オサハタ
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おまけ絵は
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Knights of Night⑥「──じゃがそれは、やろうと思えば可能、というだけの話じゃ、朕にその気は微塵もないからそう構えんで良い」
「その言葉を『そうなんだ〜』なんてすんなり信じられると思うか?」
先輩はますます眉間の皺を深くしてる、なのに吸血鬼は相変わらずの上から目線だ。ほんと気に入らないな、さっきの声色は聞き間違いか?
耐えかねて声だけで突っかかった僕にも吸血鬼は悠々としたものだ。
「信用に値する情報は語るつもりでおるよ、ただ時が迫っておるから追々と、と請うておるのじゃ」
「……俺に、どうしろと?」
吸血鬼の言葉に今度は先輩が返した。
そのとき、視界が少し、細く、狭くなった。
吸血鬼は微笑んだのだろう、僕の身体で。
「朕の願いを聞き入れてくれたこと、感謝する」
1326「その言葉を『そうなんだ〜』なんてすんなり信じられると思うか?」
先輩はますます眉間の皺を深くしてる、なのに吸血鬼は相変わらずの上から目線だ。ほんと気に入らないな、さっきの声色は聞き間違いか?
耐えかねて声だけで突っかかった僕にも吸血鬼は悠々としたものだ。
「信用に値する情報は語るつもりでおるよ、ただ時が迫っておるから追々と、と請うておるのじゃ」
「……俺に、どうしろと?」
吸血鬼の言葉に今度は先輩が返した。
そのとき、視界が少し、細く、狭くなった。
吸血鬼は微笑んだのだろう、僕の身体で。
「朕の願いを聞き入れてくれたこと、感謝する」
オサハタ
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Knights of Night⑤ 吸血鬼探し、確かに理にかなっている、終始俺に固執するその訳としては。だが、
「……貴様に俺が必要な理由は把握した、だがそれに至った過程が明かされない限り返答はしかねる」
応じるにはまだ早すぎる、何故そうなったのか、見つけて何をするつもりなのか、そして今、どうやってサギョウの中に入っているのか、それらを語らせてからでなければ否も応も──と、俺は考えていたのだが……
「何者かとかいずこかって、何ひとつ、全っ然見当もつかないのか?」
「場所に関してはの。じゃが企てた者については少々の心当たりがある、とは言うても、あまたの中の一部であろうな、くらいのものじゃが」
「へぇ、つまり、大勢から恨みを買ってるって意味だ?」
1225「……貴様に俺が必要な理由は把握した、だがそれに至った過程が明かされない限り返答はしかねる」
応じるにはまだ早すぎる、何故そうなったのか、見つけて何をするつもりなのか、そして今、どうやってサギョウの中に入っているのか、それらを語らせてからでなければ否も応も──と、俺は考えていたのだが……
「何者かとかいずこかって、何ひとつ、全っ然見当もつかないのか?」
「場所に関してはの。じゃが企てた者については少々の心当たりがある、とは言うても、あまたの中の一部であろうな、くらいのものじゃが」
「へぇ、つまり、大勢から恨みを買ってるって意味だ?」
オサハタ
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Knights of Night④ 意識ははっきりしているのに身体の感覚がないというのはものすごい違和感だ。まるで夢の中みたい、と、例えかけたけど、夢の中でも思うようには動かないだけで鈍くとも一応動くと考えればそれも違う。
動かそうという意思すらないのに勝手に移る視界、ああそうだ、これはある種ヴァーチャルリアリティのゲームに似ている。気を抜くと酔いそうなところまでそっくりだ。
こんなゲーム機があればさぞかし値が張るだろうな、とまで考えてしまったのは、少々不貞腐れているからだ。
先輩は、僕、なのか僕の中にいる吸血鬼に、なのか分からないけど鋭い目線で睨みを効かせているから油断はしていないだろうし、何かしらの考えがあってのさっきの言葉なんだろう。
911動かそうという意思すらないのに勝手に移る視界、ああそうだ、これはある種ヴァーチャルリアリティのゲームに似ている。気を抜くと酔いそうなところまでそっくりだ。
こんなゲーム機があればさぞかし値が張るだろうな、とまで考えてしまったのは、少々不貞腐れているからだ。
先輩は、僕、なのか僕の中にいる吸血鬼に、なのか分からないけど鋭い目線で睨みを効かせているから油断はしていないだろうし、何かしらの考えがあってのさっきの言葉なんだろう。
オサハタ
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キャプションとして『オリキャラ吸血鬼が滅茶苦茶出張るし滅茶苦茶喋る』というのを入れ忘れていた、そういうことです。
Knights of Night③ 早計だった、俺はてっきり、目の前にいるのはサギョウの姿をした何かだと思い込んでいた、だが──
「なんっなんだよお前! 誰だよ 突然人の身体を勝手に使いやがって!」
「何じゃ騒がしい、少々拝借しておるだけじゃろう」
「騒ぎもするわ! まずは持ち主の僕と話すのが筋だろって! あといちいちその鼻につく動作やめろ自分がしてると思ったら動かない身体中に鳥肌が立つわ!」
今、目の前で繰り広げられている会話は全て、サギョウが、ひとりでしている。口調と声量からも明白だが、交互に変わる目の色で視覚的にもはっきりと、あの身体の中にはふたりいるのだな、というのが見てとれた。
だが身体的動作はサギョウではない何かに主導権があるのだろう、声以外の表情や仕草は見慣れないものだ。片足に重心を置き、腰をくねらせ、指先までぴんとのばしてやれやれと手のひらを天に向ける姿は──サギョウ曰くの鼻につく動作なのだろう──確かに多大な違和感がある。
1281「なんっなんだよお前! 誰だよ 突然人の身体を勝手に使いやがって!」
「何じゃ騒がしい、少々拝借しておるだけじゃろう」
「騒ぎもするわ! まずは持ち主の僕と話すのが筋だろって! あといちいちその鼻につく動作やめろ自分がしてると思ったら動かない身体中に鳥肌が立つわ!」
