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    #隠し刀(男)

    zeppei27

    DONEいつもの主福の現パロのハロウィン話です。単品でも読めます。本に書下ろしで書いていた現パロ時空ですが、アシスタント×大学教授という前提だけわかっていれば無問題!普段通りの場所の空気が変わるのって、面白いですね。
    幸なるかな、愚かな人よ 最初はクリスマスだった。次に母の日が来てバレンタインデーが来て、父の日というなんとも忘れられがちなものを経てハロウィンがやって来た。日本のカレンダーでは直接書かれることはまだまだ少ないものの、じわじわと広まった(あるいはメディアなどの思惑に乗って広められた)習慣は、お花見よろしくお祭り騒ぎをする格好の理由として大流行りを迎えている。街中に出れば、芋栗南瓜くらいしかなかった秋の風景に、仮装衣装が並び、西洋風の怪物や魔女、お化けといった飾り物が目を楽しませてくれる。
     秋と言えば何といっても紅葉で、その静けさと味わい深さを愛していた福沢諭吉にしてみれば、取り立てて魅力的なイベントではない。寧ろ、大学で教鞭を奮う立場にとっては聊か困りものでもあった。校門前には南瓜頭を被った不審者が守衛に呼び止められ、学生証の提示を求められている。ブラスバンド部が骸骨が描かれた全身タイツを着て、ハロウィンにちなんだ映画音楽を演奏し、それに合わせて黒猫の格好をしたチアリーダーがぴょんぴょん跳ねる。ここぞとばかりに菓子を売る生協の職員は魔女で、右を向いても左を向いても仮装をした人間が目立った。まともな格好をしている人間が異界に迷い込んだ心地とはまさにこのような状態を指すだろう。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。リクエストをいただいた「料理描写(できれば諭吉で)」をテーマに、柚子尽の宴を開く二人のお話。美味しいものを目一杯!

    >前作:二人遊び(R18)
    https://poipiku.com/271957/10767042.html

    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    柚子 季節の移ろいを訴えるのは様々で、例えば朝の空気の冷たさや風の香り、鳥や虫の鳴き声、それに葉の色の変化も忘れられない。今年に別れを告げるように一斉に艶やかな着物を纏って賑わせたかと思うとゆっくりと葉を落としてゆく様は、何度目にしても巡り来る年月に胸を震わせられる。別れを告げるのが葉であるならば、彼らの今年を詰め込んだ結果は文字通りその果実だろう。春は桜桃、夏は西瓜、秋は梨、そうして秋が深まって冬に近づいてくると目立つのは、
    「良い香りですね」
    柚子だ。通り一つ向こうから漂う強い香りに鼻をくすぐられ、福沢諭吉は思わず足を止めた。農家が運んできたのだろうか、俄かに市でも立ったかのように風に乗った香りが人々を誘う。実際既に引き込まれた人々の喧騒で、隠し刀の長屋がある方角は随分と賑わっているようだった。まさか彼が?これから遊びに行こうと計画していたこともあり、諭吉は足を早めた。
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    zeppei27

    DONEマーカス、君とはもっといろいろ話ができると思っていたのに!横浜貴賓館関係メンバーでワイワイしたい!マーカスのお悩み相談会に、刀が伊賀七とサトウと取り組む話です。諭吉は最後に登場します。

    >前作:影遊び
    https://poipiku.com/271957/10694953.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    ありふれた椿事 世界は広い。日々の生活に追われていると、目先の環境しか考えられないものだが、その目先をどんどん遠くに伸ばしてゆくとやがては海を出て、そうして別の国にとたどり着くのだから面白い。自分は日本のどこか、ではなく世界のどこか、に暮らしているのだと唐突に思い当たって驚かずにはいられない。隠し刀も、福沢諭吉に出会うまでは自分の住む陸地のことを考えるので精一杯だった。だからこそ、自分の片割れを見つけることができなかったとも言える。
     理屈はすんなりと飲み込めた。さりとて日常生活の中で異国に想いを馳せることはまだまだ少ないのが世情で、時折異国のものを見かけ、異人を目にして、ああ世界は広いと想起される程度のことである。ある意味自分よりも、尊王攘夷を唱える志士たちの方が世界を実感していると言えよう。忌み嫌う人間の方が高い意識を抱いているというのは皮肉な話だった。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福で、単品でも読めます。仕事人間の隠し刀を心配したサトウが、権蔵も交えて競馬を観に行くお話です。馬は良い……諭吉は最後に出てきます。

