りんどう
凛花(おがわ)
MOURNING※リンドウ+慶くんです※■ゲーム中では断片的にしか語られないリンドウさんと慶くんの関係を深読みしたお話です。ゲームオープニングのあのシーンに繋がるまで何があったのかを勝手に捏造しています。恋愛要素はないバディのお話ですが個人的に気に入っている作品です。
<作品メモ>
2013年に発行した「背中合わせの君」という小説同人誌に収録しているお話です。
背中合わせの君 その日、僕は邸の広間で正座していた。
目の前には兄が居て、さも重大事だと言いたげに厳かに告げる。
「斉基、江戸の一橋公が我らの従兄弟君であらせられるのは知っていよう」
何を今さらと、言葉を返すのも億劫で黙礼で肯定する。
常なら僕の態度に逐一小言を言う兄が、気にかける様子もない。そのまま話を続けた。きっと、これから命じることに比べたら瑣末ごとなのだろう。
何となく予想はついていた。
「知っての通り、一橋家は公方の御身内の立場。家臣をもたれない。謀臣もなく大変心許ない思いをなされていると言う。なれば……」
——きた。
と、心のなかで呟く。
「斉基。下向して公に御仕えしなさい。重大事であるゆえ、京に残す役目諸々、心配せずとも私が引き受ける。そなたは、直ぐに支度をしなさい」
5210目の前には兄が居て、さも重大事だと言いたげに厳かに告げる。
「斉基、江戸の一橋公が我らの従兄弟君であらせられるのは知っていよう」
何を今さらと、言葉を返すのも億劫で黙礼で肯定する。
常なら僕の態度に逐一小言を言う兄が、気にかける様子もない。そのまま話を続けた。きっと、これから命じることに比べたら瑣末ごとなのだろう。
何となく予想はついていた。
「知っての通り、一橋家は公方の御身内の立場。家臣をもたれない。謀臣もなく大変心許ない思いをなされていると言う。なれば……」
——きた。
と、心のなかで呟く。
「斉基。下向して公に御仕えしなさい。重大事であるゆえ、京に残す役目諸々、心配せずとも私が引き受ける。そなたは、直ぐに支度をしなさい」
凛花(おがわ)
MOURNING■リンゆき記念すべき第1作目でした。まだリンドウさんの性格を掴み切れていない頃の試行錯誤が見える。<作品メモ>
2012年遙かなる時空の中で5風花記が発売された直後のイベントで出した「はじめから恋だった」という小説同人誌に収録しているお話です。本のタイトルは【確かに恋だった(http://have-a.chew.jp/on_me/top.html)】様のお題をお借りしたものです。
困った人 総ての決着をつけ、現代へ還って来てしばらく。平穏無事な日々が続いていた。
ゆきは、日本の高校に通い始め、江戸から現代へ連れたってやってきたリンドウも、龍神の加護か配慮か、何らかの職を得て生活は安泰のようである。
だが、そのリンドウについてゆきは気になることがあった。
晴れて恋人同士となってからは、彼の度を過ぎた愛情もそれ程苦になることもなく、週に二、三度の逢瀬を楽しんでいた。
ところが最近のこと。リンドウの部屋を訪ねたゆきは、和紙の長い紙束……手紙だろうか、を眺めて苦笑する彼の姿を見つけた。
その顔は、眉根を下げて困ったようにしているのに優しい微笑みを浮かべているのだ。
ゆきは、その顔に覚えがあった。
3061ゆきは、日本の高校に通い始め、江戸から現代へ連れたってやってきたリンドウも、龍神の加護か配慮か、何らかの職を得て生活は安泰のようである。
だが、そのリンドウについてゆきは気になることがあった。
晴れて恋人同士となってからは、彼の度を過ぎた愛情もそれ程苦になることもなく、週に二、三度の逢瀬を楽しんでいた。
ところが最近のこと。リンドウの部屋を訪ねたゆきは、和紙の長い紙束……手紙だろうか、を眺めて苦笑する彼の姿を見つけた。
その顔は、眉根を下げて困ったようにしているのに優しい微笑みを浮かべているのだ。
ゆきは、その顔に覚えがあった。
限界羊小屋
DONE死神ゲーム非経由で二人の対話が進んでいない世界線の話ダラダラ連み続けた2年生の夏休み、ピアスの穴を増やすリンドウ君の話