今、目の前で繰り広げられている会話は全て、サギョウが、ひとりでしている。口調と声量からも明白だが、交互に変わる目の色で視覚的にもはっきりと、あの身体の中にはふたりいるのだな、というのが見てとれた。
だが身体的動作はサギョウではない何かに主導権があるのだろう、声以外の表情や仕草は見慣れないものだ。片足に重心を置き、腰をくねらせ、指先までぴんとのばしてやれやれと手のひらを天に向ける姿は──サギョウ曰くの鼻につく動作なのだろう──確かに多大な違和感がある。
オサハタ
DOODLEサギョウが吸血鬼に取り憑かれる話。半サギョ未満だけど半サギョテイストなのでタグ付き。キャプションとして『オリキャラ吸血鬼が滅茶苦茶出張るし滅茶苦茶喋る』というのを入れ忘れていた
Knights of Night① 普段とさして変わりのない日だった。
市中巡回の途中、その気配を捉えるまでは。
「どうかしましたか?」
「吸血鬼の気配がする」
斜め後ろから聞いてきたサギョウに答えつつ、踵を返して足を進めたのは今しがた通ってきた路地。
だがそこには誰もいない、何もいない。
数十秒前に通過したときと寸分の変わりもない。
「……います?」
「いない、ように見える」
立ち止まり、視覚ではなく嗅覚でもなく、五感とは別の感覚で追った気配は微かなもの。
辿るように振り向いた先には警戒を滲ませたサギョウの姿、その頭の上には吸血ゴボウのゴビー。
「……妙だな、確かにこの辺りから感じるのだが」
「ゴビーの気配と混ざっちゃってるんですかね? 僕ら少し離れてみますよ」
1234市中巡回の途中、その気配を捉えるまでは。
「どうかしましたか?」
「吸血鬼の気配がする」
斜め後ろから聞いてきたサギョウに答えつつ、踵を返して足を進めたのは今しがた通ってきた路地。
だがそこには誰もいない、何もいない。
数十秒前に通過したときと寸分の変わりもない。
「……います?」
「いない、ように見える」
立ち止まり、視覚ではなく嗅覚でもなく、五感とは別の感覚で追った気配は微かなもの。
辿るように振り向いた先には警戒を滲ませたサギョウの姿、その頭の上には吸血ゴボウのゴビー。
「……妙だな、確かにこの辺りから感じるのだが」
「ゴビーの気配と混ざっちゃってるんですかね? 僕ら少し離れてみますよ」
オサハタ
DOODLE続きで終わり(仮)(脳内にあるこのあとのえっち展開書けたら書くけど書かないかもしれない、分からない、書けたらいいな、と思ってはいる、そんな感じ)。Unknown⑨(終) 話を終えて、
本当に、待たせてごめんなさい。
と僕は言った。
先輩は
「変わらずにいてくれたから、何も苦ではなかった」
と言いながら、また、極上の笑顔を向けてくれた。
今は、あの路地で気持ちも並んでから時計の短針が何周かしたところ。話しているここは僕の部屋。
あの後──積もる話をしたいしそこでさようならは寂しいと思って、
うちで話しませんか?
と提案した。
「そうする」
と頷いた先輩と部屋に向かう道すがら、なんなら泊まっていけばいいと促したのも僕だ。その方がゆっくり話せるからと。
結果としてそれは正解だったと思う。
まだたくさん話したいことがある
そう言ったら、先輩は
「俺もまだ話したいし、聞きたい」
687本当に、待たせてごめんなさい。
と僕は言った。
先輩は
「変わらずにいてくれたから、何も苦ではなかった」
と言いながら、また、極上の笑顔を向けてくれた。
今は、あの路地で気持ちも並んでから時計の短針が何周かしたところ。話しているここは僕の部屋。
あの後──積もる話をしたいしそこでさようならは寂しいと思って、
うちで話しませんか?
と提案した。
「そうする」
と頷いた先輩と部屋に向かう道すがら、なんなら泊まっていけばいいと促したのも僕だ。その方がゆっくり話せるからと。
結果としてそれは正解だったと思う。
まだたくさん話したいことがある
そう言ったら、先輩は
「俺もまだ話したいし、聞きたい」
オサハタ
DOODLE互いに従順、それは矜持残したのは作戦外、わざと、彼の独断、こっそりと。
「信じて待っていてください」
という、望み。
暗号「極秘の作戦に参加します、これ以上は言えません」
ああそうか、分かった、と返事をした。
「行ってきます」
じゃあな、と見送った。
その後、俺の元に帰ってきたのは、揃いの指輪だけだった。
肉片と血の海にこれだけが残っていたと知らされた。
俺は、礼を言って受け取ったそれを、小指にはめた。
それから数ヶ月後。
鳴らないはずの番号から、電話が、きた。
『お待たせしました、あなたの出番です』
俺は、俺の向かうべき場所だけを聞いた。
そして作戦は終了した。
全て、立案者の思惑通りに。
「ごめんなさい」
と、帰宅するなり頭を下げた恋人に
俺は初めて、抱えていた怒りと、悲しみと、そして、安堵を、ぶつけた。
違う、俺が、今お前に言って欲しい言葉はそうではない、と。
504ああそうか、分かった、と返事をした。
「行ってきます」
じゃあな、と見送った。
その後、俺の元に帰ってきたのは、揃いの指輪だけだった。
肉片と血の海にこれだけが残っていたと知らされた。
俺は、礼を言って受け取ったそれを、小指にはめた。
それから数ヶ月後。
鳴らないはずの番号から、電話が、きた。
『お待たせしました、あなたの出番です』
俺は、俺の向かうべき場所だけを聞いた。
そして作戦は終了した。
全て、立案者の思惑通りに。
「ごめんなさい」
と、帰宅するなり頭を下げた恋人に
俺は初めて、抱えていた怒りと、悲しみと、そして、安堵を、ぶつけた。
違う、俺が、今お前に言って欲しい言葉はそうではない、と。
オサハタ
DOODLE続きUnknown⑧ 人通りがほとんどないとはいえこんな往来でしていい話じゃなかったな、と僕がようやく自覚したのはそのときにようやくだ。
先輩が足を止めかけてしまったから。
それが、今更何を、という迷惑から困り果ててなのか、それともまた別の理由からなのかは分からなかったけど、とにかくそのままにはしておけなくて、
すみません急に、とにかく行きましょう
と促してまた一緒に歩き始めた。
お互い帰り道とは逸れるけどとりあえず、とすぐに大通りを外れて入ったのは細い路地。ここなら、短時間であれば立ち話をしても差し支えないだろうと判断して僕は話の続きをしようとしたんだ。
