蛍
天生麻菜
PROGRESS8月インテのティナ蛍新刊のお話です。付き合うまでのお話2つとその2つのその後の計4つ収録予定です。
このお話以外は全てR18となります。
エンドロール 1冷たい熱を奪う
「僕は蛍が好きだよ」
昼下がりに落とされた言葉に蛍はぴたりと動きを止めた。彼の部屋で食事をしようと招かれて、テーブルの向かいに座り合いゆっくりお昼ご飯を食べて少し休憩していた矢先、彼はふと思い出したように口にした。
人とは違う黒く大きな耳。ワルカシュナという元は砂漠の民であった一族は森林に住むようになってから黒から緑の毛色に変わったとされている。彼の大きな耳と尻尾は黒を基調としているが時折緑色が混ざっていることから先祖の血が濃いのかもしれない。その大きな耳が時折ぴくぴくと動いている。頬杖をつきながら彼は何てことないというように穏やかな表情で蛍を見ている。
「……え」
彼の様子から、先ほどの言葉が間違いでも冗談でも何でもなく本気で告げられていることがわかって蛍は息を呑む。
5272「僕は蛍が好きだよ」
昼下がりに落とされた言葉に蛍はぴたりと動きを止めた。彼の部屋で食事をしようと招かれて、テーブルの向かいに座り合いゆっくりお昼ご飯を食べて少し休憩していた矢先、彼はふと思い出したように口にした。
人とは違う黒く大きな耳。ワルカシュナという元は砂漠の民であった一族は森林に住むようになってから黒から緑の毛色に変わったとされている。彼の大きな耳と尻尾は黒を基調としているが時折緑色が混ざっていることから先祖の血が濃いのかもしれない。その大きな耳が時折ぴくぴくと動いている。頬杖をつきながら彼は何てことないというように穏やかな表情で蛍を見ている。
「……え」
彼の様子から、先ほどの言葉が間違いでも冗談でも何でもなく本気で告げられていることがわかって蛍は息を呑む。
ことざき
DONE7月の#毎月25日はK暁デー、参加作品です。お題は『熱帯夜』『蛍』『宿題』です。
支部にも同じものをあげています。
蛍火を追って 暁人がふと目を覚ますと、隣にあるはずの人影が見えなかった。
トイレだろうかと寝ぼけ眼で寝返りをうちながら、何気なく伸ばした指先に、しわくちゃになったシーツが触れる。柔らかな布地がすっかり冷房に冷やされてしまっていることに気付いて、暁人は今度こそはっきりと目を見開いた。
常夜灯の明かりを頼りに枕元を探って、己のスマートフォンを引き寄せる。
時刻は午前零時二十分。
目に痛いほどのディスプレイの光に眉をひそめながら、暁人はのそりと起き上がった。
照明の点いていない廊下は、ひどく蒸し暑かった。暁人の額に汗が噴きだす。
あのまま涼しい寝室でまどろんでいれば、遠からずKKは戻って来ただろう。分かっていても、暁人は待てなかった。
5935トイレだろうかと寝ぼけ眼で寝返りをうちながら、何気なく伸ばした指先に、しわくちゃになったシーツが触れる。柔らかな布地がすっかり冷房に冷やされてしまっていることに気付いて、暁人は今度こそはっきりと目を見開いた。
常夜灯の明かりを頼りに枕元を探って、己のスマートフォンを引き寄せる。
時刻は午前零時二十分。
目に痛いほどのディスプレイの光に眉をひそめながら、暁人はのそりと起き上がった。
照明の点いていない廊下は、ひどく蒸し暑かった。暁人の額に汗が噴きだす。
あのまま涼しい寝室でまどろんでいれば、遠からずKKは戻って来ただろう。分かっていても、暁人は待てなかった。
かみすき
DONE綾人蛍人前でいちゃいちゃが似合うカプNo.1(調査数n=1)
《綾人蛍》見られて困ることでも? 「ここ、どこだと思ってるの」
「八重堂の前、ですが」
