Rhea_season
DONE夏の短編。北が暑いという話を聞きて。あいかわらずゆるっとしたディミレト。
ただ会話しているだけ。
氷菓のひととき 今年の夏は、フェルディアといえど、いつになく厳しかった。
高緯度の冷たい地と侮るなかれ。重厚な石造りの城は昼を越える頃には熱を帯び、風の通りにくい内郭では、ひそやかに、しかし確かに蒸すような熱気が滲み出していた。
――そんなある日の午後。
教会での務めを終えたベレトは、静かに息をついてからディミトリの執務室へと足を向けた。
その歩みは急いているようでありながらも、どこか柔らかな余裕も漂わせている。
「……ディミトリ、いるか?」
軽く扉を叩いて開けると、目に入ったのは、書類の山の傍らに、所在なげに座るこの国の王の姿だった。ディミトリは椅子の背にもたれかかり、額に浮かぶ汗も拭おうとせず、ただ黙って、ぼんやりと天井を仰いでいた。
3634高緯度の冷たい地と侮るなかれ。重厚な石造りの城は昼を越える頃には熱を帯び、風の通りにくい内郭では、ひそやかに、しかし確かに蒸すような熱気が滲み出していた。
――そんなある日の午後。
教会での務めを終えたベレトは、静かに息をついてからディミトリの執務室へと足を向けた。
その歩みは急いているようでありながらも、どこか柔らかな余裕も漂わせている。
「……ディミトリ、いるか?」
軽く扉を叩いて開けると、目に入ったのは、書類の山の傍らに、所在なげに座るこの国の王の姿だった。ディミトリは椅子の背にもたれかかり、額に浮かぶ汗も拭おうとせず、ただ黙って、ぼんやりと天井を仰いでいた。
Rhea_season
DONEディミレト短編。なにも致していませんがBLなおはなしとして綴ってますので、苦手なかたはご注意ください。(同じ内容を支部にも載せてます)
或日 扉が軽く叩かれ、低く整った声が届く。
「猊下、そろそろ参りましょうか」
ベレトは小さく瞬きをして、話し相手であるディミトリから視線を外し、扉越しに顔を覗かせたセテスに頷いた。
「ああ、もうそんな時間か」
「ええ、割と時間が押してます」
返された声にはわずかばかり焦りの色が浮かんでいたが、セテスのいつもの律儀さと、それでも最後までこちらの時間を尊重して待ってくれている優しさを感じて、ベレトはわずかに微笑を浮かべた。
楽しい時間ほど、過ぎるのは早い。そんなあたりまえの事実に、胸の奥で名残惜しさが滲む。
「すまない。今日のところはこのあたりで。…また、帰る前に立ち寄るよ。無理のない程度に執務をするんだぞ、ディミトリ」
2319「猊下、そろそろ参りましょうか」
ベレトは小さく瞬きをして、話し相手であるディミトリから視線を外し、扉越しに顔を覗かせたセテスに頷いた。
「ああ、もうそんな時間か」
「ええ、割と時間が押してます」
返された声にはわずかばかり焦りの色が浮かんでいたが、セテスのいつもの律儀さと、それでも最後までこちらの時間を尊重して待ってくれている優しさを感じて、ベレトはわずかに微笑を浮かべた。
楽しい時間ほど、過ぎるのは早い。そんなあたりまえの事実に、胸の奥で名残惜しさが滲む。
「すまない。今日のところはこのあたりで。…また、帰る前に立ち寄るよ。無理のない程度に執務をするんだぞ、ディミトリ」
Rhea_season
DONE暑いですね。という思いだけで書いたただのおはなし。小説メーカーでTwitterに掲載したものと全く同じです。
いつもつたないお話におつきあいいただき、ありがとうございます。
夏至南風 大修道院の貴賓室の窓から、夏の光がそっと差し込んでいた。白いカーテンがかすかに揺れ、東方より取り寄せられたという風鐸がひとつ、涼しげに鳴る。音で涼を感じるなどという感覚を持つという東方の人々を、ディミトリはいつも不思議に思っていた。
