場外乱闘 ──オリーブの木の傍にある花壇へと薔薇が植えられた頃に、校舎の奥まったところにある空き教室にノックを三回、ゆっくりと。
それが、ささやかに流布していた「ある部活」への入部届けだった。どのくらい前から続いている伝統なのかはわからない。多分百年は経っていないのだろうけど、自分達が生まれる前からある事しか分からない。そんな、不思議の話に惹かれたのか。それとも、自ら選んで来たのか。真新しい制服に身を包んだ一人の女生徒が、古びた教室の前に立っていた。
大体の生徒がノックするであろう場所の高さに、落書きのように彫られているのは薔薇とオリーブの葉だろうか。そこに目を一瞬だけ止めてから、彼女は戸を叩く。
knock,knock,knock.
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