SKR
DOODLE「反則」 ラーヒュン ワンライ 2024.08.24.『
迷宮の奥に隠されていた秘宝は、惚れ薬だった。
古語での記述があった。飲み込んで最初に見た者に恋をする薬だと。
結局あの瓶の存在を誰にも言えなかった。
言えないとはつまり、使うことを考えているのだろうか。自分が恐い。
食卓を共にする度にラーハルトの食器を見てしまう。
あそこに一滴、二滴と思ってしまう。駄目だ。やってはならない。
どちらにせよ大勢が居るところは危険だ。
飲み込んだあとに誰を見てしまうか分からない。
二人きりの食事だったが、今日は控えた。
まだ無理だ。一回目では、まだ向こうにも警戒心があるはずだ。
もう何回目の食事だろう。試しに水を注いでやったら飲んだ。
ではいよいよ次回、あの瓶を。そうしたら彼が手に入る。
1782迷宮の奥に隠されていた秘宝は、惚れ薬だった。
古語での記述があった。飲み込んで最初に見た者に恋をする薬だと。
結局あの瓶の存在を誰にも言えなかった。
言えないとはつまり、使うことを考えているのだろうか。自分が恐い。
食卓を共にする度にラーハルトの食器を見てしまう。
あそこに一滴、二滴と思ってしまう。駄目だ。やってはならない。
どちらにせよ大勢が居るところは危険だ。
飲み込んだあとに誰を見てしまうか分からない。
二人きりの食事だったが、今日は控えた。
まだ無理だ。一回目では、まだ向こうにも警戒心があるはずだ。
もう何回目の食事だろう。試しに水を注いでやったら飲んだ。
ではいよいよ次回、あの瓶を。そうしたら彼が手に入る。
Jeff
DOODLEお題:「旅行」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
現ぱろです🙏
2024/08/19
Arrival 飛ぶのが好きだ。
はるか昔、子供のころから。
ヒュンケルは楕円の窓にこめかみを付けて、主翼の先を見る。
上下し始めたフラップの向こうに、オレンジ色の朝日。
最新鋭機のガラスは霜も降りず、視界はクリア。人工的な色膜が張られているようで、どこか味気ない。
まだ眠っている家々の灯火を、朝焼けが優しく包み込む。
夜よ、君らの役割は終わった。目覚めのときだ。
――皆様。
当機は間もなく、着陸態勢に入ります。
シートベルトをしっかりとお締めください。
現地時刻は午前5時57分、外気温は摂氏14度。
天候は曇り。
滑走路の混雑が予想されております。
そのため今後の状況次第では――
大きく旋回するボーイング787の下に、街の全貌が見えた。
1947はるか昔、子供のころから。
ヒュンケルは楕円の窓にこめかみを付けて、主翼の先を見る。
上下し始めたフラップの向こうに、オレンジ色の朝日。
最新鋭機のガラスは霜も降りず、視界はクリア。人工的な色膜が張られているようで、どこか味気ない。
まだ眠っている家々の灯火を、朝焼けが優しく包み込む。
夜よ、君らの役割は終わった。目覚めのときだ。
――皆様。
当機は間もなく、着陸態勢に入ります。
シートベルトをしっかりとお締めください。
現地時刻は午前5時57分、外気温は摂氏14度。
天候は曇り。
滑走路の混雑が予想されております。
そのため今後の状況次第では――
大きく旋回するボーイング787の下に、街の全貌が見えた。
きのこ
DONE #LH1dr1wr2024/08/17 お題「旅行」100分程。
この後、数百年後の世界まで『ラーヒュン旅行記』として残ることになる一品である。
※よくあるゲーム本編には関係ないけど、民家や城や図書館とかの本棚を調べるとこっそりあったりするちょっとその地方のヒントが書いてあったりするやつになる。 2
SKR
DOODLE「おねだり」 ラーヒュン ワンライ 2024.08.14.「なあ、ラーハルト」
上目使いのヒュンケルからその呼びかけがあったら、おねだりだ。
「焼き鳥……」
今回は露店の焼き串が食べたかったようだ。ラーハルトは財布を取り出した。
