うしろめたさ あの人のことは、どうも苦手だ。別に何か悪いことをされたこともないし、むしろ逆で、気にかけてもらっていると言ってもいいのに。
おれをあの泥濘から救い出してくれたのは間違いなくあの人なのに、未だにあの人には馴染めずにいる。女王との謁見のときに始めて顔を合わせたあの四人のほうが、気が楽だ。
花園さんと接しているほうがまだいい。付き合いが長いぶん、対応には慣れている。
あの人には密命を与えられ、花園さんには夭聖連中の動向を探れと言われた。どちらも引き受けた。仕事はあるうちが花だ。花園さんは、あの人のことを、子どもの頃から苦労してきたとも言っていた。なるほど、それでおれを依枯贔屓する理由はわかった。でも、おれはおれであの人、豊穣さんじゃない。あれだけの献身と忠実さを、おれは絶対に持つことはできない。おれは、豊穣さんの期待に応えられることなく終わるだろう。できれば、それがもっと先だったらいい。