誘惑する青空 休日の屋上公園を吹き抜ける熱風は湿ったアスファルトの匂いを孕んでいる。隣に腰掛けた友人の前髪が、風に嬲られてぶわりと持ち上げられている。それを見て、今朝から纏わりついていた違和感の正体に初めて思い至った。前髪に隠れていた右耳に銀の点がひとつ、増えている。
普段学校に来る際は律儀にピアスを外しているから、こうして休日を共にする間柄でもなければ彼のフル装備を目にする機会はない。定点観測しているのは自分くらいかもしれない。彼と連み始めた頃、それは確かに耳たぶの一点だけだった。けれど、梅雨に入る頃には両耳の上側に増え、夏休みの始めにまた増え、少し置いて冬にまた一つ増えた。
そして今日また一つ、右耳の頬に近い部分に真新しいスタッドが光り、根本が少し赤くなっている。
6478普段学校に来る際は律儀にピアスを外しているから、こうして休日を共にする間柄でもなければ彼のフル装備を目にする機会はない。定点観測しているのは自分くらいかもしれない。彼と連み始めた頃、それは確かに耳たぶの一点だけだった。けれど、梅雨に入る頃には両耳の上側に増え、夏休みの始めにまた増え、少し置いて冬にまた一つ増えた。
そして今日また一つ、右耳の頬に近い部分に真新しいスタッドが光り、根本が少し赤くなっている。
限界羊小屋
DONE鍵竜軟禁していたリンドウの言葉をきっかけに「寂しい」という感情を知るミカギさんの話
「さびしい」 通い慣れた「死せる神の部屋」の一角、薄暗い間接照明にスマートフォンの光が煌々と輝いている。画面を覗き込むリンドウに「ただいま」と声をかけると、彼は目を上げないままで「おかえりなさい、ミカギさん」と無感情の答えを返した。
このところ彼の機嫌は低空飛行を続けていた。原因は分からない。再会して1ヶ月ほどは週末ごとに宇田川町で落ち合い、渋谷中のカフェや服飾店を巡ったり、彼が熱を上げているアプリ・ゲームについて夢中で話すのに耳を傾けたりしたものだった。この部屋に招き入れたばかりの頃もこんな風ではなかった。彼はガラス張りの床や低い音で唸るピンボールマシンに目を輝かせて、「こんな豪華な部屋に住んでるんですか」と、興奮に少し声を上擦らせていた。足元に戯れつく光の魚を珍しく思ったのか、コツコツと高く足音を響かせながら、ソファやテーブルの間を歩き回ってはしゃぐ新鮮な姿を見せてくれた。
10201このところ彼の機嫌は低空飛行を続けていた。原因は分からない。再会して1ヶ月ほどは週末ごとに宇田川町で落ち合い、渋谷中のカフェや服飾店を巡ったり、彼が熱を上げているアプリ・ゲームについて夢中で話すのに耳を傾けたりしたものだった。この部屋に招き入れたばかりの頃もこんな風ではなかった。彼はガラス張りの床や低い音で唸るピンボールマシンに目を輝かせて、「こんな豪華な部屋に住んでるんですか」と、興奮に少し声を上擦らせていた。足元に戯れつく光の魚を珍しく思ったのか、コツコツと高く足音を響かせながら、ソファやテーブルの間を歩き回ってはしゃぐ新鮮な姿を見せてくれた。
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DONEBGM:溺れるほど愛した花ドラコルル(+パピとロコロコ)が、両親の墓参りをする話です。
作中の架空の【ピイナの花】は、
リンドウ(正義)・スターチス(変わらぬ心)・カモミール(あなたを癒やす)を合わせた花として書いています。
※おまけで副官との後日談を書くかも知れません。
ドラコルルの墓参り墓石、墓石、墓石。
見渡す限りに、墓石が無機質に並列された、芝生墓地。
冬の寒さがしんと満ち、枯草ばかり一面に広がり、荒涼感を掻き立てる。
男が、無感情に立っていた。
ぴんと整然に、軍服に身を包む男は、まるで人間らしさを感じない。
どんよりとした曇天の下、底知れない冷たさを、影のように湛えていた。
「ご両親にか?ドラコルル」
小さな少年が、男を監視するように、後ろから問う。
口調と声色には、小さな身体には不釣り合いなほど、知性・育ちの良さが満ちている。
大きく、透き通った、翡翠色の目には、強い責任感と善性の光が宿っていた。
「どうせ、お調べになったのでしょう?『パピ大統領閣下』」
低く、抑揚のない声で、皮肉交じりに返す。
5128見渡す限りに、墓石が無機質に並列された、芝生墓地。
