北風は似た者同士十月
「悪ふざけ」
「ふぁ、おはよ一彩」
「おはよう、兄さん」
ツアーから帰宅した燐音の休息日。一彩はそれにあわせて休みを取った。自室からだらしない恰好ででてきた燐音の足元には、とらきちが同じようにあくびをしている。
「二人で寝たのかい」
「ン? なんだやきもちかよ可愛いな」
「まだ何も言ってないよ」
一彩はキッチンでコーヒーを入れながら、ぼふんとソファに倒れこむ兄のためにマグカップをもう一つとりだした。兄の帰宅に合わせて買ったコーヒーは泡を立ててよい香りをたてる。ひとつには牛乳と砂糖を入れて、一彩は並んで隣に座った。燐音がはあと息を吐く。
「やっとツアーも終盤だぜ」
「長いようで、短かったね」
「あぁ。急に企画が舞い込んだときはどうなることかと思ったが、まぁやっちまえばなるもんだよな」
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