Jacaranda .
少し先端のすり減った杖で砂利を避けながら、慎重に歩を進める。
何も考えずとも足が体を運んでくれていたのは何十年前の話だ。今は考えれば考えるほど動けない。
杖の先やほんの少しの石畳を目印にして、短い距離を刻みながらやっとベンチに辿り着いて息を吐く。
体は重く、思考は大河の如くどろりと流れゆく。話しかけられてもすぐに返事ができない。弁舌が取り柄だった自分が。
幸いまだ動けるから、こうして街路樹の中に居場所を見つけにいく。クエルナバカ・セントロから少し離れた、何の変哲もない小さな公園。
朝日に染まっていく雲とまだ眠っているかのような街、見事な花々との対比に飽きることは生涯ないだろう。この年齢ではもう何年もないだろうが。
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