    >前作:『君は可愛い』
    https://poipiku.com/271957/10561821.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    有意義な休日 あらゆる時間には意味がある。目的があればそれに向かって寸暇を惜しんで努力しなければならないし、生活するためには衣食住を事足りなさせなければならない。他に大切なものができれば、そちらにあらゆるものを惜しみなく注ぐだろう。やるか、やらないかという選択肢はなく、ただやることだけが永遠に続いてゆく。公私の境目などあったものではない。全てが公であり私だった。道具として育てられてきた隠し刀にとって、この『生き方』はごく当たり前のものだが、どうやら世間では少しばかり勝手が違うらしい。
     じりり、じりり、と両腕に力をこめながら薬研を均等に動かす。前へ、後ろへ。無心にこなせる作業なので、慎重を要するとはいえ思考を他に使える点で好ましい。じー、じっ、ざりりという音が長屋に充満するのも時間を刻むようで耳心地が良い。一個できた分を油紙に包んで軽く捻る。材料を補充し、薬研に手をかけたところで道具よりも先にしゃがれ声が割入った。縁側で猫と遊んでいる権蔵だろう。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福で、単品でも読めます。お互いがお互いを可愛いと思う二人の話。時系列の都合で初冬で申し訳ない……!『可愛い』は宇宙のように意味が広い。敢えて使ってなかった分だけ詰め込みました。可愛いよ!

    >前作:『痕』
    https://poipiku.com/271957/10530624.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    君は可愛い 箸が転んでも面白いという年齢があるらしい。確かに若い子女が揃いも揃って他愛もないことに喜び、泣くほどに笑っている風が折々に見受けられる。些細な感情の起伏が激しく、ちょっとしたことでも熱狂してしまうのだろう。故に、微細な世の変化にも敏感で、物の善し悪しが過剰に受け止められるのかもしれなかった。例えば、このようなやり取りはいつどこでも発生しているだろう。
    「可愛い!」
    「あ、本当だ可愛い!ねね、今度りっちゃんとまた来ようよ。きっとこの文箱、好きだと思うんだ」
    「あの子、毬の絵が描いてあるとなんでも好きだよね」
    「そうかも?ふふ、これって西洋の毬かなあ」
    「どうだろう?でも、可愛いから何でもいいかな」
    きゃらきゃらという陽気な笑い声と他愛もない会話を耳の端で捕らえ、隠し刀は会話の中心に目を向けた。どうやら小間物屋が新作の文箱を仕入れたらしい。長屋からも近いのでちょくちょく品揃えを覗くのだが、他の店とは異なり西洋風の柄を取り入れており、野心的で大胆な店だ。横浜でもちょっとした名店となりつつある。
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    zeppei27

    DONE完全単品・読切の主福で、隠し刀の恋愛相談を受けるうちに恋に落ちる諭吉の話です。ワンドロに参加できないから……いつもの二人は時系列が合わなくて……ここにしか打ち上げられないものを書いてみました。ミイラ取りがミイラになる話が好きです。
    雨天決行 ああ、それは恋という奴だ。人のありように一過言ある、悪く言えば斜に構えた福沢諭吉は、流暢に語る男の横顔を呆然と眺めた。勝海舟の屋敷に我が物顔で上がり込み、職務に励む自分を堂々と邪魔する彼こそは、隠し刀。名無しの権兵衛にして風来坊、得体のしれない人でなしである。余りにも傍若無人が堂に入っているため、家主含めて誰も咎めることもない。人の姿をした野良猫のような存在とも言える。
     その猫は長らく悩んでいることがあるらしい。竹で割ったように人と人の情という面倒な綾を断ち切る彼にしては珍しく、さっさと終わらしにしないでダマになるままで今日もうだうだ意味のないことを垂れ流している。
    「その人を見るたびに胸が苦しくなって、話しにくくなるんだよ。本当はたくさん話しかけたいんだ。なのに、どうしてなんだろうね?喋ってもうまい話もできなくて……まあ、諭吉も知っている通り、俺はつまらない男だから、大した話は元々できないんだけれどな」
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福で、単品でも読めます。隠し刀の歯を検診する諭吉のお話。ひょっとすると私の性癖とやらは歯なのでは……?何か別の扉を開きかけたので閉じました。
    >前作:『地獄極楽、紙一重』https://poipiku.com/271957/10506541.html
    >まとめ:https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
     歯は面白い。歯は生まれついてのものだけれども、小さいながらに人それぞれの人生を背負ってきている。例えば歯並びが悪く、まるでぼろぼろの塀のような歯は、当人も親も面倒を見る習慣がなかったことを示唆するだろう。貧しさ、衛生観念、無関心、長じても周囲が指摘しなかったか、あるいは永劫頓着しない性格か。多少の懸念が抱かれる。すり減り具合は癖を見抜く術であるし、本数の多い少ないは歴戦の証だ。清国では年齢を歯数とも呼ぶのももっともだろう。
     さて医学を学んだ立場から、多少歯についても心得がある福沢諭吉にとって、情人である隠し刀の歯はなかなかの上物に思われた。栄養状態がやや危惧されるものの、血で繋がれてきたらしい大きめの歯は揃っているし、右奥がややすり減り気味である点は然程心配するものではない。虫歯はなく、欠けもない。良い状態だ。そして何より気に入っているのは――
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    zeppei27