まずは、急に告げてしまって申し訳なかったと、それから、もしかつて教えてくれた話の相手が僕でなかったならこっちの勘違いだから気にしないで欲しいと、そして──もし勘違いでなかったとしても、今は違うのならそれはそれで構わないと、そう順を追って話すつもりだった。
963先輩が足を止めかけてしまったから。
それが、今更何を、という迷惑から困り果ててなのか、それともまた別の理由からなのかは分からなかったけど、とにかくそのままにはしておけなくて、
すみません急に、とにかく行きましょう
と促してまた一緒に歩き始めた。
お互い帰り道とは逸れるけどとりあえず、とすぐに大通りを外れて入ったのは細い路地。ここなら、短時間であれば立ち話をしても差し支えないだろうと判断して僕は話の続きをしようとしたんだ。
まずは、急に告げてしまって申し訳なかったと、それから、もしかつて教えてくれた話の相手が僕でなかったならこっちの勘違いだから気にしないで欲しいと、そして──もし勘違いでなかったとしても、今は違うのならそれはそれで構わないと、そう順を追って話すつもりだった。
オサハタ
DOODLE続き。Unknown⑦──先輩は、まだ僕を好きですか?
聞いたのはあのときと同じ、署の目の前の交差点。
あれから何事もなかった、それまでと変わらず日々を過ごした、表向きはそうだったはずだ、少なくとも僕はそう努めていたし、先輩が滲ませていた違和感も徐々に消えていっていたからその確信は然程間違っていないと思う。
だけどそれを、僕は、一言で変えた。
先輩の目つきは、驚きの中に怯えのような何かを含んだものになった。
──その日、同じ勤務帯だった僕と先輩は、大きな事件が起こらなかったのもあって帰る時間も同じだった。だから途中まで同じ道を帰ろうと歩いていた、特に示し合わせもなく、自然に。
少し話もした、他愛のない世間話だ。
そしてそれがふっと途切れた。あの交差点を渡り始めたときに。
897聞いたのはあのときと同じ、署の目の前の交差点。
あれから何事もなかった、それまでと変わらず日々を過ごした、表向きはそうだったはずだ、少なくとも僕はそう努めていたし、先輩が滲ませていた違和感も徐々に消えていっていたからその確信は然程間違っていないと思う。
だけどそれを、僕は、一言で変えた。
先輩の目つきは、驚きの中に怯えのような何かを含んだものになった。
──その日、同じ勤務帯だった僕と先輩は、大きな事件が起こらなかったのもあって帰る時間も同じだった。だから途中まで同じ道を帰ろうと歩いていた、特に示し合わせもなく、自然に。
少し話もした、他愛のない世間話だ。
そしてそれがふっと途切れた。あの交差点を渡り始めたときに。
オサハタ
DOODLE続きUnknown⑥「……そんなことを、考えていたのか」
話の途中から、ほんの少し首を回して片目だけ覗かせていた先輩が、今は完全に身体を起こして僕を見ている。
まんまるになっている両目に向かって僕は頷きがわりに笑ったけど、申し訳なさからそれは少し歪んでいただろうな。
何も言わなくてすみません、と、今更だとは分かっていつつ謝った僕に、先輩もいびつな笑みでかぶりを振った。
「有り難かった。変わらず傍にいてくれたことが。俺は──」
言いかけながら一度唇を閉じて、また開きかけて、それから僅かに首を傾げた先輩に、僕はどうぞ、と視線で続きを促した。
「あのとき……雑踏に紛れて聞こえていなかったか、それとも意味が通じていなかったか──どちらにしろ伝わらずに済んで、それまでと同じ距離に居られるのならそれで良かったと、安堵してしまっていた」
871話の途中から、ほんの少し首を回して片目だけ覗かせていた先輩が、今は完全に身体を起こして僕を見ている。
まんまるになっている両目に向かって僕は頷きがわりに笑ったけど、申し訳なさからそれは少し歪んでいただろうな。
何も言わなくてすみません、と、今更だとは分かっていつつ謝った僕に、先輩もいびつな笑みでかぶりを振った。
「有り難かった。変わらず傍にいてくれたことが。俺は──」
言いかけながら一度唇を閉じて、また開きかけて、それから僅かに首を傾げた先輩に、僕はどうぞ、と視線で続きを促した。
「あのとき……雑踏に紛れて聞こえていなかったか、それとも意味が通じていなかったか──どちらにしろ伝わらずに済んで、それまでと同じ距離に居られるのならそれで良かったと、安堵してしまっていた」
オサハタ
DOODLE続きUnknown⑤ そのまま暫く、何をするでもなく、ただ起きていて、それからちゃんと眠って、そして次の日──僕は変わらなかった、変えなかった、絶対に何ひとつとして、変えないようにしたんだ。
それでも何処か少しぐらい違っているかもしれないし、そこに、僕が気付いたように先輩も気付くかもしれない。その可能性は頭にあったし、昨日の今日で先輩にもぎこちなさがあったっておかしくないと思っていた。
実際出勤して最初に会ったとき、いつもどおりに挨拶したら先輩は一瞬、大きく目を見開いたし、返答もやっぱり一拍遅かった。
その反応に僕はまた息苦しくなった、だけど。
それでも僕は、そのあとも、前日の件には絶対触れなかったし普段と同じように振る舞った。
1000それでも何処か少しぐらい違っているかもしれないし、そこに、僕が気付いたように先輩も気付くかもしれない。その可能性は頭にあったし、昨日の今日で先輩にもぎこちなさがあったっておかしくないと思っていた。
実際出勤して最初に会ったとき、いつもどおりに挨拶したら先輩は一瞬、大きく目を見開いたし、返答もやっぱり一拍遅かった。
その反応に僕はまた息苦しくなった、だけど。
それでも僕は、そのあとも、前日の件には絶対触れなかったし普段と同じように振る舞った。
オサハタ
DOODLE続きUnknown④ 布団に横たわって視界を閉じて、自分の中に入り込んで、呼吸の音だけを聞きながら開いた思考。
僕は先輩のことをどう思っているんだろう。
好きか嫌いで二分するなら間違いなく好きだ。少しでも嫌いの分が多ければ一緒に──ともすれば命を預け合う状況も有り得る──仕事なんて出来やしない、したくない、そこまで捨て鉢じゃない。
じゃあどうして好きに分類される?