「……相変わらず暑いな、こちらは」
入ってくるなり、ディミトリは額の汗を拭いながら言った。
フェルディアを出てから、もう何日か。
その道程の長さと南部の暑さが重なって、旅装の彼はどこかくたびれて見えた。普段はきちんと整えている身なりも、今日は上着の胸元をゆるめ、ため息をひとつ落とす。
ディミトリは、額に滲んだ汗を拭おうともせず、それ以上何も言わずに長椅子に腰を下ろした。
1756「……相変わらず暑いな、こちらは」
入ってくるなり、ディミトリは額の汗を拭いながら言った。
フェルディアを出てから、もう何日か。
その道程の長さと南部の暑さが重なって、旅装の彼はどこかくたびれて見えた。普段はきちんと整えている身なりも、今日は上着の胸元をゆるめ、ため息をひとつ落とす。
ディミトリは、額に滲んだ汗を拭おうともせず、それ以上何も言わずに長椅子に腰を下ろした。
Rhea_season
DONE南の港町を巡察中の国王陛下と大司教猊下のおはなしです。(全年齢)食べ物を食べてのほほんとしているだけのおはなし。
こういうただ、日常をふたりで過ごしているだけの話でも幸せ…
コバルト・プレート 潮風の匂いが、ほのかに鼻をかすめた。
沿岸の町らしい白壁の家並みと、路地裏から覗く多彩な布の影。普段の厳かな巡察とは少し違い、今回の巡察はどこか観光にも似た空気が漂っていた。
海沿いの集会所に急遽設けられた昼食の席には、この地の特産だという魚料理がずらりと並んでいた。蒼に近い青銀、目を惹く赤、そして見たことのない黄色い魚。さらに色鮮やかな野菜が添えられ、多彩なそれらに、ふたりの視線は自然と引き寄せられた。
「……ずいぶんと、鮮やかだな」
小さくつぶやいたディミトリの声に、ベレトはふっと微笑む。
「うん。けれど、すごく美味しそうだ」
ベレトは、はじめこそ、その鮮やかな彩りに目を見張ったが、すぐに用意されたナイフとフォークでひと切れをとると、まるでいつも食べている魚料理のように口に運んだ。
2220沿岸の町らしい白壁の家並みと、路地裏から覗く多彩な布の影。普段の厳かな巡察とは少し違い、今回の巡察はどこか観光にも似た空気が漂っていた。
海沿いの集会所に急遽設けられた昼食の席には、この地の特産だという魚料理がずらりと並んでいた。蒼に近い青銀、目を惹く赤、そして見たことのない黄色い魚。さらに色鮮やかな野菜が添えられ、多彩なそれらに、ふたりの視線は自然と引き寄せられた。
「……ずいぶんと、鮮やかだな」
小さくつぶやいたディミトリの声に、ベレトはふっと微笑む。
「うん。けれど、すごく美味しそうだ」
ベレトは、はじめこそ、その鮮やかな彩りに目を見張ったが、すぐに用意されたナイフとフォークでひと切れをとると、まるでいつも食べている魚料理のように口に運んだ。
こたつ
DONE特典目当てで映画デートに行く保鳴の話恋人/日常/甘め
保:些細なことにも大袈裟に反応する鳴が可愛くてしょうがない
鳴:煽りはムカつくし挑発的な態度を取るけど、遠回しな愛情表現を返すくらいには保に惚れている
煽り合ってる時はストレートに感情を表に出せるのに、愛情表現になると素直になれない保鳴がいます。
【保鳴】シアター8にて「はるのあらし」無期限上映中保科の隣で歯を食いしばりながら歩いていた鳴海が、冬へ逆戻りした街に唾を吐くように悪態をついた。
「こんなクソ寒い日に、どうしてこのボク様がノコノコと外を歩かんとならんのだ」
鳴海は舌打ちをつけ加えながら、不満げな表情をさらに深めた。
久々の外デートだというのに、恋人の機嫌は気圧に振り回されている空模様と同じらしい。
まったく、マイペースで世話が焼ける人だ。