冬の寒さがしんと満ち、枯草ばかり一面に広がり、荒涼感を掻き立てる。
男が、無感情に立っていた。
ぴんと整然に、軍服に身を包む男は、まるで人間らしさを感じない。
どんよりとした曇天の下、底知れない冷たさを、影のように湛えていた。
「ご両親にか?ドラコルル」
小さな少年が、男を監視するように、後ろから問う。
口調と声色には、小さな身体には不釣り合いなほど、知性・育ちの良さが満ちている。
大きく、透き通った、翡翠色の目には、強い責任感と善性の光が宿っていた。
「どうせ、お調べになったのでしょう?『パピ大統領閣下』」
低く、抑揚のない声で、皮肉交じりに返す。
限界羊小屋
DONEフレリン ホワイトデー🍪じわモテリンドウに嫉妬するフレの話
ビー・マイ・スイート・ダーリン 親友兼恋人という関係になってから改めて気付かされた。
奏竜胆はモテる。
彼の惚れられ方には決まったパターンがある。最初は涼しげな目元と物静かな雰囲気が目を引く。リンドウから誰かに積極的に話しかけに行くことは少ないので、すぐその後に発展するのはなかなか難しい。物静かなこともあり、どこか高嶺の花めいても見える。しかし、その物腰は意外に柔らかく、頼まれごとをされれば案外付き合ってくれる面倒見の良さもある。グループワークを共にしたり、日直や委員会で同じ担当に当たったり — そんな些細な出来事がきっかけに彼の柔らかな内面が覗き、見る者の心にほんのりとした火を灯すのだ。
その気持ちは分かる気がする。いや、分かるんだけどそれだけにマズい。
6269奏竜胆はモテる。
彼の惚れられ方には決まったパターンがある。最初は涼しげな目元と物静かな雰囲気が目を引く。リンドウから誰かに積極的に話しかけに行くことは少ないので、すぐその後に発展するのはなかなか難しい。物静かなこともあり、どこか高嶺の花めいても見える。しかし、その物腰は意外に柔らかく、頼まれごとをされれば案外付き合ってくれる面倒見の良さもある。グループワークを共にしたり、日直や委員会で同じ担当に当たったり — そんな些細な出来事がきっかけに彼の柔らかな内面が覗き、見る者の心にほんのりとした火を灯すのだ。
その気持ちは分かる気がする。いや、分かるんだけどそれだけにマズい。
限界羊小屋
DONEリンフレ(フェニックス×フレ?)注意:
リンドウがヤンデレめいている
鳥人間リンドウという強い幻覚
鳳凰は微睡む急に影が落ちた。
頭上に何かがあるのが分かる。自分を押し潰すに足る重い何かが。多分、もう間に合わない、助からない。それを理解したフレットの脳は早くも16年分の走馬灯を上映し始めた。脳内をいくつもの思い出が巡る。家族と行った海外旅行、初めて自分で選んだ服、中学時代に親友と登校した風景。それなりに楽しい人生だったかな、などと諦め混じりの思いでそれをただ見つめていた。
脈絡のない追想の最後に浮かんだのは、ついさっきまで共に真昼の渋谷を歩いていた親友 — リンドウの姿。
流行のバッジを二人分手に入れて、一緒にカレーを食べてスクランブル交差点に戻って。そしてその後、SF映画の撮影会かフラッシュモブのようなイベントに巻き込まれて、それで……。
4159頭上に何かがあるのが分かる。自分を押し潰すに足る重い何かが。多分、もう間に合わない、助からない。それを理解したフレットの脳は早くも16年分の走馬灯を上映し始めた。脳内をいくつもの思い出が巡る。家族と行った海外旅行、初めて自分で選んだ服、中学時代に親友と登校した風景。それなりに楽しい人生だったかな、などと諦め混じりの思いでそれをただ見つめていた。
脈絡のない追想の最後に浮かんだのは、ついさっきまで共に真昼の渋谷を歩いていた親友 — リンドウの姿。
流行のバッジを二人分手に入れて、一緒にカレーを食べてスクランブル交差点に戻って。そしてその後、SF映画の撮影会かフラッシュモブのようなイベントに巻き込まれて、それで……。
限界羊小屋
DONEフレ<-リン FinalDay''のif【概要】仲間を失った辛さから幻覚に遊ぶようになったリンドウの話
ななや様よりタイトルを寄贈いただきました。
メリーメリーメランコリー**********
メリーデイズ