それは先輩が強くて、仕事だって出来る、頼れる人だから──だよな、そう、そうだ。
それはずっと変わっていない。多少の違和感を抱き始めてからも業務に支障は全くなかったのだし、僕が気付いた変化だって無視しようと思えば出来るものだった。なにせそれはどれも、他の人は全く気に止めない程度のものだったのだから。
867僕は先輩のことをどう思っているんだろう。
好きか嫌いで二分するなら間違いなく好きだ。少しでも嫌いの分が多ければ一緒に──ともすれば命を預け合う状況も有り得る──仕事なんて出来やしない、したくない、そこまで捨て鉢じゃない。
じゃあどうして好きに分類される?
それは先輩が強くて、仕事だって出来る、頼れる人だから──だよな、そう、そうだ。
それはずっと変わっていない。多少の違和感を抱き始めてからも業務に支障は全くなかったのだし、僕が気付いた変化だって無視しようと思えば出来るものだった。なにせそれはどれも、他の人は全く気に止めない程度のものだったのだから。
オサハタ
DOODLE続きUnknown③ 先輩を追いかけられなかったあの日──僕は、呆けている間に赤へ変わってしまった信号がもう一度青くなるまで待ってから署に戻った。
そこに先輩は居なかった。少なくとも、僕の視界に入る範囲には。
きっと署の何処かには居たんだろう。だけど僕は探さなかった。
そしてそのまま、その日の勤務を終えた。
家路の中で、何度も思い出していたのはあのとき、先輩が僕に言ったこと。
先輩は好きな人がいると言った、そしてその相手は、状況から考えて、僕だ。
知らなかったなぁ、と、歩きながら自然と声に出して呟いていた。
先輩は、僕が好きなのか、そうなのか。
それ以上進まなかった思考がほんの少し動いたのは、家で眠る直前だ。
今僕は、どういう気持ちなんだろう。少なくとも嫌ではなくて、むしろ多分、嬉しい。だけどそれは、嫌われるよりは好かれる方がいいっていう、概ね大多数に対して抱く感情と同じなのか、それとも。
794そこに先輩は居なかった。少なくとも、僕の視界に入る範囲には。
きっと署の何処かには居たんだろう。だけど僕は探さなかった。
そしてそのまま、その日の勤務を終えた。
家路の中で、何度も思い出していたのはあのとき、先輩が僕に言ったこと。
先輩は好きな人がいると言った、そしてその相手は、状況から考えて、僕だ。
知らなかったなぁ、と、歩きながら自然と声に出して呟いていた。
先輩は、僕が好きなのか、そうなのか。
それ以上進まなかった思考がほんの少し動いたのは、家で眠る直前だ。
今僕は、どういう気持ちなんだろう。少なくとも嫌ではなくて、むしろ多分、嬉しい。だけどそれは、嫌われるよりは好かれる方がいいっていう、概ね大多数に対して抱く感情と同じなのか、それとも。
オサハタ
DOODLE続き。Unknown②「あのときは驚いた」
むず痒そうに目元を手で隠しながら言った先輩に、驚いたのはこっちですけど? と返す僕は多分、にやにやしてるんだろうな。
「いや、まぁ、そうだろうが……俺としては普段どおりにしているつもりだったんだ、それなのに、自分でも意識していなかった変化に、よりによって、お前が、気付いていたから、戸惑って──」
しどろもどろなその様が面白くていじらしくて、そして可愛らしくて、僕はただうんうんと頷いていた。
「だから……もしかしたらお前も、と、期待してしまって……それでだな……」
それなのに、僕が相も変わらずお悩み相談の体を崩さなかったので、慌てて逃げた? と聞いてみたら
「……もうやめてくれないか?」
552むず痒そうに目元を手で隠しながら言った先輩に、驚いたのはこっちですけど? と返す僕は多分、にやにやしてるんだろうな。
「いや、まぁ、そうだろうが……俺としては普段どおりにしているつもりだったんだ、それなのに、自分でも意識していなかった変化に、よりによって、お前が、気付いていたから、戸惑って──」
しどろもどろなその様が面白くていじらしくて、そして可愛らしくて、僕はただうんうんと頷いていた。
「だから……もしかしたらお前も、と、期待してしまって……それでだな……」
それなのに、僕が相も変わらずお悩み相談の体を崩さなかったので、慌てて逃げた? と聞いてみたら
「……もうやめてくれないか?」
オサハタ
DOODLEいずれ半サギョになる半→サギョ。続くかも知れないし、続かないかも知れないし、分からないよママ……!Unknown 先輩の様子がおかしい、気がする。
表情の変化が前より少ないし、報告書の文字が何処となく強張っているし、声をかけたときの応答も以前までよりコンマ数秒遅い。
だけど他の人にはそれが分からないみたいで、先輩何かあったのかなぁ、なんてそれとなく探ってみても、
「何かって何が? いつもどおりじゃないか? 」
と返されるばかりで手応えは無し。
僕の気のせいか? それならいいけどもしもそうじゃなかったらどうする? 先輩は索敵能力も対処力もうちの主軸だろう?