それが何かと盛大にとぼけた綾人さんは、逃げ回る蛍を捕まえて指を絡めようとする。もうほら、みんな見てるから。なんとか振り切って階段を駆け上がると、追いかけっこも楽しいと言わんばかりにからりと笑って着いてくる。
人前であんまりいちゃいちゃするのはやめようねって約束したじゃない。綾人さんだってわかりましたって頷いてくれたでしょう。
ため息と共に振り返れば、綾人さんは目が合っただけで嬉しいとばかりに破顔する。その瞳にこれでもかと滲む愛に気づかないわけじゃなくて、つい絆されそうになりながらも歩みを進めた。
そんな蛍の機嫌を取ろうと思案していたはずの綾人さんは、近くの屋台からの新商品だいなんて掛け声を聞いて磁石に吸い寄せられたようにそこに近づいていく。本当に仕方のない人ね。呆れながらその後を追いかけると、当たり前のように腰に手が回された。隙あらばすぐ触るんだから。おいたをする手を軽く叩いたところで綾人さんにはちっとも響かないらしく、むしろ体を撫でさすってはぴくりと震える蛍の反応を楽しんでいるようだった。
2160「八重堂の前、ですが」
それが何かと盛大にとぼけた綾人さんは、逃げ回る蛍を捕まえて指を絡めようとする。もうほら、みんな見てるから。なんとか振り切って階段を駆け上がると、追いかけっこも楽しいと言わんばかりにからりと笑って着いてくる。
人前であんまりいちゃいちゃするのはやめようねって約束したじゃない。綾人さんだってわかりましたって頷いてくれたでしょう。
ため息と共に振り返れば、綾人さんは目が合っただけで嬉しいとばかりに破顔する。その瞳にこれでもかと滲む愛に気づかないわけじゃなくて、つい絆されそうになりながらも歩みを進めた。
そんな蛍の機嫌を取ろうと思案していたはずの綾人さんは、近くの屋台からの新商品だいなんて掛け声を聞いて磁石に吸い寄せられたようにそこに近づいていく。本当に仕方のない人ね。呆れながらその後を追いかけると、当たり前のように腰に手が回された。隙あらばすぐ触るんだから。おいたをする手を軽く叩いたところで綾人さんにはちっとも響かないらしく、むしろ体を撫でさすってはぴくりと震える蛍の反応を楽しんでいるようだった。
Junk_m0n
SPOILER【ネタバレ注意】日常的なことをしながら会話が全然穏やかじゃなくてチグハグになってるヨミジルが見たいと思って書いた。
具体的には蛍光灯変えてる彼が見たいな、から始まってる。
ヨミジルって言ってるけど、正確にはヨミ+ジルって感じでCPな雰囲気はないです。
日常会話してるだけで内容はない小話。 2697
ナナシ/ムメイ
DOODLEG15話。胡蝶に蛍狩りすっぽかされてどうしたんだろうなと思い。いつものようにいつものリョハヤ。あの話は放映日八月終盤で確かにギリギリ蛍狩りの時期みたいです。
■ 蛍の夜早乙女研究所からも街からも幾分離れた山近く。街灯もろくに無い砂利道の先、深い森を照らす三台の単車のライトばかりが眩しい。
昼間、胡蝶から三人一緒に蛍狩りにと誘われたものの、彼女が言った約束の時間からは優に三十分は過ぎていた。周囲を見渡しても車やバイクの近寄る気配も無い。
「なんだよぉ、ちっとも来ないじゃねえか」
張り切って早い時間に他の二人を引き連れて着いたものの、気が長くは無い弁慶が座り込んだままそう不満そうな声を漏らし、バイクに軽く寄りかかっていた隼人は苦笑した。
「さて、なんかあったか……それともすっぽかされたか」
「ここじゃ通信機もあまり通じないから、もしあっちに連絡が入っててもわからんかもしれんなぁ」
3850昼間、胡蝶から三人一緒に蛍狩りにと誘われたものの、彼女が言った約束の時間からは優に三十分は過ぎていた。周囲を見渡しても車やバイクの近寄る気配も無い。
「なんだよぉ、ちっとも来ないじゃねえか」