「駐車場からそない距離ないやろ。鳴海さんの用事なんやし、少しの間くらい辛抱しぃ」
「うるさい。オカッパの分際でボクに指図するな」
「おやおや〜? ええんかなぁ、貴重な戦力にそない強気な態度とったりして」
上から目線のセリフに煽り口調で応答すれば、正面を見ていた鳴海の頬がヒクついた。
7442「こんなクソ寒い日に、どうしてこのボク様がノコノコと外を歩かんとならんのだ」
鳴海は舌打ちをつけ加えながら、不満げな表情をさらに深めた。
久々の外デートだというのに、恋人の機嫌は気圧に振り回されている空模様と同じらしい。
まったく、マイペースで世話が焼ける人だ。
「駐車場からそない距離ないやろ。鳴海さんの用事なんやし、少しの間くらい辛抱しぃ」
「うるさい。オカッパの分際でボクに指図するな」
「おやおや〜? ええんかなぁ、貴重な戦力にそない強気な態度とったりして」
上から目線のセリフに煽り口調で応答すれば、正面を見ていた鳴海の頬がヒクついた。
こたつ
DONE「マイペースかつ大胆にチョコを通して愛情表現をする鳴 × うっかりチョコを買ってしまったけど、渡す=大好き宣言になってしまうのでは…と葛藤する保」が各々の距離感でバレンタインしたり、イチャイチャしてる甘めの話・付き合ってから初めてのバレンタインを迎えた鳴保の話
・犬猿の頃の温度感を保ちつつも、仲良し&イチャついてる鳴保がいます
当日には間に合わなかったけど、ハッピーバレンタイン!
【鳴保】チョコレートディスタンスこれまでバレンタインに特別関心を寄せたことはなかった。
毎年ある季節イベントの1つ。せいぜい、チョコに翻弄され乱闘を始める部下たちを眺めては、腹を抱えながら目尻に涙を浮かべるといったお笑いイベントみたいな立ち位置だった。
そう、去年までは。
まさか自分がチョコに振り回される側にまわる日が来るとは思っていなかった。
有明りんかい基地の隊長室を眺めつつ、保科は布団の上で胡坐をかきながら思わず苦笑いをこぼした。
ここが事件現場なら証拠だらけやな。
電源が入ったままのゲーム機本体と、床に放置された別機種のコントローラー。腰高まで積まれたダンボールに占拠された部屋の中心にはシングル布団が敷かれ、掛け布団の上には脱ぎ捨てられていた隊服や部屋着がグシャリと山を作っている。
10644毎年ある季節イベントの1つ。せいぜい、チョコに翻弄され乱闘を始める部下たちを眺めては、腹を抱えながら目尻に涙を浮かべるといったお笑いイベントみたいな立ち位置だった。
そう、去年までは。
まさか自分がチョコに振り回される側にまわる日が来るとは思っていなかった。
有明りんかい基地の隊長室を眺めつつ、保科は布団の上で胡坐をかきながら思わず苦笑いをこぼした。
ここが事件現場なら証拠だらけやな。
電源が入ったままのゲーム機本体と、床に放置された別機種のコントローラー。腰高まで積まれたダンボールに占拠された部屋の中心にはシングル布団が敷かれ、掛け布団の上には脱ぎ捨てられていた隊服や部屋着がグシャリと山を作っている。
こたつ
DONE【保鳴webオンリー展示小説】恋人同士/甘
鳴の誕生日にプロポーズをしたい保。デートの待ち合わせ場所に到着すると、遅刻常習犯の鳴がすでに来ていて――付き合っている保鳴が、他愛ない会話を通して互いへの想いを深めていく話
【保鳴】ラブマチュアリング紙袋はホテルのフロントに預けた。待ち合わせ前にやっとくことはもうないな。
焼肉屋も、写真より雰囲気がええ感じやったな。個室やし、肉のメニューも豊富。『たらふく肉を食わせろ』いうのがリクエストやったからな。あの店なら弦も満足するやろ。
満面の笑みで大喜び――そんなリアクションこそ取らんやろし。そう言うても「まぁまぁだな」とか上から目線の食レポを口にしながらも、目元は満更でもないと緩めとる姿とか簡単に目に浮かぶ。
