明朗快活「......マイト、シカトか」
スミヲはスマホ画面を見つめ、溜め息をついた。最初の頃は敬語できちんきちんとレスが返っていたが、この頃は10文字以内の短文がぶっきらぼうに返ってくるばかりである。画面の端に表示されたデジタル時計は午後3時過ぎを指している。完全に手持ち無沙汰になったスミヲは視線を上げ、仮装した人々で賑わう渋谷ストリーム前広場を見るともなく眺める。
「Trick or Treat, スミヲ君!」
近寄る気配もなく背後から明るい脅しをかけられ、スミヲはギクリと振り向いた。どこで買ったのか黒い耳のカチューシャを身につけたリーダーがニコニコと底知れぬ笑みを向けている。勿論お菓子なんて持っていない。リーダーが何を考えているかなどスミヲには知る由もなかったが、経験上あまり良い予感はしない。「頼れるリーダー」だが「信頼できる人物」ではないのだ。それでも何とか笑顔を繕い応える。
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