「うーむ。まさかおまえがこんな甘ったれだったとは」
とか何とかぼやきながらも、基本的には願いはすべて聞いてやっている。というのも、どうやら甘える相手は誰彼かまわずというわけではなさそうなのだ。普段のヒュンケルは誰もが認めるアバンの使徒の長兄であり、己に厳しく、節度のある男だ。
そんな彼が、ラーハルトにだけは素直なのだ。
自分にだけ懐いているのだと思えば悪い気はしなかった。
なので。
「なあ、ラーハルト。福引き券……」
「おまえ当たったこともないくせに」
2647上目使いのヒュンケルからその呼びかけがあったら、おねだりだ。
「焼き鳥……」
今回は露店の焼き串が食べたかったようだ。ラーハルトは財布を取り出した。
「うーむ。まさかおまえがこんな甘ったれだったとは」
とか何とかぼやきながらも、基本的には願いはすべて聞いてやっている。というのも、どうやら甘える相手は誰彼かまわずというわけではなさそうなのだ。普段のヒュンケルは誰もが認めるアバンの使徒の長兄であり、己に厳しく、節度のある男だ。
そんな彼が、ラーハルトにだけは素直なのだ。
自分にだけ懐いているのだと思えば悪い気はしなかった。
なので。
「なあ、ラーハルト。福引き券……」
「おまえ当たったこともないくせに」
Jeff
DOODLEお題:「新品」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/08/04
Flashbacks「見てくれ、ラーハルト」
月光のごとく滑らかな頬を引き上げて、ヒュンケルが笑う。
「新品同様だ」
ラーハルトは黙って、力強い腕に触れる。
魔槍とは比べ物にならない重量を纏いながらも己を翻弄した、その無尽蔵の体力に。
「これでやっと、お前と並び立てる。戦士と名乗れる」
人形のような笑みに、ラーハルトは眼を閉じる。
「健康で、頑健で。お前と同じ速度で走れるんだ」
ヒュンケルの明朗な宣言に、ふと引きこまれそうな自分がいる。
すべての不安は解消。
腹の底に巣食う絶望は幻と化し、永遠の安堵にたゆたうことができる。
だが。
それでも。
「戻って来い」
と、ラーハルトは呼びかける。
冷徹で真摯な言葉に、ヒュンケルは俯く。
888月光のごとく滑らかな頬を引き上げて、ヒュンケルが笑う。
「新品同様だ」
ラーハルトは黙って、力強い腕に触れる。
魔槍とは比べ物にならない重量を纏いながらも己を翻弄した、その無尽蔵の体力に。
「これでやっと、お前と並び立てる。戦士と名乗れる」
人形のような笑みに、ラーハルトは眼を閉じる。
「健康で、頑健で。お前と同じ速度で走れるんだ」
ヒュンケルの明朗な宣言に、ふと引きこまれそうな自分がいる。
すべての不安は解消。
腹の底に巣食う絶望は幻と化し、永遠の安堵にたゆたうことができる。
だが。
それでも。
「戻って来い」
と、ラーハルトは呼びかける。
冷徹で真摯な言葉に、ヒュンケルは俯く。
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/07/27 お題「スイカ」170分程。
唐突な現パロ。現パロなのでラーの耳は尖ってないし紋様もないパターンのやつです。
https://poipiku.com/5185671/9719039.html
ここの二人です。古民家で生活している二人。
家庭菜園とか初めて始めた方たちでたまに起きるお話。 5
きのこ
DONE2024/7/27~2024/7/28開催の『にょたヒュン♥アラモード』の展示その④です。『セーラー服&オネショタ』
※ラーヒュンです。ヒュンが女体化してます。苦手な方は要注意です。 11
chokomoo
DOODLEラフ24・25最終回最後まで読んでくださった方、見守ってくださった方ありがとうございました☺️
リアクションもありがとうございました!
もうちょっとこの後の二人のエピローグ描きたいのでいつか…!
