「何だ、眠いのか? しかたない、今日は一緒に寝てやるよ」
終わりのない宴に船を漕ぎかけていたバッキンガムは、低く抑揚の薄い声に眠気が覚めるほどの衝撃を覚えた。
隣に目を向けると、共に窓際の長椅子へと避難していたリチャードがつまらなそうな顔で浮かれて酒を酌み交わす者達を眺めている。あまりの退屈さに眠気を感じただけでなく、本当に眠ってしまっていたのかもしれない。聞き間違いかと身じろいで体勢を直していると、冷えた暗い瞳がバッキンガムを見た。
「まだこの場に居たいと言うのならかまわんが、俺はもう戻るぞ」
「……聞き間違いじゃなかったのか」
「なに?」
「いや、下がる。いつまでも付き合ってられるか」
「なら、こい」
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