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    レノ

    まりも

    DOODLE季節外れの海にいる恭ピエ
    「恭二!海だよ!」
    そう言って楽しそうに俺の手を引く恋人に、誘ってよかった、と思う。
     俺たちは今、撮影のため、この近くのホテルに泊まっている。数ヶ月後に流れるCMだから、季節外れの海で撮影をするのだ。人のいない海辺は寒いし、少し寂しくもある。おまけに日も暮れ始めている。それでもなんとなく、撮影の終わった後、ピエールを誘ってしまった。みのりさんも誘ったけれど、「デートの邪魔するほど野暮じゃないよ」とからかうように断られてしまった。デートのつもりはなかったけれど、ピエールはそのみのりさんの言葉に嬉しそうにしていたから、訂正もしなかった。
     そんなことを考えていたから、ピエールが海の向こうを見つめ、黙っているのに気がつくのが遅れた。その顔を見ただけで、何を考えているのかわかってしまった。きっと、ピエールは国を離れたくて離れたわけじゃないと、止むに止まれぬ事情があったのだと、直接聞いたことはないけど、思っていた。それは、ピエールの言葉の端々から、母国を恋しく思う気持ちが伝わってきたからだ。きっと、Beitとして活動していて、315プロのにぎやかな仲間に囲まれていて、寂しいわけではないのだろう。でも、それとは別の感情であることは、俺にはわからなくても、察することはできた。
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