張り切って早い時間に他の二人を引き連れて着いたものの、気が長くは無い弁慶が座り込んだままそう不満そうな声を漏らし、バイクに軽く寄りかかっていた隼人は苦笑した。
「さて、なんかあったか……それともすっぽかされたか」
「ここじゃ通信機もあまり通じないから、もしあっちに連絡が入っててもわからんかもしれんなぁ」
hhaannoo0011
PROGRESSワードパレットで募集したやつ#鍾蛍
書きかけでここから🔞になるよてい
絡み合う指 背伸び 彼好み「ああ、ちょっと。君はまだ飲めない年齢だろう。これはお酒だよ」
「あ、そうだね......はは、危ない危ない」
璃月のとある飲食店で飲み物を頼もうとしたらお酒だったらしく、問答無用で頼めなかった。もう覚えてないし、世界を渡るごとに世界の時間の流れもまた違うから、正確な時間も分からないので定かでは無いが蛍はテイワットに来てから五百年程経過している。見た目はうら若き少女だが、テイワットで過ごした(封印されて眠っていた時間有り)時間分蛍の年齢が加算されているとすれば、蛍は最低でも五百歳である。ただ、蛍の身体の成長は普通の人間よりも格段に遅いのかもしれないし、五百歳などという通常の幅を超えた訳の分からない年齢を盾にしてお酒を飲ませろと主張するのも何か違うような気がする。ある程度の年齢を超えたら実年齢よりも若く見てもらいたいと思うが、蛍の見た目年齢はそこまで行っていないし、蛍の見た目年齢くらいの年の子なら、少し大人っぽく見てもらいたいと思う子の方が多い。蛍も例に漏れない。大人っぽく見て貰えた方がどちらかと言うと嬉しい。事実、宝盗団やエルマイト旅団の奴らは蛍を見ると「なんだこのガキ」と言うことが度々ある。その度に蛍は実力で「分からせて」きた。
2197「あ、そうだね......はは、危ない危ない」
璃月のとある飲食店で飲み物を頼もうとしたらお酒だったらしく、問答無用で頼めなかった。もう覚えてないし、世界を渡るごとに世界の時間の流れもまた違うから、正確な時間も分からないので定かでは無いが蛍はテイワットに来てから五百年程経過している。見た目はうら若き少女だが、テイワットで過ごした(封印されて眠っていた時間有り)時間分蛍の年齢が加算されているとすれば、蛍は最低でも五百歳である。ただ、蛍の身体の成長は普通の人間よりも格段に遅いのかもしれないし、五百歳などという通常の幅を超えた訳の分からない年齢を盾にしてお酒を飲ませろと主張するのも何か違うような気がする。ある程度の年齢を超えたら実年齢よりも若く見てもらいたいと思うが、蛍の見た目年齢はそこまで行っていないし、蛍の見た目年齢くらいの年の子なら、少し大人っぽく見てもらいたいと思う子の方が多い。蛍も例に漏れない。大人っぽく見て貰えた方がどちらかと言うと嬉しい。事実、宝盗団やエルマイト旅団の奴らは蛍を見ると「なんだこのガキ」と言うことが度々ある。その度に蛍は実力で「分からせて」きた。
かみすき
DONEトマ蛍いっぱい甘えてほしいし、いっぱい甘やかしてほしい
《トマ蛍》熱い暑いけど抱きしめて 珍しくトーマより早く起きていた蛍は、じっとりと汗を滲ませた熱い額を押し付けてきた。
食べたくないとごねるその口に白粥を突っ込み、咳き込む蛍の背中を擦って蜂蜜を湯に溶かす。顎まで布団をかけてしっかり寝るように言い聞かせ、こうして屋敷に出てきたわけだが。
ひとつ何かをする度に、いらぬ心配がトーマの頭を過った。彼女が子どもではないことも、いざとなれば助けを呼べる小さな仲間が見てくれていることもわかっている。ただどうしても、滅多に弱音を吐かない蛍がトーマの手を握って「行かないで」と呟いた光景が離れなくて。やがて眠った蛍の酷く熱いその手をベッドの上に置いてきたことを、激しく後悔していた。体調が悪い時には人肌が恋しくなるものだ。隣にいるだけでいい、そんな人として選んでもらったというのに、寄り添ってやることもできずに自分は一体何を。
