夏の夜の 体の右側が重くなった。あの金鋼族の若いのが帰ってきたのだな、と思った。クーラーの効きが悪いこの部屋に、五人も体の上に乗せているのは相当暑苦しいが、文句を言えた義理でもないし、実際はそう複雑なことは喋れない。喋れないが、そう不自由を感じたこともない。あえていうなら、相棒と離れたのが寂しい程度か。
出されたものは何でも食べる。甘かろうが辛かろうが、カレーだろうがマシュマロだろうが夢だろうが欲だろうが。いちいち吟味などしない。
ときどき食べすぎて胸焼けをおこすと、金鋼族の若いのがすまなそうな顔で頭を撫でたりする。それがどういうことなのか、バックンにはわからない。なぜ自分の欲だけ他人より大きいと思い込んでいるのか、わからない。例えばあの光輝族の。自分でさえ食い切れなかった欲で全てを滅ぼしかけたのに比べれば、時々の胸焼けくらいかわいいものじゃないか。そう言いたいけれど、鳴き声しか出せないから、黙っておくしかない。