wave box以前作ってたのでよかったら…マロとどちらが良いかな
https://wavebox.me/wave/22lvyytfvlybu0c4/ 2
SKR
MOURNING「新生活」 ラーヒュン ワンライ 2024.07.22. 朝、起きると、相棒から刃物を突きつけられていた。
宿の寝床から身を起こしたばかりのヒュンケルは、両手を上げて降参の意を示した。
「何事なのか教えてくれ、ラーハルト」
槍を構えている男のただならぬ殺気に、それほど彼の機嫌を損ねる事をしただろうかと反芻するが、見当が付かない。
すると半人半魔の戦士は想定外の台詞を吐いた。
「おまえは何者だ。なぜオレの名を知っている」
何秒か絶句した。
考えた末、ヒュンケルは鎌を掛けてみることにした。
「……おまえもしかして、バランの所に戻る気でいるか?」
ラーハルトは返事をしなかった。表情も変わらない。
つまりこれは本当に記憶が無いとみえる。
彼が喋ろうとしないのは、敵に己の情報を与えたくないからだと推測される。そういう用心深い男なのだ。
5088宿の寝床から身を起こしたばかりのヒュンケルは、両手を上げて降参の意を示した。
「何事なのか教えてくれ、ラーハルト」
槍を構えている男のただならぬ殺気に、それほど彼の機嫌を損ねる事をしただろうかと反芻するが、見当が付かない。
すると半人半魔の戦士は想定外の台詞を吐いた。
「おまえは何者だ。なぜオレの名を知っている」
何秒か絶句した。
考えた末、ヒュンケルは鎌を掛けてみることにした。
「……おまえもしかして、バランの所に戻る気でいるか?」
ラーハルトは返事をしなかった。表情も変わらない。
つまりこれは本当に記憶が無いとみえる。
彼が喋ろうとしないのは、敵に己の情報を与えたくないからだと推測される。そういう用心深い男なのだ。
Jeff
DOODLEお題:「くさったしたい」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/07/14
現パロですすみません!
Zombies 「うわ、速い」
ヒュンケルはポップコーンを掬いながら呟く。
「走るゾンビって反則じゃないか」
深夜二時。
ラーハルトが最近買った、豪華で孤独なマンションのリビングで。
高層階の眺望に目もくれず、二人ソファにあぐらをかいて、安いホラー映画を味わっていた。
クリスタルの大皿には、ヘタだけになった苺の山。
ヒュンケルが食べたいとねだったマカロニチーズとドミノピザ・スーパーデラックスの残骸。
すっかり溶け切った氷が、ビールとシャンパンの空き瓶を冷やしている。
「腐った死体って、もっとこう」
とジェスチャーで示すヒュンケルの口に、ラーハルトがポップコーンを数粒押し込む。
「こぼすな」と叱ると、
「むぐ」ヒュンケルは大人しく咀嚼して、画面に目を戻す。
1675ヒュンケルはポップコーンを掬いながら呟く。
「走るゾンビって反則じゃないか」
深夜二時。
ラーハルトが最近買った、豪華で孤独なマンションのリビングで。
高層階の眺望に目もくれず、二人ソファにあぐらをかいて、安いホラー映画を味わっていた。
クリスタルの大皿には、ヘタだけになった苺の山。
ヒュンケルが食べたいとねだったマカロニチーズとドミノピザ・スーパーデラックスの残骸。
すっかり溶け切った氷が、ビールとシャンパンの空き瓶を冷やしている。
「腐った死体って、もっとこう」
とジェスチャーで示すヒュンケルの口に、ラーハルトがポップコーンを数粒押し込む。
「こぼすな」と叱ると、
「むぐ」ヒュンケルは大人しく咀嚼して、画面に目を戻す。
Jeff
DOODLEお題:「裸足」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/07/07
Sauvage こ こここ こここここ
ここ
こ。
リズミカルな足音が途絶えた。
舞踏会場から抜け出た先に、延々と続く薄暗い階段。
その先には、豪奢な大理石の玄関。
もう夜も更けたが、饗宴は明け方まで続くだろう。
逃げ道はすぐそこだ。
「まったく、大した肝っ玉だあの女王は。よりによって俺たちを、外交の場で飾り物にするとは。わが国には大魔王を倒した勇者の仲間が控えている、女王の命令に馳せ参じるのだと示したかったのだろう。都合よく使ってくれる……ええい、この刺繍の凝った襟、きつくてかなわん。とにかくやることはやった、報酬は期待できる。この忌々しい正装も、館から出るまでの辛抱だ。そうだろう、ヒュンケル――」
