冷えたからだはきみのもの 押し入れから流れ込んできた冷気のおかげで部屋はよく冷えていた。薄曇った窓ガラスは残念ながらもすっかり見慣れた光景で、これがいつまで続くのかと投げやりな気持ちにもなる。いたるところに出来た氷柱を見回しながらくしゅん、とくしゃみをひとつ。なんとか登校はしたが、あたるの風邪はまだ、治りきっていなかった。
「…寒いのぉ」
鞄を机の上に放り投げ、寒さをしのぐために制服の上から赤い半纏を羽織った。陽は沈みきっていないとはいえ、もうずいぶんと冷える。まるで冬の夜みたいに。
押し入れが使えないので、部屋の隅に畳んでおいた布団を敷いていると、頬を撫でる風の冷たさが増した。不意に押し入れの奥の方から、ざっざっとよく冷えた冬道を踏みしめる独特の靴音がして、誰かが近付いてくるのが分かった。
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