店選びも準備も万全。ここまでエラーはない。
強いていうなら、今日、万が一怪獣が発生したもんなら、秒速で滅多切りにする自信がある――というたところか。
幸い、今のところは穏やかな午後が続いてる。
時間は……15時か。合流するまで1時間近くあるな。
8973焼肉屋も、写真より雰囲気がええ感じやったな。個室やし、肉のメニューも豊富。『たらふく肉を食わせろ』いうのがリクエストやったからな。あの店なら弦も満足するやろ。
満面の笑みで大喜び――そんなリアクションこそ取らんやろし。そう言うても「まぁまぁだな」とか上から目線の食レポを口にしながらも、目元は満更でもないと緩めとる姿とか簡単に目に浮かぶ。
店選びも準備も万全。ここまでエラーはない。
強いていうなら、今日、万が一怪獣が発生したもんなら、秒速で滅多切りにする自信がある――というたところか。
幸い、今のところは穏やかな午後が続いてる。
時間は……15時か。合流するまで1時間近くあるな。
こたつ
DONE【保鳴webオンリー展示小説】恋人同士/甘
誕生日くらい普段よりもちょっとだけ素直になれる鳴がいるかもしれない……!みたいな糖度高めの保鳴話
ある討伐作戦でオーバーヒートを起こし療養中の鳴。ゲームも没収されヒマを持て余していると、詳細を知らせていないはずの保がやって来て――。
【保鳴】37.6℃のバースデーつまらん約束をした。そう思っていたのも本当だ。だというのに、なぜだかあの日見たアイツの顔が離れない。
「次は鳴海さんの番やな」
やけに嬉しそうな声で、ゆったりと笑った保科の顔が――。
目を覚ませば、療養室は薄暗くなっていた。
飾りのない壁は影に覆われ、出入口を照らすライトだけが淡々と点灯している。
暗いな。夕方、それか一周まわって早朝か……。いや、夜も朝もどうでもいいか。どうせ終わった話だ。不条理なんてガキの頃からの腐れ縁だからな。
別に今さら。なんてことはない。
まぁ、不可抗力とはいえアイツに借りを作っちまったのだけは面白くないが。
体温をたっぷりと吸収した布団を引き寄せ、隙間なく身体と密着させる。身体から排出される二酸化炭素が熱い。
6117「次は鳴海さんの番やな」
やけに嬉しそうな声で、ゆったりと笑った保科の顔が――。
目を覚ませば、療養室は薄暗くなっていた。
飾りのない壁は影に覆われ、出入口を照らすライトだけが淡々と点灯している。
暗いな。夕方、それか一周まわって早朝か……。いや、夜も朝もどうでもいいか。どうせ終わった話だ。不条理なんてガキの頃からの腐れ縁だからな。
別に今さら。なんてことはない。
まぁ、不可抗力とはいえアイツに借りを作っちまったのだけは面白くないが。
体温をたっぷりと吸収した布団を引き寄せ、隙間なく身体と密着させる。身体から排出される二酸化炭素が熱い。
こたつ
PAST【保鳴】付き合って1年オーバーの保鳴が、休みを合わせて某テーマパークでデートする話
犬猿の仲だった頃と変わらないテンションで言葉を交わしているけど、なんだかんだ仲良しな副隊長×隊長がいます。
【保鳴】スプラッシュアワー止めどなく噴き出していた汗もやっと落ち着いてきた。
日陰になっていた縁石へ腰を降ろした保科は、隣に並ぶ鳴海の横顔へチラリと視線を流した。
黒と白の前髪が快適そうに揺れている。
どうやら杞憂だったみたいやな。
恋人にバレないよう、保科は密かに胸を撫で下ろした。
デートも後半戦。真っ青な空に貼りついている白い太陽は、まだ高い。
炎天下の遊歩道では、晴れやかな笑顔が行き交っている。
保科はたっぷりの氷に浸ったレモンウォーターで再び喉を潤し、鳴海へ声を掛けた。