    DONEなんとなく続きの主福で、単品でも読めます。ちょっと横浜の遠くまで、紅葉狩りデートをする二人のお話です。全く季節外れですが、どうしても書きたかったので!一緒にクエストで出かけたい人生でした……

    >前作(R18)https://poipiku.com/271957/10379583.html
    秋遠からじ 朝の空気が一段と冷えるようになって、香りからも冬の訪れが近いことをひしひしと感じさせる。晩秋も終わりに近づき、あれほど横浜の街を賑わせていた色とりどりの木々は葉を落とし、寒々とした木肌をなす術もなく晒していた。落ち葉をかく人々だけがただ忙しい。そうして掃き清められた道にいずれ冬が訪れ、雪が全てを覆うだろう。貸布団屋に夏布団を返しに行く道すがら、隠し刀は世の移ろいを新鮮な面持ちで眺めて目を見張った。
    「秋が、終わるんだな」
    至極当然の自然の摂理である。これまでも幾度もの春を、夏を、そして秋やこれから来る冬を延々繰り返し眺めていた。季節は人間がどうこうするものでもなく、ただただ流れてゆく川にも似ている。せいぜい農作物やこんな布団の交換の目安くらいでしか見ておらず、花見の楽しみさえ我関せずであった隠し刀だが、横浜で迎える初めての秋は格別に去り難く、また引き止めたい心地にさせていた。
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    zeppei27

    DONE何となく続きの主福で、清い添い寝を終えた朝に二人で湯屋にお出かけするお話です。単独でも読めます!
     好奇心が旺盛な人間は、純粋な気持ちで夢中になっているうちに地雷を踏むことがままあるでしょうが、踏んで爆発する様もまた良い眺めだと思います。

    前作>
    https://poipiku.com/271957/10317103.html
    もみづる色 情人と添い遂げた後の朝とは、一体どんなものだろうか。遥か昔の後朝の文に遡らなくとも、それは特別なひとときに違いない。理性の人である福沢諭吉も同様で、好きになってしまった人と付き合うようになってからというもの、あれやこれやと幾度となく想像を巡らせてきた。寄り添い合うようにして行儀良く寝たまま起きて笑い合うだろうか?それとも、決して隙を見せることのない隠し刀のあどけない寝顔を見ることが叶うだろうか。貪られるのか貪るのか、彼我の境目を失うように溶け合ったとしたらば離れがたく寂しいものかもしれない。
     では現実はどうであったかというと、諭吉は窮屈な体をうんと伸ばしてゆるゆると目を覚ました。はたと瞳を開き、光を捉えた瞬間頭をよぎったのは、すわ寝坊したろうかという不吉な予感だった。味噌汁のふわりとした香りが空きっ腹をくすぐる。見覚えのない部屋だ。己の身を確認すれば、シャツと下穿きだけという半端な格好である。普段は米国で入手した寝巻を身につけているのだが、よそ行きのままということは、ここは出先なのだろう。それにしたって中途半端だ――
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    zeppei27

    DONE何となく続きの主福で、付き合い始めたものの進展せずもだもだする諭吉と、観察者アーネスト・サトウの友情(?)話です。お互いに相手をずるいと思いつつ、つい許してしまうような関係性は微笑ましい。単品でも多分読めるはず!

