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    965_jima

    PAST習作、聡実編。
    無題「好き」とは一体なんなのでしょうか。
     自分自身でも分からない感情の答えを求めて手当たり次第に聞きまわっても正確な答えは見つからず、でも「ただ好きで、それを伝えたいという感情の発露」という、最初に辿り着いた回答にはどうしたって首を縦に振ることができずにいます。
     これまで僕の周りでひそやかに飛び交い、または堂々と交わされてきた「好き」はもっと生き物としての本能というか即物的なものがほとんどで、だから僕は僕の中にあるこの気持ちを「好き」としてカテゴライズすることができずにいるのです。高校時代に遡れば修学旅行の夜、恋人に会いに行った同室のクラスメートや、今も講義の最中に手を取り合って抜け出していく同級生。そして夜半にはまだ早い時間、宿泊までの時間つぶしをしているであろうバイト先によく来る、ボックス席でべったりと隣り合って座るカップル客。どの例を取っても「好き」が生むその衝動は、最終的には公共の場で出来ないことをしたい、そんな即物的なものです。もっとはっきり言えば、それはきっと性的行為につながる「好き」です。けれど僕の中にある感情は、きっとそこには繋がっていません。
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    965_jima

    MOURNING1944、互いの気持ちを察しながら未だ付き合えてないふたりの、たぶんそのうち聡狂になる話です。例の泣き顔のモナリザを捏ねたかった話。
    ※聡実くんの友達♀の名前を便宜上「マナ」にしています
    ※非ネイティブ関西弁
    首洗って待っとけ意気地なしダヴィンチ どうしてファミレスの壁に名画のレプリカがあるのか、といういまさらな疑問を、最近になって周囲にいるいろいろな人にぶつけている。流石に偉い人に聞けたことはないけれど、尋ねた何人かのバイト仲間たちは誰一人その明確な理由を知らなかった。曰く、イタリアっぽいから。曰く、高級感を醸し出すため。なるほどどれも有り得そうやなと思いながら、けれど「親に連れてこられる年齢の頃から芸術に触れるため」と言った先輩には「でもこの間ちっちゃい男の子のお母さんがその子の口塞いでましたよ、そんなことお外で大声で言うもんじゃありませんって」ってやんわり教えておいた。体感、一週間にひとりはその手の子供がやってきて、親から怒られたり口ふさがれたり一緒に笑ったりしている。そやねん、子供って芸術とかどうでもいいし見えたもんを見えた通り素直に言うし、しょうもない下ネタで笑うよな、と思ったけれど、自分にはそういったことで笑っていた記憶はない。
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    たわごと

    MOURNINGモブ目線※捏造
    【狂聡】紳士服売り場の多部田くん
    【狂聡】紳士服売り場の多部田くんお客様のお出迎えために駐車場で待機して早10分。僕はソワソワと遅々として進まない腕時計を眺めていた。僕と一緒にお客様をお出迎えするのは、外商部チーフの茂田さんだ。茂田さんはここ阪京百貨店勤続20年のベテランで、物腰柔らかなな50間際の男性だ。すらっとした痩せ型の体でスーツをビシッと着こなし、営業トークもとても上手い。外商部で1番の売り上げを誇っている稼ぎ頭だ。
    不景気ということもあり、全国の百貨店に共通していえることだが、外商部はどちらかといえば縮小傾向にある。一昔前はお客様のご自宅にカタログや商品をお持ちした時代もあったときいているが、それは僕が生まれるよりも昔の話だ。もちろん、長年のお客様の中にはご自宅にお伺いし、商談を進めることもあるらしいが、そのようなお客様もほんの一握りだ。近年は、カタログをお送りしてからご自宅にお電話をし、こちらにお越しいただくことが多い。僕が働くスーツ売り場でも、茂田さんや外商部の方たちがお連れしたお客様を対応することがある。そのほとんどが僕のような新卒2年目のペーペーではなく、ベテランの先輩たちが対応していた。
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    たわごと

    PAST本アカからの再掲
    【狂聡】44と19の小話
    【狂聡】44と19の小話待ち合わせの場所にいくと、ガードレールにもたれかかり、狂児は煙草をふかしていた。街灯がスポットライトのごとく、その佇まいを照らす。黒のコート、黒のスーツ、そして、黒のセンチュリー。聡実には一枚の絵画のように見えているが、きっと、行きかう人々には異様な光景に見えているのだろう。
    明日の朝の天気予報は雪マークだった。積もらないようだが、交通機関の乱れが予想されるという。本当は今夜の最終の新幹線で東京に帰る予定だったが、仕事の都合をつけた狂児が、成人のお祝いさせてというので、こうしてノコノコとその誘いにのってしまい、五分程その姿を眺めていた。
    狂児と付き合い始めてからおよそ一年経とうとしているが、一緒にいる時間よりも、離れている時間の方が長い。狂児は東京で任された店の視察や、祭林組と懇意にしている組との会合で月に二、三回程東京を訪れているが、毎回会えるわけではない。最後に会ったのは11月も終わりに近づいた頃だ。12月は忘年会や組の行事が多く、シノギの稼ぎ時でもある。元々、12月は連絡できんかもしれんけど、なんかあったら遠慮なく連絡してなと言われていたが、本当に音沙汰がなかった。普段なら、光る犬がおったと電飾のように光っている首輪をつけた犬の写真を送ってきたり、虹が出てたといって虹の写真を送ってきたり、ちゃんと飯食っとる? などとりとめもないメッセージを送ってきたりしたくせに、何の音沙汰もなく、いよいよ死んだのかと思った。仕方がないとはわかっていても、一瞬でもクリスマスを一緒に過ごせないかと考えてしまったことは汚点でしかない。
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    たわごと

    PAST本アカからの再掲。女体化
    【狂聡】43と18の小話※聡ミくん女体化
    【狂聡】43と18の小話※聡ミくん女体化「ほら、焼けたよ。冷めないうちにお食べ」
    狂児は見かけによらずとても丁寧に肉を焼く。アミの上に並べるのは2枚まで。1枚1枚焼き加減を見ながら丁寧に焼き、聡実の皿に乗せてくれる。サークルや部活にはいるつもりはなかったのに、新刊コンパ期間中に、新入生はタダでいいからと、断る間もなく連れていかれた焼き肉やしゃぶしゃぶの食べ放題では、アミや鍋いっぱいに肉がつっこまれ、焼きすぎて焦げたり、鍋底に沈んで固くなったりして美味しくなくなっていた。
    狂添えられた生レモンを甲斐甲斐しく取り皿にしぼる。なんとなく居心地の悪さを感じながら聡実は絶妙な焼き加減の厚切り塩タンを頬張った。厚みと歯ごたえがあるのに柔らかく、噛めば噛むほど味が出てきて、思わずうまっと感嘆の声をあげていた。飲み込んでしまうのがもったいない。ずっと口の中で噛んでいたい。聡実が渡されたメニューには値段が書いていなかったので、この1枚で一体いくらするのかはわからない。きっと、狂児が連れてきてくれる店なのだからそれなりに値がはる店なのだろうが、狂児は食事に行く度に聡実が食べたいだけ食べさせてくれた。むしろ、率先して高いものを食べさせてくれているような気がする。
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