減ずる。こんな桁外れの還元を起こせる存在が邪悪だということはないだろう。
     だが。それとこの生物の危険性、迷惑さは別問題だった。脳天気にランの元へ駆け出したレクトの大荷物に占められた背中を、嫌々追う。
     撒こうとしても追いつかれるだけだろうという予測を、わざわざ実証する気にはなれなかった。
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    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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    よーでる

    DOODLE公主は本来プリンセスという意味ですが、祭り歌では公国の代表という意味の言葉になってます。アデラさんは武闘家系ギャルです。
    ほんとは東西南北それぞれの話するやるつもりだったけど西と南はちょっとド鬱なのでまたの機会にします。子どもに無配慮に聞かせたら怒られるやつ……
    一通りの世界観の説明が終わったので、明日からはこの世界観で単発話を量産する予定です。
    公国の興り(2)凍てず熔けぬ鋼の銀嶺 道行く花に光を灯しながら、アデラティア公子一行は海に臨む丘にたどり着きました。丘に咲く白い菫を見渡して、公子は軽やかに宣言します。

    「ここにわたしたちの都を作りましょう」

     こうして光る菫の咲き誇る白き都コノラノスは作られました。号は公国。龍王国最後の公子が興した国です。
     公子は精霊の声を聴く神官を集め、神殿を築きました。血ではなく徳と信仰で精霊に耳を澄ませ、精霊の祈りを叶え、世に平穏をもたらし人心を守る組織です。
     国の運営は神殿の信任を受けた議会が行います。アデラは神殿の代表たる公主を名乗り、花龍ペスタリスノの光る花【霊菫(たますみれ)】を国に広めました。

     霊菫は花龍の息吹。花の光が照らす場所に魔物は近寄らず、死者の魂は慰められ、地に還ります。公国が花の国と呼ばれる由縁です。
    3002

    よーでる

    DOODLEどんどん敬語が剥げてますが語りじゃなく講義だからということで……
    あと大まかな国の特徴語ったらひとまず単発ネタ書き散らす作業に入れるかなぁ。
    ぶっちゃけお話の途中で世界観説明しようとすると毎回語りすぎたりアドリブで知らん設定出たりするのでその事前発散が狙い……
    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
     この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
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    よーでる

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    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
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     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
    1226

    よーでる

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    一通りの世界観の説明が終わったので、明日からはこの世界観で単発話を量産する予定です。
    公国の興り(2)凍てず熔けぬ鋼の銀嶺 道行く花に光を灯しながら、アデラティア公子一行は海に臨む丘にたどり着きました。丘に咲く白い菫を見渡して、公子は軽やかに宣言します。

    「ここにわたしたちの都を作りましょう」

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     公子は精霊の声を聴く神官を集め、神殿を築きました。血ではなく徳と信仰で精霊に耳を澄ませ、精霊の祈りを叶え、世に平穏をもたらし人心を守る組織です。
     国の運営は神殿の信任を受けた議会が行います。アデラは神殿の代表たる公主を名乗り、花龍ペスタリスノの光る花【霊菫(たますみれ)】を国に広めました。

     霊菫は花龍の息吹。花の光が照らす場所に魔物は近寄らず、死者の魂は慰められ、地に還ります。公国が花の国と呼ばれる由縁です。
    3002