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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    よーでる

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    大昔に書いたプロットを思い出しながら書いてるんですが発掘できなかった…
    レクトはとても頑丈なのでカイはよく囮にしてます。レクトは実際かすり傷一つ負わないのでどちらが非道かは意見の分かれるところ。

    ##龍のうたった祭り歌
    #龍のうたった祭り歌
    festivalSongsSungByDragons

    シリィ・カーニバル第2話03 魔物は死者の魂が精霊の法則を歪ませ生み出した害獣だ。死霊の力が強かったり数が多いと、空間そのものが歪むこともある。

    (とはいえ、場を形成している以上は核になっている箇所があるはずだ。そこを壊せば、少なくとも春の間は顕現できなくなるはず)

     魔物はレクトが惹きつけているので、襲われる頻度は少ない。腐臭の濃い汚泥の続く洞穴を、黙々とカイは進んだ。この汚泥も魔物の一部だ。体が蝕まれないよう己の霊力を強く意識して皮膚に張り巡らせていたが、すぐにその必要はないと気づいた。
     カイの隣にふわふわと浮くランは、相変わらず汚れ一つない。皮膚を突き刺すような腐臭もその笑顔を崩すには至らない、どころか、若草色の髪から果実に乳液を絡めたような甘い香りが漂ってくる。
     意識を凝らせば、魔に蝕まれた瘴気がランの周りを避けているのがわかった。隣りにいるカイのことも。

    「手助けするつもりはあるらしいが、自分で魔物を倒す気はないのか?」

    「やだ~」

     くるくると回るランは笑顔のままだ。薄っぺらではないが、場違いな笑み。
     あの馬鹿でかトカゲもどきのときに感じた力なら、この異空間ごと魔物を殲滅するなど容易いはずだ。人型になってからの息をするような力の使い方を見れば、加減ができないということもない。

    「人殺すの、やだ~」

    「……何?」

     その発言の真意を問いただす前に、道がひらけた。清水の匂いが頬を撫でる。
     頭上には青空を描いた壮大な天井画。雲ひとつ無い晴天が、真白い太陽を中心に淡い水平線へ溶けゆく様が見事な濃淡で描かれている。
     丸みを帯びた広間の中央には、長身のカイが見上げるほど大きな杯があった。杯から湧き出る水が広間を満たし、靴を濡らしながら過ぎ去っていく。清らかなタイルは草木を模しているようだった。頭上から見下ろせば、あの杯は空を映す泉のように見えるだろう。

    (これは……水龍の聖堂か?)

     龍王国を守護した、数ある龍の中でも最も美しき龍、水底の写し身/晴天を映す鏡/水龍ネプルディル。その逆鱗に触れて龍王国は洪水に没した。つまり。

    「カイぃいいいいっ、たすけてぇっっっ!!」

     向かい側から広間に駆け込んできたレクトに、カイは顔を顰めた。止める暇もなく隣に走り寄って、大げさに肩で息を吐いてくる。
     見たところ、当然のように五体満足で、くたびれてはいるものの怪我一つ無い。しっかり背にくくりつけられた荷物が、屈んだ拍子にぶつかりそうになった。

    「こ、こわかったぁ。魔物が、魔物があんなにいっぱい……なんとか荷物は死守できたけど……
     あっ、ランも無事だったんだね! よかったぁ」

    「レクト。離れろ」

    「ひどいっ!!?」

     言っても聞かないので無言で距離を取る。呼吸を整え、手を掲げる。指先に青白い光が灯り、水面にインクを垂らしたように宙に広がる。
     いつもなら一瞬で術を放つカイの大仰な準備動作に、レクトが詰め寄るのをやめる。その隙にカイは口を開いた。

    「あの杯は【鏡水(かがみみず)】だ。水龍ネプルディルの本体である『青空を映す湖』に見立てることで、その水を汲み上げる装置。龍王国の繁栄を支えた無限の水源だ」

    「? えっと、水龍さまって、昔怒って洪水を起こしたっていう?」

     狙い通りレクトの気が逸れたのを横目で確認して、カイは術式を編みながら解説を続けた。

    「そうだ。つまりここが、魔物を生んでいる死霊の発生源」

     ごぽり、と杯が泡を立てた。粘り気のある泥が、清水を讃えていた杯からあふれる。杯から身を起こした影がこちらを……レクトを睨んだ。

    「この異界の核だ」

     言い捨てて横に跳ぶ。杯から放たれた濁流が、容赦なくレクトを飲み込んだ。
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    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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