しばし虚空に話しかけていたことに気づく。
1545ここ
こ。
リズミカルな足音が途絶えた。
舞踏会場から抜け出た先に、延々と続く薄暗い階段。
その先には、豪奢な大理石の玄関。
もう夜も更けたが、饗宴は明け方まで続くだろう。
逃げ道はすぐそこだ。
「まったく、大した肝っ玉だあの女王は。よりによって俺たちを、外交の場で飾り物にするとは。わが国には大魔王を倒した勇者の仲間が控えている、女王の命令に馳せ参じるのだと示したかったのだろう。都合よく使ってくれる……ええい、この刺繍の凝った襟、きつくてかなわん。とにかくやることはやった、報酬は期待できる。この忌々しい正装も、館から出るまでの辛抱だ。そうだろう、ヒュンケル――」
しばし虚空に話しかけていたことに気づく。
SKR
MOURNING「御伽話」 ラーヒュン ワンライ 2024.06.30. 休日、自宅に押しかけられたポップは一応は茶を出そうとしたのだが、急ぐから要らんと言われた。
「貴様のモシャスは完璧に他人をコピーできるらしいが、どの程度だ」
急ぎらしいラーハルトからそう詰め寄られたポップは淀みなく答えた。
「隅々まできっちり同じ姿形になるぜ」
「では、真似たい人物の様相が昔と変わっている場合はどうなる?」
「おれがそいつに最後に会ったときの状態になる。本人がじいさんになっても、若い頃にしか会ってなきゃ若い姿になる」
「体型も最後に会った状態に?」
「ああ。本人が太ったとしても、それ以前にしか会ったことがなきゃ痩せてる状態だ」
「おまえが知らない造形まで再現できるのか? 服に隠れている部分や、おまえが意識していない体格のことは?」
3045「貴様のモシャスは完璧に他人をコピーできるらしいが、どの程度だ」
急ぎらしいラーハルトからそう詰め寄られたポップは淀みなく答えた。
「隅々まできっちり同じ姿形になるぜ」
「では、真似たい人物の様相が昔と変わっている場合はどうなる?」
「おれがそいつに最後に会ったときの状態になる。本人がじいさんになっても、若い頃にしか会ってなきゃ若い姿になる」
「体型も最後に会った状態に?」
「ああ。本人が太ったとしても、それ以前にしか会ったことがなきゃ痩せてる状態だ」
「おまえが知らない造形まで再現できるのか? 服に隠れている部分や、おまえが意識していない体格のことは?」
きのこ
DONE #LH1dr1wr2024/06/29 お題「おねだり」130分程。
うちのラーヒュンはいつだってやりたい放題なので、こんなの二人じゃない!!と思われる方には大変申し訳なく。
それはさておき、ネタがマンネリ化してきているのはどうにかしないといけない…。 4
Jeff
DOODLEお題:「雷」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/06/23
Storm「俺は、結構好きだ」
ヒュンケルは呟いて、ラーハルトの頭頂部に鼻を埋めた。
埃っぽい山小屋の寝台で。
酢漬けのニシンみたいに、二人ぴったりとくっついて。
蒼い額に皺が寄る。
「雷が?」
と、ラーハルトは絞り出すように言って、シーツをたくし上げた。
「そう」
ヒュンケルは彼の長い耳を覆うように腕を回すと、ぷあ、とあくびをした。
嵐の夜は、いつもこうだ。
ラーハルトは三度目の雷鳴で、必ず相棒のベッドに忍び込んでくる。慣れたもので、ヒュンケルは何も言わずに、大きな猫を抱きしめる。
互いの過去、心の傷については、過剰に踏み込まない。
旅を続けるうちに出来上がった、暗黙のルールだった。
子供特有の、水蜜桃みたいに柔らかな精神。
2787ヒュンケルは呟いて、ラーハルトの頭頂部に鼻を埋めた。
埃っぽい山小屋の寝台で。
酢漬けのニシンみたいに、二人ぴったりとくっついて。
蒼い額に皺が寄る。
「雷が?」
と、ラーハルトは絞り出すように言って、シーツをたくし上げた。
「そう」
ヒュンケルは彼の長い耳を覆うように腕を回すと、ぷあ、とあくびをした。
嵐の夜は、いつもこうだ。
ラーハルトは三度目の雷鳴で、必ず相棒のベッドに忍び込んでくる。慣れたもので、ヒュンケルは何も言わずに、大きな猫を抱きしめる。
互いの過去、心の傷については、過剰に踏み込まない。
旅を続けるうちに出来上がった、暗黙のルールだった。
子供特有の、水蜜桃みたいに柔らかな精神。