    前作>
    https://poipiku.com/271957/10313215.html
    帰宅 比翼という鳥は、一羽では飛べない生き物だという。生まれつき、一つの目と一つの翼しか持たず、その片割れとなる相手とぴたりと寄り添って初めて飛べるのだ。無論伝説上の生き物であるのだから現実にはあり得ないものの、対となる相手がいなければどうにも生きることさえ立ち行かないという現象は起こりうる。
     かつての自分であれば鼻で笑ってしまうような想いに、福沢諭吉は今日もむぐむぐと唇を運動させた。ぐっと力を入れていなければ、ついついだらしのない表情を浮かべてしまう。見る人が見れば、自分が誰かを待ちわびていることが手に取るようにわかるに違いない。
     隠し刀と恋をする(そう、自分はけじめをつけたのだ!)ようになって以来、諭吉は一日千秋という言葉の意味を身を以て知った。滅多矢鱈に忙しい相手は、約束なくしては会うことの叶わぬ身である。彼の住まいに誘われたことはあるものの、家主は方々に出掛けてばかりで待ちわびる時間が一層辛くなるだけであった。
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    zeppei27

    DONERONIN主福、前作の何となく続きです。無茶な人助けばかりする隠し刀の姿を見たらば、普通は心配になってしまうのでは?理性的に面倒を避けようとする諭吉の理解を超えた行動なんだろうなあと思うと、ちょっとだけ申し訳なくなります。冷静な人がメチャクチャになってしまう姿は良い。
    前作>
    https://poipiku.com/271957/10302464.html
    名付けたならば まだ熱を持っているような気がする。鏡台の前で髪を整えながら、福沢諭吉は努めて上の空でいようと懸命な努力を続けていた。普段であれば真正面から鏡の中の自分に向き合うところが、今日はどうにも難しい。否、この数日ほどはずっと同じ煩悶を繰り返しては鎮めていた。毎日見てそらで思い出せるような自分の顔など、今更何を感じよう。形ばかりの気合を入れてちら、と鏡を見てう、と思わず呻き声が出た。
    「いつもと同じ、のはずなんですけれどもね」
    どうしてこうも面映さが沸々と胸の中を満たしてゆくものか。ちらりと一瞬見ただけで、自分に向けられた眼差しの熱さまで思い起こされて頬が上気する。数奇な出会いを経た友人かつ一教子に過ぎないはずの隠し刀が、戯れともつかぬ誘いかけで自分の顎に触れた。太く節くれだった指先は戸惑う諭吉の唇をこじ開け――狼藉はそこまでだった。悪戯げな囁きを残して、全ては何事もなかったかのように日常に舞い戻っている。
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    zeppei27

    DONE初RONINで気分のままに、隠し刀(男)×諭吉です。どうして契らせてくれないんだ諭吉ぃ!姫扱いをしてきたのにこの仕打ち、昇華させずにはいられませんでした。服装と言い、恥じらいを見せる様子と言い、居合(史実)まで持ち出してきて胸がいっぱいです。理性的な人が熱くなって激情に身を任せる時の勢いって良いですね……。
    舌足らず 横浜貴賓館は今日も活況を呈していた。国も身分も分け隔てなく、世界に対し門戸を開かんとする人々で溢れ、明日への野望や希望がひしめき合って熱気を孕んでいる。交わされる言葉はほぼ日本語ではなく、目を閉じて仕舞えばここが日本であることをも忘れてしまうような様相である。長らく鎖国を強いてきた国とは思えぬ状態で、十年前の日本人であれば誰もが想像だにしなかっただろう。
     ここに、輝かんばかりの明日が見えようとしている。福沢諭吉もまた、そんな足掛かりを得るべく出入りする人間の一人だった。当初は幕府外国方として公文書を翻訳するためだけであったが、今では出入りする人々に日本語を教えるという小遣い稼ぎもできて一石二鳥である。とりわけアーネスト・サトウは、並々ならぬ熱意を持って学ぼうという姿勢が面白く、彼に教える時間が公務に計算されることも含めて希少な存在だ。本居宣長に興味を持ち、和歌を嗜もうとする英国人など、彼の母国でも滅多におるまい。彼との交流は、諭吉に母国に対する新しい見方を発見させる刺激的な時間だった。
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