「時短パス使わんで終わるかと思うてたんやけど、持ち直したみたいで安心したわ。いつ、『やってられん。ボクは帰る』て言い出すかてヒヤヒヤしとったんやで」
「ふん、よくそんな見え透いた嘘をつけるもんだな。さっきも土産だとか言って何か買っていただろ」
11108日陰になっていた縁石へ腰を降ろした保科は、隣に並ぶ鳴海の横顔へチラリと視線を流した。
黒と白の前髪が快適そうに揺れている。
どうやら杞憂だったみたいやな。
恋人にバレないよう、保科は密かに胸を撫で下ろした。
デートも後半戦。真っ青な空に貼りついている白い太陽は、まだ高い。
炎天下の遊歩道では、晴れやかな笑顔が行き交っている。
保科はたっぷりの氷に浸ったレモンウォーターで再び喉を潤し、鳴海へ声を掛けた。
「時短パス使わんで終わるかと思うてたんやけど、持ち直したみたいで安心したわ。いつ、『やってられん。ボクは帰る』て言い出すかてヒヤヒヤしとったんやで」
「ふん、よくそんな見え透いた嘘をつけるもんだな。さっきも土産だとか言って何か買っていただろ」
こたつ
PAST【鳴保】「他部隊の隊長、副隊長」という感情以外は持ち合わせていない鳴と保が、共闘を通してお互いの印象を改めていく話
・原作程度の戦闘、流血描写あり
・原作より前の時間軸設定
・原作の距離感で絡み、お互いのことをバチバチに意識し合っている鳴保がいます。からの、無自覚のうちに何かが芽生えそうなもどかしさが漂うハピエン
・115話以前に書いた話になります
【鳴保】Xの最適解そうだ。そもそも、信じる信じない以前の話だ。
鳴海は揺らぎそうになった常識を即座に立て直し、意識を戦闘場面へ引き戻した。保科が指す”隊長”に自分が含まれている訳がない。
「おい! ウチの縄張りで勝手に動くな! 何度言わせるつもりだ!」
眼球に残る灼熱感も、バイタルの乱れも関係ない。
鳴海は叩きつけるように激しく水を蹴り上げ、身勝手極まりない保科を追う。
知ってはいたが、やはりあのオカッパに隠れている耳は飾りだったようだ。
――アイツは、僕が引き受けます。鳴海隊長はそこでゆっくり休憩しとって下さい。
そう言い残し、堂々と隊長命令を無視した保科が怪獣へ切りかかった。
紫の閃光が視界の先で交差する。
地鳴りの比ではない咆哮が地下空間を揺らし、保科の動きが空中で止まった。
33818鳴海は揺らぎそうになった常識を即座に立て直し、意識を戦闘場面へ引き戻した。保科が指す”隊長”に自分が含まれている訳がない。
「おい! ウチの縄張りで勝手に動くな! 何度言わせるつもりだ!」
眼球に残る灼熱感も、バイタルの乱れも関係ない。
鳴海は叩きつけるように激しく水を蹴り上げ、身勝手極まりない保科を追う。
知ってはいたが、やはりあのオカッパに隠れている耳は飾りだったようだ。
――アイツは、僕が引き受けます。鳴海隊長はそこでゆっくり休憩しとって下さい。
そう言い残し、堂々と隊長命令を無視した保科が怪獣へ切りかかった。
紫の閃光が視界の先で交差する。
地鳴りの比ではない咆哮が地下空間を揺らし、保科の動きが空中で止まった。
桜餅ごめ子
DONEべったーにあげたゲームブックもどきカビマホ小説です。https://privatter.net/p/10442099
甘美に腐った果実の秘密■【1】
しとしと、さあさあ。静かな雨音がローアの甲板を介して響く。自然が奏でるメロディをBGMにしながら、ボクはいつものようにアトラクション用のゲームを制作していた。作業に熱中しすぎてすっかり真夜中になってしまったが、さすがにもうそろそろ寝ようかな? キーボードをカタカタと叩きつつ、頭の隅でそんなことを考えていると、不意に新しい通知がメインモニターに表示された。どうやら来客らしい。こんな時間に尋ねてくるなんて、一体誰だ?
▼どうする?