わずかな違和感も早めに解消しないと後で取り返しのつかないことになると僕は教わった、吸対の皆から、そして──他でもない先輩から。
だから先輩とふたりでの巡回の帰り道、署を目前にしたところで聞いてみたんだ。何か悩みでもあるんですか? って。そうしたら先輩はあからさまにびっくりしながら
1251表情の変化が前より少ないし、報告書の文字が何処となく強張っているし、声をかけたときの応答も以前までよりコンマ数秒遅い。
だけど他の人にはそれが分からないみたいで、先輩何かあったのかなぁ、なんてそれとなく探ってみても、
「何かって何が? いつもどおりじゃないか? 」
と返されるばかりで手応えは無し。
僕の気のせいか? それならいいけどもしもそうじゃなかったらどうする? 先輩は索敵能力も対処力もうちの主軸だろう?
わずかな違和感も早めに解消しないと後で取り返しのつかないことになると僕は教わった、吸対の皆から、そして──他でもない先輩から。
だから先輩とふたりでの巡回の帰り道、署を目前にしたところで聞いてみたんだ。何か悩みでもあるんですか? って。そうしたら先輩はあからさまにびっくりしながら
オサハタ
MEMO0721『そこがイイんだ』 明日から久し振りの連休だからと、ふたりで楽しく酒を酌み交わしていたら、サギョウが突然聞いてきた。
「先輩ってぇ、自分でするときぃ〜、どういうふうにするんですかぁ〜?」
「? する? とは、なにを?」
「なにってぇ〜、そのぉ、オナニ──むごぉ」
「よぉーし寝るぞお前飲み過ぎだ」
遅きに失して殆ど言わせてしまったが最後の最後に手で口を塞いで封じた。
そして有耶無耶にしようと、したんだ、俺は。
それなのに──
「……っぷは! ……っふふ、なぁに〜? 真っ赤になっちゃってぇ〜、恥ずかしいんですかぁ? んん〜?」
その手を取って逃れたサギョウがにやにやと意地悪く追撃してきたから
「当たり前だろう! そんな、もの……、ひとに明け透けにするものでは……!」
662「先輩ってぇ、自分でするときぃ〜、どういうふうにするんですかぁ〜?」
「? する? とは、なにを?」
「なにってぇ〜、そのぉ、オナニ──むごぉ」
「よぉーし寝るぞお前飲み過ぎだ」
遅きに失して殆ど言わせてしまったが最後の最後に手で口を塞いで封じた。
そして有耶無耶にしようと、したんだ、俺は。
それなのに──
「……っぷは! ……っふふ、なぁに〜? 真っ赤になっちゃってぇ〜、恥ずかしいんですかぁ? んん〜?」
その手を取って逃れたサギョウがにやにやと意地悪く追撃してきたから
「当たり前だろう! そんな、もの……、ひとに明け透けにするものでは……!」
オサハタ
DOODLE半サギョ。SS。まだ付き合いたての時期?この後ムフフなことが?みたいな?ん?どうなの?それは相手によるのでしょう「サギョウはデートが上手いんだな」
突然の一言に飲んでたペットボトルの中身が口の端から少し垂れた。中身が水で良かった。
急に言われたのは、何度目かの、それこそデートの帰り道。
どうしてそう思うのか? その口振りは誰かと比べているのか? だとしたら誰だ?
そんなようなことがいっぺんに頭に浮かんでしまって、だけどどれひとつとして実際には聞けなくて、ぽかんと口を開けるだけに終わった僕に先輩は
「比較対象がいるわけではないので何がどう、と具体的には言えないが、いつも全く退屈しないしとても楽しいからそうなのだなと思った」
と、にこにこしながら続けたからまたびっくりした。
湧いた疑問の全てにきちんと答えられてしまったから、もしかしてうっかり声に出していたのかと思って。
1174突然の一言に飲んでたペットボトルの中身が口の端から少し垂れた。中身が水で良かった。
急に言われたのは、何度目かの、それこそデートの帰り道。
どうしてそう思うのか? その口振りは誰かと比べているのか? だとしたら誰だ?
