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    とうこ

    じゃっと書いた落書きとか、なんかの下書きとか、適当な奴をぽいぽいしていきますよ!

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    とうこ

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    ななみが反省する七五

    #七五
    seventy-five

    .

     オマエのせいだーと冗談みたいな泣き声で責め立ててくる。ベッドで子供みたいに身を丸めて、べそをかいている姿は確かに年齢を鑑みれば冗談みたいな姿だ。けれど少しばかり、冗談で済まないかもしれない。
    「大丈夫ですか」
     カサカサに掠れた声はやけに深刻に響く。だから前髪を撫でた手の下で青い目がぱちりと開いて七海を見上げた。目が合うなりヤンチャに笑って
    「うん大丈夫」
     なんて嘯くけれども七海の手のひらは額に伝う冷や汗で濡らされている。
    「どこか痛いところは?」
    「どっこも痛くない。ただちょっと止まんないだけ」
     カタカタと震える体をぎゅうと抱きしめるとやけに冷えている。手足の筋肉が強張って、縮んでいて、いつも抱く体の感触よりずっと硬くて、小さい。
     セックスで調子に乗りすぎてこんなことになんてシャレにもならない。
     あんまり気持ち良さそうだから、もっと良くさせたかった。蕩けた顔が愛しくて、いつまでも見ていたかった。自分の指で体で、あられもなく善がる姿に興奮した。媚びるような甘えた声は思うがままに上げさせることができるし、長い手足は絡みついてきて縋ってきて、蒸気のような息を吐きながら、顔をびしょびしょに濡らして、何度も名前を呼んできた。これが可愛くないわけがなくて、可愛がりたくて、白い肌の中で色のついたところ、とがったところ、肌の隙間、触れる限りの体の中を弄って、虐めて、要は夢中だった。
     何度でもイかせられるのを半ば面白がって、ぐちょぐちょに混ぜ合わせた下半身で追い立て続けたら、急に呼吸の色が変わった。震え方も変わって、表情も変わった。
     過呼吸だと気づいて頭から冷や水をぶっかけられた気持ちになり、慌てて体を引いて、呼吸しやすい姿勢に変えてやって背を撫でて、やっと息は落ち着いてきたところだけれど、体は震えたまま止まらない。
     オマエのせいだは、本当にその通りなのだ。相手の限界も考えずに調子に乗りすぎたのだから。
     強張った体は腕の中で震え続けている。痙攣のようだ。
    「だいじょーぶ、すぐ治るよ」
     七海が真剣に心配をしていることに気づいた悟は、強がって笑ってみせる。こんなときまで痩せ我慢しようとして、いっそさっきまでのように子供っぽい口調で罵倒されている方がずっとマシだ。
    「……こういうの前にもありましたか?」
    「ないよー。なんでデショね、コレ。あービックリした〜。でももー息は苦しくないしホントだいじょーぶ」
     わざとおどけて喋るのなんて七海には通用しないのに、悟はそれでもヘラヘラ笑う。
     撫でる背中は筋肉が縮まって、深呼吸しようとしているようだけれどもうまく肺を膨らませられなくて浅い呼吸を繰り返している。
    「……手、痺れてないですか?」
     七海が指を撫でると、悟は濡れた睫毛をぱちぱちと瞬かせる。
    「よくわかるねー。なんか顔とか歯とかも痺れてんの」
     さっきまで火照ってくねっていた腕をさすってやる。
    「冷えてますね」
    「なんか、腕も痺れてるかも。ホラ、感覚なくなって自分の腕じゃないみたいな感じのとき、あるでしょ? それみたい」
     七海は少し迷って、あまり知られたくないことの情報開示と、医療倫理の踏み外しとを、しかし冷や汗まみれで笑う人を前にしては、もう、えいと超えてしまうことにした。
    「……安定剤、飲みますか」
    「え、何それ」
    「私に処方されたものですが、少し残ってますので」
     七海は立ち上がって一度部屋を出る。グラスに水と、白い錠剤を手にして戻る。
    「……確かに人に飲ませるのは良くないですが、使用期限内ですし、そんなに強い薬ではありません。少し筋肉が緩むくらいのものです」
    「オマエ、飲んでんの?」
    「呪術師に戻ってからは一度も飲んでませんよ」
     悟はマジマジと、シートの中の小さな白い粒を見る。それから七海の顔を見る。ありとあらゆることを言いたそうな顔をして、しかし何も口にせず、七海の手のひらから錠剤を摘み上げた。
     七海は起きあがろうとするのを手伝ってやり、背を支えて、水を飲む手も支える。カタカタと震える手が水面を揺らすので飲みにくそうだったけれど、唇の中に薬品はつるりと滑り込んで、喉仏が上下した。そのまま水を飲み干して、グラスを取り上げた七海の首に両腕を絡めてくる。
    「一緒に寝て」
     七海はもとよりそのつもりだったから、そっと横たえた長い体に自分も寄り添い、腕の中に収めて、少しはこれで温まらないか、震えが止まらないかと体温を分ける。
     しばらくぐったりと無反応だった悟は、
    「あー……これ、すごいカラダ、重くなるね。ねむ……」
     とボヤくので、そのまま寝てしまうといいですよと頭を撫でた。腕の中の体も強張っていたのがだらりと弛緩して、もうどこにも力が入っていない。かたかった体も柔らかく緩んで、だから震えも止まっている。ゆるゆる、でもまだ普段より細い呼吸をしている。
    「……あした、仕事、行けっかなー……」
     悟はそんな独り言を最後に寝入ってしまった。存外真面目なんだからと七海は一人で苦笑いをする。
     ああ今夜は失敗した。反省をする。無理をさせられる相手とついつい思い込んで、キツイ言葉も情欲も遠慮なく向けてしまいがちだけれども、この人もただの人間なのだ。肉も骨も至って柔らかなただの普通の人間だ。大事にしたい気持ちはあるのにどうして失敗してしまうのだろう。
     もうすっかりけろりとのんきな顔ですやすや眠る悟の横、七海は眠れない夜を過ごす。
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    Sssyashiro