モニターを確認する
ドアを開ける
【続きはプライベッターの作品ページにて】
261しとしと、さあさあ。静かな雨音がローアの甲板を介して響く。自然が奏でるメロディをBGMにしながら、ボクはいつものようにアトラクション用のゲームを制作していた。作業に熱中しすぎてすっかり真夜中になってしまったが、さすがにもうそろそろ寝ようかな? キーボードをカタカタと叩きつつ、頭の隅でそんなことを考えていると、不意に新しい通知がメインモニターに表示された。どうやら来客らしい。こんな時間に尋ねてくるなんて、一体誰だ?
▼どうする?
モニターを確認する
ドアを開ける
【続きはプライベッターの作品ページにて】
桜餅ごめ子
DONE激甘マホカビ AIのべりすとをそこそこ使用。「俗っぽいことに疎いカービィを助けるマホロア」というシチュを見たかった。
カービィ:ピュア度強め。ワンピース着てるけどあくまで性別不明。
マホロア:表面上はスマートかつにこやかだが本当は内心めちゃくちゃ動揺していて、必死に平静を装っている。 8177
oshihamidori
DONE6/3-6/4こいびとは上官につき展示作品でした。樺太道中後半戦、鯉→月ですが、月→鯉なのかは判然としない、そんな微妙な時期の二人を書いております。
ゆるはらす船 今夜の宿は、往路でアシㇼパ達が世話になったという、ウイルタ民族の天幕になった。アウンダウ、という名の冬の家らしい。アシㇼパと白石の顔を見るなりよく無事だったと歓迎してくれて、酒と食事を振る舞ってくれた。更には一晩だけなら、と一張りまるまる天幕を借りられることになった。我々は礼になるような物品を殆ど持っておらず、唯一手土産の体をなしているのは、月島が豊原で仕入れていた煙草の残りくらいだ。
たった二箱の煙草を住民は喜んでくれた。日本の煙草は滅多に手に入らないから、と言う。
この旅が始まってからというもの、あらゆる交渉ごとは月島の担当だ。
月島を見ていると、言語の習得は重要だなと痛感させられる。同じ言語を解するという安心感が相手の警戒心を解き、結果交渉も上手く行くことが多い。私の陸士時代の専攻はドイツ語で、英語もそこそこは学んでいる。しかし実地での経験がないから、現地でどれくらい通用するかは分からない。月島のロシア語の技倆を目の当たりにすると、言葉の問題だけではなくて、自分には不足が多いなと痛感する。それは杉元に対しても谷垣に対しても思う。
6311たった二箱の煙草を住民は喜んでくれた。日本の煙草は滅多に手に入らないから、と言う。
この旅が始まってからというもの、あらゆる交渉ごとは月島の担当だ。
月島を見ていると、言語の習得は重要だなと痛感させられる。同じ言語を解するという安心感が相手の警戒心を解き、結果交渉も上手く行くことが多い。私の陸士時代の専攻はドイツ語で、英語もそこそこは学んでいる。しかし実地での経験がないから、現地でどれくらい通用するかは分からない。月島のロシア語の技倆を目の当たりにすると、言葉の問題だけではなくて、自分には不足が多いなと痛感する。それは杉元に対しても谷垣に対しても思う。
oshihamidori
DONE「よきひと」で書いた菊田課長が個人的にお気に入りなので、続き書きました。誤字脱字誤用、ないとは思いますが文章抜けとかあったら申し訳ないです(ひどい)
・リーマン鯉月同棲中
・菊田さんは二人の上司
・第七師団のメンバーも、名前だけの登場だったりもするけど出てくる
続よきひと前作「よきひと」はhttps://twitter.com/oshihamidori/status/1651568998994313216s=61&t=zoQb2uOrMX9DDUQ7m-6NQg
です。