そんなようなことがいっぺんに頭に浮かんでしまって、だけどどれひとつとして実際には聞けなくて、ぽかんと口を開けるだけに終わった僕に先輩は
「比較対象がいるわけではないので何がどう、と具体的には言えないが、いつも全く退屈しないしとても楽しいからそうなのだなと思った」
と、にこにこしながら続けたからまたびっくりした。
湧いた疑問の全てにきちんと答えられてしまったから、もしかしてうっかり声に出していたのかと思って。
オサハタ
DOODLE付き合ってる半サギョが事後にお風呂でモチャモチャとしてるSSお見通し「……なんで最近、ことの最中にやたらと首噛んでくるんですか」
浴室で、ぶっきらぼうにシャワーを寄越しながらサギョウが聞いてきたから、
「そうすると中が締まるから好きなんだと思っていたが、違うのか?」
「……はぁぁ?」
正直に答えたら仏頂面が忌々しげなものに変わった。まぁ、どちらも同じようなものなのだが。
「恐怖に竦んだ反射とは考えないんですかぁぁ……?」
「そうであったり嫌だと思ったならその場ですぐに言うだろう? お前なら」
できないとは言わせない、という、言外に込めた意図は正しく伝わったようだ。
「……可愛くねぇな」
舌打ちまで混じった忖度のない口調。それでもその顔は──ばつが悪そうにではあるが──にやりと緩んだ。
843浴室で、ぶっきらぼうにシャワーを寄越しながらサギョウが聞いてきたから、
「そうすると中が締まるから好きなんだと思っていたが、違うのか?」
「……はぁぁ?」
正直に答えたら仏頂面が忌々しげなものに変わった。まぁ、どちらも同じようなものなのだが。
「恐怖に竦んだ反射とは考えないんですかぁぁ……?」
「そうであったり嫌だと思ったならその場ですぐに言うだろう? お前なら」
できないとは言わせない、という、言外に込めた意図は正しく伝わったようだ。
「……可愛くねぇな」
舌打ちまで混じった忖度のない口調。それでもその顔は──ばつが悪そうにではあるが──にやりと緩んだ。
オサハタ
DOODLE第255死のあと。ロナルドくん目線だけど半サギョ。某特定のアイドルの歌。いつの間にか覚えちゃった感じ。繋がり 途中から運転を代わった帰り道。
まだ夕陽が出てるってんでドラルクはトランク、カメ谷は後ろでジョンを預かり抱きながら寝てる。
助手席にはさっきまで運転してた半田がいて、こっちは起きてる。けど、みんなを起こさないように特に話したりはしてない。
というか、してなかった、今までは。
でも、ふと半田が、鼻歌、みたいのを歌ったんだ。
しばらくただ聞いてた。
んで、少し経ってから尋ねてみた。
なんの歌だ?って。
そしたらあいつ、自分が歌ってたのに気付いてなかったみたいで少し驚いてた。
そんで、ちょっとの間黙ってから
「知らない」
って言ったんだ。
随分気に入った様子で歌ってたくせに何だよ、と思ったけど
「……今度、聞いておく」
394まだ夕陽が出てるってんでドラルクはトランク、カメ谷は後ろでジョンを預かり抱きながら寝てる。
助手席にはさっきまで運転してた半田がいて、こっちは起きてる。けど、みんなを起こさないように特に話したりはしてない。
というか、してなかった、今までは。
でも、ふと半田が、鼻歌、みたいのを歌ったんだ。
しばらくただ聞いてた。
んで、少し経ってから尋ねてみた。
なんの歌だ?って。
そしたらあいつ、自分が歌ってたのに気付いてなかったみたいで少し驚いてた。
そんで、ちょっとの間黙ってから
「知らない」
って言ったんだ。
随分気に入った様子で歌ってたくせに何だよ、と思ったけど
「……今度、聞いておく」
オサハタ
DOODLE第255死(2021/7月時点単行本未収録)ネタ半田くんが『僕』って言った・電話出たのサギョウくんだったらいいね~~~~~!!!!みたいなやつ。あと白シャツやっぱすげぇいいんでまた着てくださいお願いします。白シャツ着て一人称〝僕〟の半田くん最高に良かったですありがとう。
オサハタ
DOODLE半サギョ。サギョくん入隊直後の、もちろん付き合ってなんかいない、恋すらしていない頃の、出会ったばかりのふたりにこんなことがあったらいいな~~~~半田くんが仕事できるマンなのは知ってるけど初めての後輩に自分でも知らないうちに余計な力入っちゃってたり心配するあまり言い方きつくなっちゃってそれをすぐに省みたり、でもそれは本当に気に掛けてるからなんだよ~~~~みたいな人間くささがあるといいな~~~~いや彼は相当人間くさい人だけどね~~~でもサギョウくんは当初それをあまり分かってなくていざ目の当たりにして色眼鏡が外れて幻滅するどころかむしろますます惹かれてっちゃったりしてたら美味しいな~~~~~~もぐもぐ~~~~~~っていう幻覚オサハタ
DOODLE半サギョ(両片想い)の概念withロナルドくん(三巻で同じコマに出てるから初対面じゃないかもしれないけどそこは気にしない)
(サムネだと三点リーダおかしいとこあるけどクリックして見ると直ってたりするの不思議ね〜、β版だからかな?今後のポイピクちゃんに期待)
じゃない方 じゃない方じゃない方じゃない方。
いつもそう。
優秀だけど一番じゃない方。
仲良しだけど特別じゃない方。
僕じゃ、ない方が、いつも居る。
だから慣れっこだ。
好きな人が、僕じゃない人に、ご執心なのも。
僕の好きな人はとある人の話をたくさんする。
鼻を鳴らしながらいくつもいくつも。なのに同じ話は絶対にしないのだから、その記憶力と種の多さに関心はする、けれども。
聞いていて面白くないのも、そのせいで相槌が適当になってしまうのも、仕方ないだろう?
そしてとうとう今日のこの日、その相手に対面してしまうという状況に陥らされた。
目の前にいるこの人には何の罪もない、どころか多大なる迷惑を掛けたのだから無愛想にするわけにもいかないしそれ以前に本当に申し訳ないという気持ちがある。
1946いつもそう。
優秀だけど一番じゃない方。
仲良しだけど特別じゃない方。
僕じゃ、ない方が、いつも居る。
だから慣れっこだ。
好きな人が、僕じゃない人に、ご執心なのも。
僕の好きな人はとある人の話をたくさんする。
鼻を鳴らしながらいくつもいくつも。なのに同じ話は絶対にしないのだから、その記憶力と種の多さに関心はする、けれども。
聞いていて面白くないのも、そのせいで相槌が適当になってしまうのも、仕方ないだろう?