1921食べたくないとごねるその口に白粥を突っ込み、咳き込む蛍の背中を擦って蜂蜜を湯に溶かす。顎まで布団をかけてしっかり寝るように言い聞かせ、こうして屋敷に出てきたわけだが。
ひとつ何かをする度に、いらぬ心配がトーマの頭を過った。彼女が子どもではないことも、いざとなれば助けを呼べる小さな仲間が見てくれていることもわかっている。ただどうしても、滅多に弱音を吐かない蛍がトーマの手を握って「行かないで」と呟いた光景が離れなくて。やがて眠った蛍の酷く熱いその手をベッドの上に置いてきたことを、激しく後悔していた。体調が悪い時には人肌が恋しくなるものだ。隣にいるだけでいい、そんな人として選んでもらったというのに、寄り添ってやることもできずに自分は一体何を。
染井悉
MEMO❏┈┈┈┈┈┈┈┈┈❏𝘾𝙖𝙡𝙡 𝙤𝙛 𝘾𝙩𝙝𝙪𝙡𝙝𝙪
❚ 口渇ルルパ
作:猫又廻廊様
𝙆𝙋:染井悉
❚ 𝙃𝙊 / 𝙋𝙇
◆𝙃𝙊フォーク
蛍翔 / ののぴ
◆𝙃𝙊ナイフ
猩 / ぺあ
片生還片ロスト
❏┈┈┈┈┈┈┈┈┈❏
sk5642194
DONE小説/アル蛍/好奇心はまた明日(全5P)0721の日に書きました。
ベドくんへ、そういうことするの?とふとした好奇心を口にした蛍ちゃんが、その好奇心に丸呑みされる話。※テーマなだけで自慰表現はありません。
ベドくんてそういうことしなさそうだし、今まで必要もなくしたことなかったけど蛍ちゃんとお付き合いし始めて「する」ようになったらいいよね……と思って書いたけどそこまで書けなかったわね…… 6
amelu
DONEタル蛍。両片想いから一歩先に進もうとするおはなし。*扱いが明確でない小物を使用しているので、捏造部分あり
*推しかぷがいちゃいちゃしていればそれでいい精神でどうぞ
ヒアソビとコイ 氷に閉ざされたスネージナヤからやってくると、風光明媚で自然豊かな景色が広がる璃月ですら暑く感じてしまう。もう七月も半ば過ぎだ。気温もそれなりに高く、夕立が降ることもある。
北国銀行は、氷の女皇が統べる国スネージナヤの組織ファデュイの監督下にある拠点のひとつだ。ファデュイの執行官であるタルタリヤは、その璃月支店に度々顔を出す。今朝、北国銀行の総取締役である『富者』が視察のため本国スネージナヤからやって来たと知らされ、急いで居室を出て北国銀行に向かっているところだ。
しばらく前に、遠く稲妻の地で果てた執行官『淑女』の追悼のためにタルタリヤもスネージナヤに戻っていたが、それ以後も璃月と本国を行ったり来たりの日々を過ごしていた。スネージナヤパレスは息が詰まる。璃月ではタルタリヤも比較的自由に行動ができるのだが、『富者』が視察に来たとなれば話は別だ。
9175北国銀行は、氷の女皇が統べる国スネージナヤの組織ファデュイの監督下にある拠点のひとつだ。ファデュイの執行官であるタルタリヤは、その璃月支店に度々顔を出す。今朝、北国銀行の総取締役である『富者』が視察のため本国スネージナヤからやって来たと知らされ、急いで居室を出て北国銀行に向かっているところだ。
しばらく前に、遠く稲妻の地で果てた執行官『淑女』の追悼のためにタルタリヤもスネージナヤに戻っていたが、それ以後も璃月と本国を行ったり来たりの日々を過ごしていた。スネージナヤパレスは息が詰まる。璃月ではタルタリヤも比較的自由に行動ができるのだが、『富者』が視察に来たとなれば話は別だ。
saisenntan
SPOILER塔葬の国未通過❌一応ね!判定ミスの積み重ね+ファンブルで
体調崩して萎え萎えのレナちゃんにスズくん