「あ、いけね。この資料、明日朝イチで宇佐美が使うって言ってたよな」
会社の最寄り駅まであと一駅のところで、ふと思い出した。直帰の夢が儚く消えた。
どうせ家に帰ってもやることはないから支障はないのだが、こう言うのは本当、気分の問題。
イケメン部下の鯉登からすでに同棲している彼女がいると聞かされて、なんでも揃ってるやつは身を固めるのも早いんだなぁ、そういえばスポーツ選手も結婚早いもんなぁなどと勝手なことを考える。フリーだと吹聴してるが、俺だってビビッとくる相手が居たら結婚もありだ。鯉登の彼女、どんな子なんだろう。結婚式に呼ばれたら会えるか。
6728です。
「あ、いけね。この資料、明日朝イチで宇佐美が使うって言ってたよな」
会社の最寄り駅まであと一駅のところで、ふと思い出した。直帰の夢が儚く消えた。
どうせ家に帰ってもやることはないから支障はないのだが、こう言うのは本当、気分の問題。
イケメン部下の鯉登からすでに同棲している彼女がいると聞かされて、なんでも揃ってるやつは身を固めるのも早いんだなぁ、そういえばスポーツ選手も結婚早いもんなぁなどと勝手なことを考える。フリーだと吹聴してるが、俺だってビビッとくる相手が居たら結婚もありだ。鯉登の彼女、どんな子なんだろう。結婚式に呼ばれたら会えるか。
しばた三歳
DONE【知己のひめはじめ】ヒメハジメをテーマに2連作です
① cql忘羨(座学知己・全年齢)←コレ
②原作忘羨(道侶・R18)
cql版はさらっとあっさり、少年時代の知己です😊
※もろもろ捏造、ふわっとお読みください
知己のひめはじめ【知己のひめはじめ】 陳情令・座学/全年齢
(しばた三歳)
「おうい!」
白い校服をたなびかせて、二度見するほど細く伸びやかな肢体が、小鹿のように軽やかに走ってくる。
タタタン、タタタン。階段を駆け降りてくる不思議な足拍子は、姑蘇藍氏の子弟たちからは決して発されない音だ。
「へへっ、ここにいたんだな。蔵書閣にいないから探したぞ」
いったい何がそんなに楽しいのだろう。魏無羨は冷泉の淵に立ち、藍忘機を見下ろしながら、実にご機嫌そうに笑っている。
冷泉に浸かったまま白衣を羽織り、江家一番弟子の笑顔をまぶしげに見上げた藍忘機は――まぶしいのは水面に反射した日差しのせいであり、他に意味はない――不愛想にひとこと「何の用だ」と問うた。すがめた目線は鋭く、まるで妖邪を見据えているようだ。しかし魏無羨は一切頓着せず、
2047(しばた三歳)
「おうい!」
白い校服をたなびかせて、二度見するほど細く伸びやかな肢体が、小鹿のように軽やかに走ってくる。
タタタン、タタタン。階段を駆け降りてくる不思議な足拍子は、姑蘇藍氏の子弟たちからは決して発されない音だ。
「へへっ、ここにいたんだな。蔵書閣にいないから探したぞ」
いったい何がそんなに楽しいのだろう。魏無羨は冷泉の淵に立ち、藍忘機を見下ろしながら、実にご機嫌そうに笑っている。
冷泉に浸かったまま白衣を羽織り、江家一番弟子の笑顔をまぶしげに見上げた藍忘機は――まぶしいのは水面に反射した日差しのせいであり、他に意味はない――不愛想にひとこと「何の用だ」と問うた。すがめた目線は鋭く、まるで妖邪を見据えているようだ。しかし魏無羨は一切頓着せず、
largesleepyhead
DONE2022.11.29:WEBオンリー終了につきパスワード解除大遅刻の寂左寂、なんとかできました。
付き合ってないエロなし全年齢ですが、自分としては少しラブコメっぽい、微糖な感じを目指した…つもりです。
銃兎さんと理鶯さんが最後のほうでちょこっと出てきます。シンジュク市民のモブも出てきます。
拙い文章ですが、お楽しみ頂ければ何よりです。
オンリー主催のいわい様、ありがとうございました!