**********
オレンジティーソーダは夕暮れと同じ色をしている。炭酸水の中に放課後のカフェの活気が映り込み、オレンジ色がその中に染み込んでいる。柑橘の大きな塊がいくつも浮かんだ、黄昏色のそれをそっと啜ると、優しい甘みとともに口の中がパチパチと弾けた。その爽やかさを楽しみながら、目の前で繰り広げられる賑やかな会話を聞き流している。
学校でも家でもない隙間のような時間。この時間が好きだった。
『コレかぁ?MKNって奴の新作』
『さっぱり分からないな』
『ふむぅ……現代アート、理解するのは難しそうですな』
『……悪くねぇ』
かつて「ツイスターズ」で仲間だった6人と俺で、ベンチ際のテーブルを占拠している。テーブルの向こうの4人はビイトさんのスマホを覗き込み、ワイワイと賑やかに騒いでいる。見るともなく見ていると、目の前でひらひらと片手が振られた。その主である友人を見やる。いつもの人懐っこい笑顔でニカっと笑いかけてきた。
19652メリーデイズ
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オレンジティーソーダは夕暮れと同じ色をしている。炭酸水の中に放課後のカフェの活気が映り込み、オレンジ色がその中に染み込んでいる。柑橘の大きな塊がいくつも浮かんだ、黄昏色のそれをそっと啜ると、優しい甘みとともに口の中がパチパチと弾けた。その爽やかさを楽しみながら、目の前で繰り広げられる賑やかな会話を聞き流している。
学校でも家でもない隙間のような時間。この時間が好きだった。
『コレかぁ?MKNって奴の新作』
『さっぱり分からないな』
『ふむぅ……現代アート、理解するのは難しそうですな』
『……悪くねぇ』
かつて「ツイスターズ」で仲間だった6人と俺で、ベンチ際のテーブルを占拠している。テーブルの向こうの4人はビイトさんのスマホを覗き込み、ワイワイと賑やかに騒いでいる。見るともなく見ていると、目の前でひらひらと片手が振られた。その主である友人を見やる。いつもの人懐っこい笑顔でニカっと笑いかけてきた。
限界羊小屋
DONEフレリン Final Day''のフレット側のifリンドウがFD''の世界線で虚無っている時間、フレットもフレットでリンドウが失われた世界の夢を見ていたら……というお話。
風の行方 あの日、あの時間の前に渋谷駅前で何が起こっていたのか俺は知らない。多分何かがあったのだと思う。
気づいた時にはスクランブル交差点の白線の上で俺たち5人で輪を作るように突っ立っていた。信号は緑色だったが、賑わった道路の真ん中でぼさっと突っ立っていたらそりゃ通行人の邪魔にもなる。急いでハチ公前側に歩を進める俺たちを、道ゆく人々はじろじろ迷惑そうに睨んでいた。
“俺たち5人”なんて言ったけど面識なんて全く無くて、ただたまたまそこに居合わせただけに過ぎない。少し話をした結果も「全員直前の記憶を失っている」というおかしな共通点しか見出すことができなかった (但し、ガットネーロの白服を着た青年とヘッドフォンをつけた金髪の兄ちゃんは友達同士なのだと言っていた) 。彼らが連れ立って離れていき、大きな眼鏡をかけた少女と猫耳フードの子と3人で取り残されて何となく目を見合わせる。特にそれ以上話すこともなかったから、互いに気まずい思いを抱えたまま「じゃあ、」とだけ挨拶をした。彼女らはそれぞれ別の方向に歩き去っていった。
5226気づいた時にはスクランブル交差点の白線の上で俺たち5人で輪を作るように突っ立っていた。信号は緑色だったが、賑わった道路の真ん中でぼさっと突っ立っていたらそりゃ通行人の邪魔にもなる。急いでハチ公前側に歩を進める俺たちを、道ゆく人々はじろじろ迷惑そうに睨んでいた。
“俺たち5人”なんて言ったけど面識なんて全く無くて、ただたまたまそこに居合わせただけに過ぎない。少し話をした結果も「全員直前の記憶を失っている」というおかしな共通点しか見出すことができなかった (但し、ガットネーロの白服を着た青年とヘッドフォンをつけた金髪の兄ちゃんは友達同士なのだと言っていた) 。彼らが連れ立って離れていき、大きな眼鏡をかけた少女と猫耳フードの子と3人で取り残されて何となく目を見合わせる。特にそれ以上話すこともなかったから、互いに気まずい思いを抱えたまま「じゃあ、」とだけ挨拶をした。彼女らはそれぞれ別の方向に歩き去っていった。