頭ポンポンしてた🤔
多分昨日のハイライト
蛍さんは見ながらお茶🍵飲んでた(きっと)
かみすき
DONEトマ蛍推しカプ、毎日夏祭りに行ってほしい
《トマ蛍》店員さん、オレとデートしてください 屋敷に帰るや否や、一息つく間もなく浴衣を着せられる。誰に何を聞いてもそのうちわかりますから、の一点張り。理由もわからぬまま下駄を履き、今さっきくぐったばかりの門を追い出された。
皆は手を振って送り出すばかり。何事かと疑問符を浮かべるトーマの背を、誰かが軽く叩いた。
「トーマっ」
同時に脇からひょこんと顔を出したのは、薄らと化粧を施した蛍だった。上向きのまつ毛は瞬きに合わせて震え、色をのせた頬が愛くるしさを引き立てる。弧を描く唇は紅でくっきりと縁取られて満足げな表情を彩っていた。
ずいぶんなおめかしだと彼女に向き合えばこれまた上等な浴衣が相見える。眩しい白地に、ぱっと咲く真紅の花たち。蛍が腕を広げると炎のように揺らめいて見えた。
3329皆は手を振って送り出すばかり。何事かと疑問符を浮かべるトーマの背を、誰かが軽く叩いた。
「トーマっ」
同時に脇からひょこんと顔を出したのは、薄らと化粧を施した蛍だった。上向きのまつ毛は瞬きに合わせて震え、色をのせた頬が愛くるしさを引き立てる。弧を描く唇は紅でくっきりと縁取られて満足げな表情を彩っていた。
ずいぶんなおめかしだと彼女に向き合えばこれまた上等な浴衣が相見える。眩しい白地に、ぱっと咲く真紅の花たち。蛍が腕を広げると炎のように揺らめいて見えた。
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DONEセノ蛍お題のやつ
さみしがりの夜更け.
草神救出作戦を終えて、スメールの観光や依頼で生活を繋げていたおちついた頃。そろそろ次の国の情報を集め出そうか、と動き始めた時部のことだった。砂漠の方で、なにやらアビス教団が悪さをしているという噂を耳にしたのは。
砂漠の奥の奥。ヒルチャールたちがとても凶暴になっているという噂だ。砂漠にも手を差し伸べる計画を進めていくために駆り出された教令院の学者、冒険者、そして護衛のエルマイト旅団の三者が酒場で語ってみせたのだ。凶暴なヒルチャールたちの恐ろしさを三者三様に。新鮮な噂は酒場にとっていいツマミになったのだろう。色とりどりの羽をつけて、噂はスメール中を飛び交った。
とはいえ、それだけのことなら蛍にとってはなんでもないただの風の噂で、よくある任務の始まりに過ぎない。雨林で降る雨のようにそういった噂や依頼は絶えず生まれ、雨足を強め、そして何事もなかったかのように去っていく。だが、例の噂は蛍の足取りを無理やり止めた。
2454草神救出作戦を終えて、スメールの観光や依頼で生活を繋げていたおちついた頃。そろそろ次の国の情報を集め出そうか、と動き始めた時部のことだった。砂漠の方で、なにやらアビス教団が悪さをしているという噂を耳にしたのは。
砂漠の奥の奥。ヒルチャールたちがとても凶暴になっているという噂だ。砂漠にも手を差し伸べる計画を進めていくために駆り出された教令院の学者、冒険者、そして護衛のエルマイト旅団の三者が酒場で語ってみせたのだ。凶暴なヒルチャールたちの恐ろしさを三者三様に。新鮮な噂は酒場にとっていいツマミになったのだろう。色とりどりの羽をつけて、噂はスメール中を飛び交った。
とはいえ、それだけのことなら蛍にとってはなんでもないただの風の噂で、よくある任務の始まりに過ぎない。雨林で降る雨のようにそういった噂や依頼は絶えず生まれ、雨足を強め、そして何事もなかったかのように去っていく。だが、例の噂は蛍の足取りを無理やり止めた。
rinkokonoe
