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    Kon_sch5

    PROGRESS
    宵待草、鳥がよぶまで 7ちょっとだけ・・・・・



     夢見が悪い、というのは、もはや疑いようのない事実だった。
     週に一、二度は、寝汗をかいて飛び起きる。それがもう二か月は続いていた。夢の内容は思い出せない。絶望的な気分だけがべったりと背中にはりつき、はげしく打つ鼓動を聴きながら肩で息をする。絶望感の正体もまた不明だった。自分自身が危害を加えられたというよりは、取り返しのつかない行為に手を染めてしまったというような、そういう種類の絶望感だという気がした。
     食いしばりも日に日にひどくなるようで、顎から首にかけてこわばったようになって目覚めることもあった。職場で雑談の一環として何の気なしに口にすると、歯科にかかったほうがいいと熱心にすすめられた。部下からは「マウスピースは食いしばりを解消するのではなく歯への負担を軽減するものなので、ボトックス注射によって食いしばりを抑える治療がおすすめ」だと言われた。ボトックス注射というのは美容医療の領域でしか耳にしたことがなかったので、月島はおどろいた。「歯ぎしりが治まるだけじゃなく、フェイスラインもすっきりするのでお得」と言われたものの、月島は別段顔まわりをすっきりさせたいと考えたことはなかったけれど。
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    d_chin_mkai

    DONE24年3月17日 ゆるい月鯉オンリーのペーパーラリーに参加したペーパーです。
    高校球児月島とおませな幼児音之進くんの出会いとその後。
    全年齢です。

    思いつきで書き始めたら思いの外面白くて続き書きたいなぁって思ったのでそのうち続きを書けたらイイナって思っています。(言うだけタダ)
    月鯉 初恋スリーアウトこれは昔の記憶だ。

    高校生の時に、月島基はある一家と知り合った。
    一般家庭の生まれには、到底縁のない実業家の一族だ。
    偶然だった。部活帰り、大通りに飛び出してきた子供を咄嗟に助けたら、実業家の次男坊だったという訳だ。
    普段はどこへ行くのも車で移動するような箱入り息子が、どうしてその日、ひとりで外を歩いていたのか、月島は今も知らない。
    助けられた子供は、大きな瞳に涙をいっぱい湛えていた。何が起きたのか理解ができているのかも危うかったけれども、本能的に感じた恐怖で抱き留めた小さな身体は強張っていた。
    この時、腕に感じた子供特有の柔らかな骨格の感触は、今でも思い出すことができる。
    何してるんだ、とか、危ないだろう、とか、言いたいことはたくさんあったけれども、怯えた子供の顔を見た途端、口をついて出たのは「大丈夫、もう大丈夫だから」という慰めの言葉だった。
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