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    hashi22202

    @hashi22202

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    hashi22202

    DOODLE二人旅、孤児を保護するトラキア王と召喚師の話
    (弊アスクでは召喚師がトラキア王を「王様」と呼んでいます)

    #秋のトラキア王強化期間
     子どもがいる。
     王様にそう言われて、僕は顔をあげた。山の日は野よりもはやく暮れる。影の落ち始めた森に視線をまよわす僕に、ほらあそこだと王様が指をさした。言われてみれば木立の向こう、小さな影がふたつ見える。子どもかどうかはわからないけど、まあそれらしくも見えなくない。よく見えたな、と、僕は素直に驚いた。十二聖戦士の血を引く人は、こういうところでちょっと人間離れしている。まして直系、聖痕持ちとくれば。
     しばらくまえにこの辺りで、村が野盗に襲われた。特務機関は慌てて救援に向かったけども、それ以来子どもがふたり、行方不明になっていた。野盗に攫われたのか、それとも逃げ惑ううちに、迷って帰れなくなってしまったのか。どっちなのかは知らないけども、おいおい聞けばいいだろう。もしかしたら、全く違う子なのかもしれないけど。とにかく助けることが先決だと、僕は王様とふたりで木立の間を縫っていった。先日の襲撃以来、村近くの見回りを強化していたわけだけども、それがひょんな結果となったわけだ。運がいい、と僕は思った。もし彼らが行方不明になった子どもなら、相当衰弱しているはずである。正直、生きているだけでも奇跡というものだ。
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    hashi22202

    MOURNINGほんのりオカルトにありそうな「時空の食い違いで死んだはずの人に会う話」で、戦前のトラキア王と戦後の息子さんがなんでか出会う話。同じ話なんですが、前半は息子さん視点で、後半はお父さん視点です。ほんのりアリ→アル
    (779年)
     朝、執務室の扉を開けたら、いないはずの父がいた。
     ”父”は相変わらず顰めっ面をして書類を読んでいたが、ふと顔を上げて、
    「なんだ、おまえか」
     と、ぼそりと言った。どう返していいかわからなかったので、
    「はい、私です」
     と、つい間抜けなことを言うと、そうか、とだけ言われた。”父”はしばらく目の間を揉んでから、少しばかりこちらの顔を眺めていたが、やがて書類に視線を戻した。あまりにも日常的な動作であったから、アリオーンには何も訊けなかった。そうして息子の見ている先で、”父”は長々とため息をついた。
    「相変わらず勝手を言う」
     まったくあの馬鹿は。そう言って”父”は、書類に署名をしたためた。それから、もう一度、やはり深々と息をついた。そうしてため息混じりに、いくつかの決裁を片付けていった。その苦り切った様子が、アリオーンにはめずらしかった。その”父”の、奇妙に悄然とした姿は、あのときのことを思い出させた。
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