飲むものによって食器を変える。なんでも同じカップで済ますのも便利で楽ではあるけれど、一息入れる時は容れ物にこだわるくらい心に余裕を持っていたい。
今日も気温は低空飛行、温かいものが飲みたくなる。さて今の気分は日本茶か、それとも紅茶にしようか。食器棚から湯呑みとティーカップどちらをとるか迷っていると、廊下に面したドアが開けられすらりとした長駆が入ってきた。
「雨彦さん。おかえりー」
「ああ。ただいま」
外から帰ってきた雨彦さんは、白い顔の鼻先だけを赤くしている。冷たい空気をまとわりつかせたコートを脱いでハンガーにかける背中に訊ねた。
「寒かったでしょー。なにか温かい飲み物でもいれようかー?」
「おや。ずいぶんサービスがいいな」
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