散文「あ、これですか? こいつは僵尸っていうんですけど、これは道士……んー、アーツとはまた違う古来の術、まあ炎国で伝わる御伽話なんですけど。そういうので言われてる死者の装束なんですよ」
言いながらリーは笑いながら私の前でくるりと回ってみせた。
「おれとしちゃあこないだのマジシャン姿よりは顔も隠れるしいつもの服と近いんで気楽なんですけど。似合いますかね?」
周りに人がいないこともあって、リーは少し気取って写真用のポーズなどをしてみせる。そうしてフェイスシールド越しにじっと見ているはずのドクターに問いかけたが、彼はただ黙ってこちらを見ているばかりで。
「──あ、あのですね。できればおれとしちゃあ何でもいいから言ってもらえると」
「……リー」
「はい」
てくてくと近寄ってきたドクターはするりとフェイスシールドを外してフードを取る。そのままぽすりとリーに抱きついた。
「リー」
「どうしました? 人目がないからって珍しい」
ぎゅうっと胸元にしがみつく温かさに、リーは首を傾げながらもドクターを抱きしめた。
「……生きてるね」
「そりゃ死んでませんから」
胸に顔を当てていたのは、耳で鼓動を確かめていたらしい。手が伸びてリーの首元から脈を取ろうとするのに気づいて、リーはやや前屈みになってドクターの手を首に当ててついでに唇にキスをねだる。
とくとくと流れる音に、安心したのかドクターはリーの唇に己のを一瞬重ねて離れようとする。
リーはそれを尾で持って引き寄せると今度は自分がしっかりとドクターを包み込んだ。
「不安になりましたか」
「なった。似合いすぎてて」
「そんな簡単には死にませんよ。あなたがいるのに」
リーはスウっと息を吸い、ドクターを堪能するようにかき抱いた。