限界羊小屋
DONE捏造2w6dリスタしまくって疲れちゃったリンドウくんの話
Take a Siesta♪「……っと、」
柔らかな声が溢れたと思うと友人の頭はガクンと落ち、一瞬後に驚いたように持ち上がった。人差し指でくしくしと目を擦っている姿はまるで毛繕いをする小さなハムスターにも似ていて、思わず苦笑が溢れる。
「今俺のこと呼んだ?リンちゃん」
「言ったかも……俺寝てた?」
リンドウがパシン、と自らの頬を叩く。
「寝てた寝てた」
俺の夢見てたんだ、とフレットは機嫌良さげに茶化した。2週目が始まってから4日間は話しかけることすら躊躇われる気まずい空気だっただけに、昨日「仲直り」ができてからは普段にも増して口数が多くなっている。平日昼間の”バーガーヒーロー”は若年で賑わう休日と異なり、年配の女性たちの2・3人組がぽつぽつとテーブルを埋めるだけだった。顔見知りであろう人々の人間関係について延々と、終わりない四方山話を続けている。眠たくなってしまうような心地よい喋り声が穏やかに辺りを満たす。
4179柔らかな声が溢れたと思うと友人の頭はガクンと落ち、一瞬後に驚いたように持ち上がった。人差し指でくしくしと目を擦っている姿はまるで毛繕いをする小さなハムスターにも似ていて、思わず苦笑が溢れる。
「今俺のこと呼んだ?リンちゃん」
「言ったかも……俺寝てた?」
リンドウがパシン、と自らの頬を叩く。
「寝てた寝てた」
俺の夢見てたんだ、とフレットは機嫌良さげに茶化した。2週目が始まってから4日間は話しかけることすら躊躇われる気まずい空気だっただけに、昨日「仲直り」ができてからは普段にも増して口数が多くなっている。平日昼間の”バーガーヒーロー”は若年で賑わう休日と異なり、年配の女性たちの2・3人組がぽつぽつとテーブルを埋めるだけだった。顔見知りであろう人々の人間関係について延々と、終わりない四方山話を続けている。眠たくなってしまうような心地よい喋り声が穏やかに辺りを満たす。
限界羊小屋
DONEフレリン クリア後世界大学生ネタ①
【概要】雪の日の街角、飲み帰りにダウンしちゃったリンドウを助ける話
ストレイドッグ 駅の改札を出ると少しだけ雪が降っていた。クシュン、とくしゃみが出る。サークルの納め会で一日が過ぎていった。クリスマス前イベントのため3ヶ月ほど前からそれなりに忙しく、他大学からのメンバーとのプログラム調整や主催との連絡、練習用スタジオの予約など走り回っては、空き時間を練習に回していた。その甲斐あってか最後のOB挨拶まで手際よく終えることができ、一同は解放感を持って本日の納め会を迎えた。俺のショーケースにもミスはなかったし、全体的に満足のいく出来だったな、と振り返る。
そしてそれも片付けば今年の用事は大体終了になる。
3ヶ月分、学業が少々傍に追いやられていたことは否定できない。早く帰って課題を片付けてしまおう。クリスマスを2週間後に控え、街は少しずつ明かりを増やし始めている。強い寒気が関東を覆っていて、しばらくは気温が下がるそうだ。
11819そしてそれも片付けば今年の用事は大体終了になる。
3ヶ月分、学業が少々傍に追いやられていたことは否定できない。早く帰って課題を片付けてしまおう。クリスマスを2週間後に控え、街は少しずつ明かりを増やし始めている。強い寒気が関東を覆っていて、しばらくは気温が下がるそうだ。
限界羊小屋
DONEフレリン 2w6d後のifモトイさんの裏切りに落ち込むリンドウにエールを送る話
「明日がいい日になりますように」明日がいい日になりますように。レールに頭を押し付けながら、縋るように俺は呟いた。それは単なる習慣だった。辛いことや嫌なことがあった日は、お守りのようにその言葉を抱きしめていた。口に出してから、言わなければ良かったと後悔した。
明日なんか来なければいい。明日の方向を向きたくない。俯いて膝を抱えて、耳を閉ざしていたかった。
叶うなら……深く眠っていたい。
俺は目をつぶった。
「……?」
あれ……?