DOODLE笹紅をつけた志津摩君と八木さんのお話。短いです。
笹紅塗ったら似合うだろうなぁと思いながら書きました
蛍火艶夜
玉虫色紅を貰った、似合うからと
使いかけで申し訳ありませんといって手渡されたそれは、湯呑み茶碗の中に入っていて、玉虫色に光り輝いていた
部屋に戻って小さく包まれた風呂敷を広げると、中には小さな湯呑み茶碗に玉虫色の何かが入っているものだった
丁寧に筆と手鏡も添えられている
ああ、これは紅なのだと気がついた
「俺がこんなのつけても、似合わないよなぁ」
それでもなんだか気になって、筆を水で濡らしてくる
そういえば昔母が使っていたことを思い出して
その姿を真似する
水を含ませた筆で玉虫色の端っこをつい、と撫でる
すると中から紅色が急に現れる
「すごい」
何度か筆でなぞってから、手鏡を持って唇に薄くつい、と塗ってゆく
薄紅く色付いた唇は、不思議な色をしていた
822使いかけで申し訳ありませんといって手渡されたそれは、湯呑み茶碗の中に入っていて、玉虫色に光り輝いていた
部屋に戻って小さく包まれた風呂敷を広げると、中には小さな湯呑み茶碗に玉虫色の何かが入っているものだった
丁寧に筆と手鏡も添えられている
ああ、これは紅なのだと気がついた
「俺がこんなのつけても、似合わないよなぁ」
それでもなんだか気になって、筆を水で濡らしてくる
そういえば昔母が使っていたことを思い出して
その姿を真似する
水を含ませた筆で玉虫色の端っこをつい、と撫でる
すると中から紅色が急に現れる
「すごい」
何度か筆でなぞってから、手鏡を持って唇に薄くつい、と塗ってゆく
薄紅く色付いた唇は、不思議な色をしていた
天生麻菜
PROGRESS7月叡智で発行予定のセノ蛍新刊、「ゆびさき」の2話目です。本文はこれで終了です。
書き下ろしは年齢指定入る予定です。
ゆびさき22.ゆびさき
「ナラ蛍!ナラセノ!待ってた!」
ヴァナラーナに着き夢の中へ入るなり多くのアランナラたちに迎え入れられて蛍だけでなくセノも驚いた。彼らは閉鎖的な空間、夢の世界で過ごしている。普通にこの場所に辿り着いただけではただヒルチャール達がいて、不思議な球体の家々があるだけの場所だ。蛍には慣れた場所で迷いなく進んでいき、ある岩の前へ辿り着く。岩には符文が書かれており僅かに緑色の光を放っている。岩の上には小柄な樹が根を張っている。
アランナラ達にシュリパナと呼ばれているものの前に蛍は立つとどこからともなく古びたライアーと取り出す。思い描くのはアランラナに教えてもらった大夢のメロディーを奏でる。蛍が奏でるメロディーに呼応されたようにシュリパナは光り輝き、セノは思わず蛍の手を掴んで引き寄せる。光から庇うように彼女を自分の身体で守るが、光が消えた後の光景は予想もしないものであった。
6339「ナラ蛍!ナラセノ!待ってた!」
ヴァナラーナに着き夢の中へ入るなり多くのアランナラたちに迎え入れられて蛍だけでなくセノも驚いた。彼らは閉鎖的な空間、夢の世界で過ごしている。普通にこの場所に辿り着いただけではただヒルチャール達がいて、不思議な球体の家々があるだけの場所だ。蛍には慣れた場所で迷いなく進んでいき、ある岩の前へ辿り着く。岩には符文が書かれており僅かに緑色の光を放っている。岩の上には小柄な樹が根を張っている。
アランナラ達にシュリパナと呼ばれているものの前に蛍は立つとどこからともなく古びたライアーと取り出す。思い描くのはアランラナに教えてもらった大夢のメロディーを奏でる。蛍が奏でるメロディーに呼応されたようにシュリパナは光り輝き、セノは思わず蛍の手を掴んで引き寄せる。光から庇うように彼女を自分の身体で守るが、光が消えた後の光景は予想もしないものであった。
天生麻菜