そしてとうとう今日のこの日、その相手に対面してしまうという状況に陥らされた。
目の前にいるこの人には何の罪もない、どころか多大なる迷惑を掛けたのだから無愛想にするわけにもいかないしそれ以前に本当に申し訳ないという気持ちがある。
オサハタ
DOODLE半サギョ(付き合ってるふたりがいちゃいちゃしてる)恋は下心、愛は真心「なぜお前は俺を先輩と呼ぶんだ?」
と、聞いてみたのはほんの気まぐれだ。
役付きではない俺を役職で呼びようがないのは理解できる。だが同様の他者に対し、サギョウは敬称付けの名前を用いて呼び掛けている。
それらと俺の間に画されている、ように見える一線。
何か理由があってのことなら知ってみたいというほんの少しの好奇心からの質問だったのだ。
だから、
「嫌なんですか?」
と質問に質問で返されて少々面食らった。
……何か気にでも障ったか?
「……嫌ではないが、他にお前が先輩と呼んでいる相手を知らない」
真っ向からぶつかるサギョウの視線、その出どころは半分ほど瞼に隠れている。
そして少しの沈黙の後、それは小さな、ため息にも似た吐息とともに隠された。
1079と、聞いてみたのはほんの気まぐれだ。
役付きではない俺を役職で呼びようがないのは理解できる。だが同様の他者に対し、サギョウは敬称付けの名前を用いて呼び掛けている。
それらと俺の間に画されている、ように見える一線。
何か理由があってのことなら知ってみたいというほんの少しの好奇心からの質問だったのだ。
だから、
「嫌なんですか?」
と質問に質問で返されて少々面食らった。
……何か気にでも障ったか?
「……嫌ではないが、他にお前が先輩と呼んでいる相手を知らない」
真っ向からぶつかるサギョウの視線、その出どころは半分ほど瞼に隠れている。
そして少しの沈黙の後、それは小さな、ため息にも似た吐息とともに隠された。
オサハタ
DOODLE半サギョの概念隣り合わせ 手の、影。
それがどうしようもなく、怖い。
その影は僕の手が作り出したもの。
必死に伸ばした、手は、何も掴めない。
それが、怖くて──サイレンのように泣いたのは、いつだったか。
「──サギョウ!」
呼ばれて──
色を取り戻す視界、映るのは眩しい金色、混濁する思考、その中で一番に理解したのは温もりで、それが伝わってくるのは、てのひら。
「無事だな⁉︎」
色を失っていたのは、僕の視界だけじゃない、この人の顔も、だ。
すぐには声が出なくて、だけどその青白い素肌をこれ以上は見たくなくて、代わりに掴まれた──掴んでもらえた、手に、力を込めた。
「──よし!」
張り詰めた目尻が少し、だけだけど、ゆるんだ。
ああ良かった、泣かせずに、済んだ。
755それがどうしようもなく、怖い。
その影は僕の手が作り出したもの。
必死に伸ばした、手は、何も掴めない。
それが、怖くて──サイレンのように泣いたのは、いつだったか。
「──サギョウ!」
呼ばれて──
色を取り戻す視界、映るのは眩しい金色、混濁する思考、その中で一番に理解したのは温もりで、それが伝わってくるのは、てのひら。
「無事だな⁉︎」
色を失っていたのは、僕の視界だけじゃない、この人の顔も、だ。
すぐには声が出なくて、だけどその青白い素肌をこれ以上は見たくなくて、代わりに掴まれた──掴んでもらえた、手に、力を込めた。
「──よし!」
張り詰めた目尻が少し、だけだけど、ゆるんだ。
ああ良かった、泣かせずに、済んだ。
オサハタ
DOODLE半サギョSS(ふたりは付き合ってていちゃいちゃしてる)「いつもと違う、気がする」
……鋭いなぁ。
確かに変えたものがある。
だけどそれは、おそらくどちらかと言えば消極的な変化で、僕自身ですらすでに意識の外だった。
だから、さすがだなぁ、と呆れつつも僕は多分、嬉しかったんだと思う。
「そうか、香りが少ないんだな」
勿体ぶるつもりはなかった、すぐに答えを教えるつもりだった。
なのにそれより早く、頷きながら当てられてしまったものだから、僕はこみ上げる笑いを堪えきれなかった。
それがくすぐったさから出た笑いだとでも思ったんだろう、離れようとした先輩を引き止めて、大丈夫、と示してから理由を話した。
香りは痕跡になり、足掛かりになる、よって潜む機会の多い自分には不向きで、これまでのものより少ないものを見つけたから変えたのだと。
550……鋭いなぁ。
確かに変えたものがある。
だけどそれは、おそらくどちらかと言えば消極的な変化で、僕自身ですらすでに意識の外だった。
だから、さすがだなぁ、と呆れつつも僕は多分、嬉しかったんだと思う。
「そうか、香りが少ないんだな」
勿体ぶるつもりはなかった、すぐに答えを教えるつもりだった。
なのにそれより早く、頷きながら当てられてしまったものだから、僕はこみ上げる笑いを堪えきれなかった。
それがくすぐったさから出た笑いだとでも思ったんだろう、離れようとした先輩を引き止めて、大丈夫、と示してから理由を話した。
香りは痕跡になり、足掛かりになる、よって潜む機会の多い自分には不向きで、これまでのものより少ないものを見つけたから変えたのだと。
オサハタ
DOODLE半サギョ。付き合ってるふたり。サギョウくんの髪色の話。運命の特異点「先輩は、僕がこういう髪の色じゃなかったら、好きになってなかった?」
と、何となく聞いたら、先輩はきゅっと目を丸くした後、俯いて考え込んだ。
僕としては、多分、『そんなことはない』って、即答して欲しかったんだと思う。
『思う』、だなんて他人事みたいだけど、考え込まれている今、少し──どころじゃなくかなり不安になっているから、まぁそういうことなんだろうなと、遅れて気付いた。