視界が急に白く明るくなる。
聴き慣れた渋谷の雑踏。しかし……全てが違っていた。
さっきまで俺は渋谷川のテラスに寄りかかって流れを見下ろしていた、はずだった。暑い一日は終わりに差し掛かろうとしていて、斜めの光が川面に反射して目に痛いほど煌めいていた。しかるに目の前にあるのは見慣れた犬の像だった。いつまでも帰ってこない主人をいまだに待ち続けている。その背中にまっすぐ陽光が当たっている。
8867明日なんか来なければいい。明日の方向を向きたくない。俯いて膝を抱えて、耳を閉ざしていたかった。
叶うなら……深く眠っていたい。
俺は目をつぶった。
「……?」
あれ……?
視界が急に白く明るくなる。
聴き慣れた渋谷の雑踏。しかし……全てが違っていた。
さっきまで俺は渋谷川のテラスに寄りかかって流れを見下ろしていた、はずだった。暑い一日は終わりに差し掛かろうとしていて、斜めの光が川面に反射して目に痛いほど煌めいていた。しかるに目の前にあるのは見慣れた犬の像だった。いつまでも帰ってこない主人をいまだに待ち続けている。その背中にまっすぐ陽光が当たっている。
限界羊小屋
DONEフレリン 2w6dのifリンドウの代わりにモトイさんに復讐してあげる話
友達想い「モトイさん……」
「信じてたのに、ってもう一回言いたいのかな」
継ぐべき言葉さえも奪われて、リンドウは黙って俯いた。 かつて彼を導く星座であったはずの"アナザー"の言葉は、今は彼を苛む刺にしかならなかった。端から見ていても分かるほど彼は傷ついていた。
ビイトもナギも、かける言葉が見当たらない。しかし、その姿に一番驚かされたのは親友であるはずのフレットだった。彼らの付き合いは、長いとは言えないもののそれなりに濃かった。その中で、彼がここまで感情を顕に見せたことはあっただろうか。
何から何まで気に入らない、と彼は思う。
こんなつまらない人間が、悪びれることもなく友人を傷つけているのが一番気に入らない。
10667「信じてたのに、ってもう一回言いたいのかな」
継ぐべき言葉さえも奪われて、リンドウは黙って俯いた。 かつて彼を導く星座であったはずの"アナザー"の言葉は、今は彼を苛む刺にしかならなかった。端から見ていても分かるほど彼は傷ついていた。
ビイトもナギも、かける言葉が見当たらない。しかし、その姿に一番驚かされたのは親友であるはずのフレットだった。彼らの付き合いは、長いとは言えないもののそれなりに濃かった。その中で、彼がここまで感情を顕に見せたことはあっただろうか。
何から何まで気に入らない、と彼は思う。
こんなつまらない人間が、悪びれることもなく友人を傷つけているのが一番気に入らない。
限界羊小屋
DONEモトリンとちょいリンショウクリア後世界
リンドウおたおめ小説
Give me all your words. 机に向き合い、時間が過ぎていくのを眺めていた。長い一日だったな、と竜胆は振り返る。それによく歩いた。心地よい疲れが身体を浸し、脚のあたりがじんわりと熱を帯びている。
沢山のプレゼントをもらった。
ガールフレンドは彼に『コヨコヨ』のカードを送った。同じゲームに熱中する彼はそのカードの価値をよく理解していた。ショウカ、始めたばっかなのにいいのか!?と目を見開いた彼に、エンリョしないでよ誕生日なんだし、大事に使って、と少女は微笑んだ。
友人は彼にフープタイプの銀のピアスを送った。大人しめを好む彼には派手すぎるようにも見えたが、リンドウきっと似合うって!と太鼓判を押された。次の散策の時にはきっと彼の耳に光っているだろう。
3107沢山のプレゼントをもらった。
ガールフレンドは彼に『コヨコヨ』のカードを送った。同じゲームに熱中する彼はそのカードの価値をよく理解していた。ショウカ、始めたばっかなのにいいのか!?と目を見開いた彼に、エンリョしないでよ誕生日なんだし、大事に使って、と少女は微笑んだ。
友人は彼にフープタイプの銀のピアスを送った。大人しめを好む彼には派手すぎるようにも見えたが、リンドウきっと似合うって!と太鼓判を押された。次の散策の時にはきっと彼の耳に光っているだろう。
kurou_mh
DOODLE【遥なる時の中へ5】 リンドウ&桜智ふぉろわーの蒼さんからお題を頂いて描きました!
資料画像があまりなくて、PC前で数時間固まってたw
リンドウさんの髪型が非常に苦労しました_(:3」∠)_