    DONE【展示】書きたいところだけ書いたよ!
    クリスマスも正月も休みなく動いていたふたりがい~い旅館に一泊する話、じゃが疲労困憊のため温泉入っておいしいもの食ってそのまましあわせに眠るのでマジでナニも起こらないのであった(後半へ~続きたい)(いつか)
    201X / 01 / XX そういうわけだからあとでね、と一方的な通話は切られた。
     仕事を納めるなんていう概念のない労働環境への不満は数年前から諦め飲んでいるが、それにしても一級を冠するというのはこういうことか……と思い知るようなスケジュールに溜め息も出なくなっていたころだ。ついに明日から短い休暇、最後の出張先からほど近い温泉街でやっと羽が伸ばせると、夕暮れに染まる山々を車内から眺めていたところに着信あり、名前を見るなり無視もできたというのに指が動いたためにすべてが狂った。丸三日ある休みのうちどれくらいをあのひとが占めていくのか……を考えるとうんざりするのでやめる。
     多忙には慣れた。万年人手不足とは冗談ではない。しかしそう頻繁に一級、まして特級相当の呪霊が発生するわけではなく、つまりは格下呪霊を掃討する任務がどうしても多くなる。くわえて格下の場合、対象とこちらの術式の相性など考慮されるはずもなく、どう考えても私には不適任、といった任務も少なからずまわされる。相性が悪いイコール費やす労力が倍、なだけならば腹は立つが労働とはそんなもの、と割り切ることもできる。しかしこれが危険度も倍、賭ける命のも労力も倍、となることもあるのだ。そんな嫌がらせが出戻りの私に向くのにはまあ……まあ、であるが、あろうことか学生の身の上にも起こり得るクソ采配なのだから本当にクソとしか言いようがない。ただ今はあのひとが高専で教員をしているぶん、私が学生だったころよりは幾分マシになっているとは思いたい。そういう目の光らせ方をするひとなのだ、あのひとは。だから私は信用も信頼もできる。尊敬はしないが。
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