Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    実家

    tokiwa0625

    DONE2024年11月12日のmocoさんのお誕生日に捧げたお話の再録。
    「保護者(めらさん)の実家の骨董屋(店主はめらさんの父)の手伝いをしてる中卒の啓(20)と、祖父の遺品整理を依頼したことがきっかけで骨董屋の常連客となる燈(21)」の現パロの話の導入部分です。
    閑古の鷹の目闇夜の火矢 人文学研究棟を有する阿野戸キャンパスから、最寄り駅まで徒歩20分。
     バスに乗れば、全ての信号に引っかかったとしても移動時間を半分以下にまで短縮できるが、大抵満員御礼のすし詰めな上、車酔いしやすい体質だ。おまけに母親譲りの容姿のせいで、ひっきりなしに科を作った声で話しかけられるときた。気分が優れない状態で見知らぬ女との会話を強要されるなんぞ、ただの苦行でしかない。傘が裏返るような強風が吹き荒れる悪天候のときだろうと、個人利用でも簡単に貸し切れるタクシー一択。バスの世話にだけはならないと心に固く誓っている。
     そこからさらに、学割の文字が躍る立て看板の市街地に背を向け、山の方へと向かう電車に揺られること四駅分。各駅停車しか止まらない小さな駅の改札を潜ると、雨に濡れることがないよう手野商店街の年季の入ったアーケードが手厚く歓迎してくれる。入口の文字が剥げ落ちて「手予商店街」となっているのは、ご愛敬というやつだ。
    13749