PROGRESS7月叡智で発行予定のセノ蛍新刊、「ゆびさき」の1話目です。全2話+書き下ろし予定です。
書き下ろしは年齢指定入る予定です。
ゆびさき 1・魔神任務三章五幕
・森林書
・セノ伝説任務
・イノセンスの彫刻
以上のシナリオの内容を含みます。
1.永遠に来ない朝を
微かな足音を捉える。たまたまスメールシティに戻っていた彼がその場に居合わせたのは本当に偶然だった。夜明け前、まだ日も登らない中その人物は迷う事なくスメールシティを歩いていた。
少し淡い金髪はスメールという国ではよく目立つ。スメールを救った英雄なら尚更。
普段より覚束ない足取りでついにはスラサタンナ聖処の前まで歩いてきていた。そして、聖処前に広場で夜明けを待つかのように空へ視線を向けている。その視線はどこかを見ているようで、呆然と見ていないようにも見えた。
淡い金色の髪が少し冷たい夜風にさらされて、揺れる。彼女旅装束は耐久性もない薄着に見えるが宿で休んでいる間に抜け出してきているのだろう、今の姿は普段よりも更にインナーに短パンという薄着であった。
9267・森林書
・セノ伝説任務
・イノセンスの彫刻
以上のシナリオの内容を含みます。
1.永遠に来ない朝を
微かな足音を捉える。たまたまスメールシティに戻っていた彼がその場に居合わせたのは本当に偶然だった。夜明け前、まだ日も登らない中その人物は迷う事なくスメールシティを歩いていた。
少し淡い金髪はスメールという国ではよく目立つ。スメールを救った英雄なら尚更。
普段より覚束ない足取りでついにはスラサタンナ聖処の前まで歩いてきていた。そして、聖処前に広場で夜明けを待つかのように空へ視線を向けている。その視線はどこかを見ているようで、呆然と見ていないようにも見えた。
淡い金色の髪が少し冷たい夜風にさらされて、揺れる。彼女旅装束は耐久性もない薄着に見えるが宿で休んでいる間に抜け出してきているのだろう、今の姿は普段よりも更にインナーに短パンという薄着であった。
ふじ尾
DOODLEスールパロにょたゆり🎧🪶/あまのこどもたち01※他キャラも出てきます。
※そのうち負け確モブも出てきます。
※男性キャラは全員等しく女体化です。慈悲はない。
※旅人は蛍と空(女体化)です。 5169
ゆきは
DONE誕生日おめでとうのカヴェ蛍※公式のカーヴェ誕生日メールやイラスト等のネタバレ、期間限定イベント世界任務取得アイテムのネタバレを含みます
面倒な二人「旅人、これは一体……?」
拙い筆跡で書かれた日記を手にしたカーヴェが怪訝な顔をする。
それもそのはず。蛍はアルハイゼンの家を訪ねてカーヴェの写真を撮り終えパイモンに外での用事を頼むと、何も言わずに日記を差し出したのだ。
彼女は平坦な声で日記を読むよう促した。疑問を拭いきれないながらもカーヴェは言われた通りにページをめくる。読みやすいとは言えない字を丁寧に追って祈りの言葉を読み終えた彼は、まだページが続いていることに気がついた。
ぱら、と何の気なしに続きを開き、次の瞬間目の色を変える。そのページに描かれた厳密な設計図をそれまで以上に熱心に読み解いたカーヴェは、ぱっと顔を上げた。
「君の要望は、これを作ってほしいということかい?」
1383拙い筆跡で書かれた日記を手にしたカーヴェが怪訝な顔をする。
それもそのはず。蛍はアルハイゼンの家を訪ねてカーヴェの写真を撮り終えパイモンに外での用事を頼むと、何も言わずに日記を差し出したのだ。
彼女は平坦な声で日記を読むよう促した。疑問を拭いきれないながらもカーヴェは言われた通りにページをめくる。読みやすいとは言えない字を丁寧に追って祈りの言葉を読み終えた彼は、まだページが続いていることに気がついた。