待つ、というより、聞かなければよかったかな、とか、聞いてどうするつもりなんだろうか、とか、後悔と自問に忙しく結果として黙りこくった僕に、先輩は、俯いたまま呟いた。
「特異点、では、あったと思う」
特異点──。
その意味の在り処ろを僕が探している間に、先輩はゆっくり、だけど確実に言葉を重ねた。
1067と、何となく聞いたら、先輩はきゅっと目を丸くした後、俯いて考え込んだ。
僕としては、多分、『そんなことはない』って、即答して欲しかったんだと思う。
『思う』、だなんて他人事みたいだけど、考え込まれている今、少し──どころじゃなくかなり不安になっているから、まぁそういうことなんだろうなと、遅れて気付いた。
待つ、というより、聞かなければよかったかな、とか、聞いてどうするつもりなんだろうか、とか、後悔と自問に忙しく結果として黙りこくった僕に、先輩は、俯いたまま呟いた。
「特異点、では、あったと思う」
特異点──。
その意味の在り処ろを僕が探している間に、先輩はゆっくり、だけど確実に言葉を重ねた。
オサハタ
DOODLE半サギョSS、ピクブラからの移動、ドチャクソに酔っ払った半田くんとまだ正気が残ってるサギョくんの話が好きなんだけどさ、って話【以下経緯(こっちの方が本文より長い)】
ヘロヘロになってる半田くんが
「さぎょう、さわりたい、したい、すきだ、さぎょう」
って呂律の回っていない口調でぺたぺたに甘えてきてソファに押し倒されて、サギョくんも悪い気はしないというかそれなりに酔っ払ってるから
「んー、ぼくもすきー」
みたいな感じでぎゅうっとするんだけど、半田くんはもう正体を無くしていると分かっていて、この状態で致しても合意とはならないし自分が受け入れる側であっても強制姦淫になるなぁ、それ以前にこの人具合悪くしそう悪酔い的な意味で、とか考えているので
「じゅんびしてくるから〜まってて〜」
みたいなこと言って半田くんを寝床に誘導し、やや暫く己を落ち着かせてからそおっと部屋に戻り、目論見通りあどけない寝顔で眠っている半田くんに安堵しながら
「他の人にこんなとこ見せたらダメですよ」
なんて微笑みながらほっぺたにちゅうして自分も眠るやつ見たいママ
翌日サギョくんが目を覚ましたら半田くんがぎゅーっと抱き着いてて
「どうしたの?」
って聞いたら
「……寝てしまってごめん」
て悲しそうな声が聞こえたから
「僕が寝かせたの、心配だったから」
って半田くんの腕の中に潜り込むんだねサギョくんはね。
ママー!!!!!!!!ママーーーー!!!!!
宝物酒に酔って眠っている状態を、正体をなくす、というらしい、が。
正体って、なんだろう。
その人そのもの、素の姿、だとすれば、酔って本性が出ている状態こそ正体なんじゃないのかな。
それを無くす?酔って?どういうこと?
そんなことをぼんやりと考えながら眺めた寝顔はあどけなくて、柔らかくて、微笑ましくて、普段と全然違う。
正体を、無くす。
正体、とは──
もしかして、その人がその人らしくあろうとする、これが正しいとその人本人が信じ、取り繕う姿、だろうか。
だとすれば、説明がつく、気がする。
それが取り払われた、今。
目の前に開け広げられている、この愛おしい寝顔は、許しのしるしだろうか。
そうであるなら──
「……他の誰にも、見せないでね」
375正体って、なんだろう。
その人そのもの、素の姿、だとすれば、酔って本性が出ている状態こそ正体なんじゃないのかな。
それを無くす?酔って?どういうこと?
そんなことをぼんやりと考えながら眺めた寝顔はあどけなくて、柔らかくて、微笑ましくて、普段と全然違う。
正体を、無くす。
正体、とは──
もしかして、その人がその人らしくあろうとする、これが正しいとその人本人が信じ、取り繕う姿、だろうか。
だとすれば、説明がつく、気がする。
それが取り払われた、今。
目の前に開け広げられている、この愛おしい寝顔は、許しのしるしだろうか。
そうであるなら──
「……他の誰にも、見せないでね」
オサハタ
DOODLE半サギョSS、ピクブラからの移動、噛みたい半田くんの話【独占欲と愛情】紅い唇『噛みたい』
と、思ったのは、生まれて初めてだった。
すぐに『駄目だ』と打ち消した、傷つけてしまうから。
一番傷つけたくない人を、傷つけたくなくて。
それなのに[[rb:件 > くだん]]の感情はいつまで経っても消えなくて、[[rb:寧 > むし]]ろ募る一方で、このままではいつか本当に──と、怖くなって。
「どうしたんですか⁉︎」
と、相手に聞かれるまで、気付かなかった。
自分が泣いていることにも、それほどまでにその願望が、自分の中に深く根付いてしまっている、こと、にも。
嗚咽の中で上手く話せていた自信は全くない。
それでも相手は──恋人は、何度も頷きながら、一度も目を逸らすことなく、俺の辿々しく[[rb:拙 > つたな]]い、言の葉を、ひとつ残らず拾って、くれた。
613と、思ったのは、生まれて初めてだった。
すぐに『駄目だ』と打ち消した、傷つけてしまうから。
一番傷つけたくない人を、傷つけたくなくて。
それなのに[[rb:件 > くだん]]の感情はいつまで経っても消えなくて、[[rb:寧 > むし]]ろ募る一方で、このままではいつか本当に──と、怖くなって。
「どうしたんですか⁉︎」
と、相手に聞かれるまで、気付かなかった。
自分が泣いていることにも、それほどまでにその願望が、自分の中に深く根付いてしまっている、こと、にも。
嗚咽の中で上手く話せていた自信は全くない。
それでも相手は──恋人は、何度も頷きながら、一度も目を逸らすことなく、俺の辿々しく[[rb:拙 > つたな]]い、言の葉を、ひとつ残らず拾って、くれた。