ひまわり迷路 小さい頃から、努力なんかしなくても、そこそこやっていけてた。自分の仕草で、他人の関心を惹きつけるなんて簡単だった。だから、アイドルを目指した。
上京したら、思いのままにはいかない現実が牙をむいてきた。実家の仕送りがないと、バイトしても家賃すら払えなかった。レッスン代だって、バカにならなかった。田舎では一等賞だったのに、東京では初心者扱いされるのは地味に辛かった。レッスンで知り合った、同じ木端アイドル志願の子たちとも、適当に仲良くしていた。田舎の知り合いは、ここには誰もいない。
圭ちゃんと知り合ったのはその頃だ。なんとなく一緒にいることが多くなり、同じユニットでデビューが決まった。
光の差すほうへ向かわなければ。
わたしの歌も踊りも、大したことはない。だったら、他の手段でファンを掴まなければ。
圭ちゃんはダンスの自主レッスンを始めた。焦ることはない。あいつら、歌も踊りも見る目なんかない。田舎の連中と同じように。歌より踊りより、ファンをつなぎ止める手段を、わたしは知っている。
圭ちゃんが、男の子と歩いているのを見かけた。くたびれた練習着を着ていた圭ちゃんが、男にうつつを抜かすところなんて見たくなかった。あんな、業界の匂いもしない、ファンでもなさそうな、ちょっとかわいいだけの、いわゆる一般男性となんか。
ひとの視線欲しさに、全てを捨ててきたのに、圭ちゃんだけ普通に戻ろうなんて許さない。圭ちゃんにも光を見せてあげる。ファンを名乗ってるあいつらをたぶらかせば。わたしたち二人一緒に。