ぱら、と何の気なしに続きを開き、次の瞬間目の色を変える。そのページに描かれた厳密な設計図をそれまで以上に熱心に読み解いたカーヴェは、ぱっと顔を上げた。
「君の要望は、これを作ってほしいということかい?」
かみすき
DONEトマ蛍定番の願い事だけど、まあ何回煎じてもおいしいからオッケー
《トマ蛍》空からみてる 「トーマは、もし蛍さんと年に一度しか会えないとしたら何をするんだい」
太陽に照らされて揺れる笹の葉の下、唐突に尋ねた綾人に深い意味はないのだろう。しかし心の中を読まれたようでどきりと心臓が跳ねる。早く会いたい、なんて思い浮かべていた愛しい人の顔。
「そう、ですね」
どれだけ忙しくとも必ず時間を作ってくれる彼女のおかげで、週に一度は顔を合わせているけれど。この先、ずっと会えなくなることだってあり得るかもしれない。彼女は旅人だから。休むことなく進み続ける。いずれ旅の終点にたどり着いて、それからまた、新たな旅を始めるかもしれない。
もし、年に一度だったら。きっと、話したいこともやりたいこともたくさんあるだろう。なんせ一年分だ。今だってまだまだ満たされない程だというのに、たった一日に何を詰め込めるだろうか。
2187太陽に照らされて揺れる笹の葉の下、唐突に尋ねた綾人に深い意味はないのだろう。しかし心の中を読まれたようでどきりと心臓が跳ねる。早く会いたい、なんて思い浮かべていた愛しい人の顔。
「そう、ですね」
どれだけ忙しくとも必ず時間を作ってくれる彼女のおかげで、週に一度は顔を合わせているけれど。この先、ずっと会えなくなることだってあり得るかもしれない。彼女は旅人だから。休むことなく進み続ける。いずれ旅の終点にたどり着いて、それからまた、新たな旅を始めるかもしれない。
もし、年に一度だったら。きっと、話したいこともやりたいこともたくさんあるだろう。なんせ一年分だ。今だってまだまだ満たされない程だというのに、たった一日に何を詰め込めるだろうか。
rinkokonoe
DOODLE塚橋現世パロ二人がご飯食べて同じお布団で寝ているだけの短いお話です。
なんでも許してくれる方向け
今日の整備は大変だった、細かいところまできちんと点検を終えて俺は帰路につく
今日は和さんが家に来てくれる日だから、残業だけはしたくなかった
それでも2時間残業になってしまってため息を吐きながら和さんに連絡をする
合鍵を持っている和さんはもう家にいるようで、気をつけて帰ってくるように、と返事が返ってくる
俺は少し嬉しくなってすぐに帰りますと連絡した
それから1時間、電車を乗り継いで家に着いた
鍵を開けようとすると中から鍵が開く音と共に和さんがおかえり、と出迎えてくれた
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい、疲れている顔をしているな」
そう言って頬をすり、と撫でる和さんの手のひらの温かさに俺は目を閉じてしまう
ふ、と和さんが笑ったような気がする
1727今日は和さんが家に来てくれる日だから、残業だけはしたくなかった
それでも2時間残業になってしまってため息を吐きながら和さんに連絡をする
合鍵を持っている和さんはもう家にいるようで、気をつけて帰ってくるように、と返事が返ってくる
俺は少し嬉しくなってすぐに帰りますと連絡した
それから1時間、電車を乗り継いで家に着いた
鍵を開けようとすると中から鍵が開く音と共に和さんがおかえり、と出迎えてくれた
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい、疲れている顔をしているな」
そう言って頬をすり、と撫でる和さんの手のひらの温かさに俺は目を閉じてしまう
ふ、と和さんが笑ったような気がする