ひとがら「……吉川さんが女の人を泣かせた?」
「そうらしいんだが」
司書室にて中里介山が作ってくれたカレーを特務司書の少女は食べていた。本日の助手であるフィッツジェラルドが報告をしてくれた。文豪たちに関しては基本放置ではあるが、何かあったら連絡をしろとは言っている。
介山のカレーは何日も野菜を煮込んだ野菜のルーを使ったカレーだ。志賀のカレーはスパイスメインであり胃がきついときはきついのだがこれはとてもやさしい味だ。
「誰か人助けでもして泣かせたのかな」
「アイツに関してはそっちになっちまうのは分かるぜ。司書」
「人柄だよね」
左手でスプーンを持ちながらカレーを食べていく。後で吉川英治に話を聞こうとは考えた。
「敦君と敦君のプレゼントを買いに商店街に行ったら道路をいきなり二歳児が飛び出し、我が助け子供を母親に渡したら母親が泣いたのだ」
581