どうしたもんか、エリック・サティ「しっかしあんた、マジで納豆好きなんだなァ……」
エスカレーターの上で、碧棺左馬刻は後ろに立つ神宮寺寂雷に問うともなく呟いた。
「スープカレーまで納豆入りとか、ちょっとビビったぜ」
晩秋の昼下り。
所用で寂雷の元を訪れた左馬刻は、寂雷の誘いで、とある西新宿の高層ビルの地下の食堂街で昼食を摂ったのだった。
「ふふ、悪くはなかったでしょう?」
「……まあ、そうだけどよ」
返す言葉に我ながら切れがない自覚がある。
「つぅか味見っつっても、"あーん"はねぇだろがよ、"あーん"はよ……」
つい30分ほど前のことだ。
自分が注文した「骨付き地鶏と牛すじのスープカレー」が届くまでの間、自分ならまず頼まないであろう「北海道産丸大豆の納豆と有機ホウレン草のスープカレー、玄米ごはん変更」なんてものを喜々と口に運ぶ寂雷を、ついしげしげと見つめていた。
5505エスカレーターの上で、碧棺左馬刻は後ろに立つ神宮寺寂雷に問うともなく呟いた。
「スープカレーまで納豆入りとか、ちょっとビビったぜ」
晩秋の昼下り。
所用で寂雷の元を訪れた左馬刻は、寂雷の誘いで、とある西新宿の高層ビルの地下の食堂街で昼食を摂ったのだった。
「ふふ、悪くはなかったでしょう?」
「……まあ、そうだけどよ」
返す言葉に我ながら切れがない自覚がある。
「つぅか味見っつっても、"あーん"はねぇだろがよ、"あーん"はよ……」
つい30分ほど前のことだ。
自分が注文した「骨付き地鶏と牛すじのスープカレー」が届くまでの間、自分ならまず頼まないであろう「北海道産丸大豆の納豆と有機ホウレン草のスープカレー、玄米ごはん変更」なんてものを喜々と口に運ぶ寂雷を、ついしげしげと見つめていた。
リオネス
INFO2022年7月から同人イベントに初参戦する子たちに捧げます。時々言葉が乱暴だが、短くわかりやすいものにするため言葉を選んでいないです。
(追記:記載し忘れていたが、年齢制限があるものには免許書など生年月日がわかるものを提示する必要があるのでそれも忘れんようにな) 4
miho3
DONE愛恋奇譚2開催お目出とう御座います。残り少ない時間なのでpw解除しました。どなた様でもご覧になれます。この作品も皆様のお好みに合えば幸いです※この作品は稚作27作品目「Letter of the 6th day」のスピンオフです。ご興味がおありの方はリンク先作品からお先にどうぞ。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15888559 10298
dyan1329
MEMO・診断で出たぬすじにオムライスを作ってあげている蘭丸です!(内緒の夜食)・その後に、結局嶺二とぬすまるに見つかってしまう蘭丸です(約束)
(ぬスじが寝る前に蘭丸の作ったオムライスを食べていいか聞いたところ、蘭丸の許可が出ました。
#shindanmaker
https://t.co/drOUiXv6sR) 3
oz_on_e
MEMO浮世の錠フレーバーに関連する月海亭秘書さんの半回想モノローグ。恋にもなりきれない思慕。セリフらしいセリフもありません。雰囲気で読んでください。※以前にTwitter連投したものの微調整になります。独白かつてより、その姿は余りに目にする機会が多かったものだから──天神像ですら"其れ"を模すものとなっている。石錠を眺め、諦めることなく解析を試みようとするあの方の肖像。”忘れていいのだと言われたのだがな”と、あの方は昔呟くと、自嘲の様に笑ったことを覚えている。
私の記憶の始まりでは、まだその姿を見ることはなく……あの方は敵だらけの大陸で弱く脆い人々の守護者として、恐るべき力を震い続けた。それこそがあの時代に求められた神の強さだったけれど、山岳の奥で静かに暮らしていた幼い私は畏怖を抱いてしまい、訪れる彼に自ら声を掛けることなど、しばらく出来なかった。
留雲真君の足もとに隠れ、震えている私を困った顔で見下ろすあの方の姿を忘れられない。──今のように、何気ない言葉を口に微笑み頭を撫でてくれるような所作はあの頃には身に付けておられなかった。勿論、終わりの見えない戦いに身を投じ槍を握るあの時期に、穏やかさを得る余裕などなかったはず。
982私の記憶の始まりでは、まだその姿を見ることはなく……あの方は敵だらけの大陸で弱く脆い人々の守護者として、恐るべき力を震い続けた。それこそがあの時代に求められた神の強さだったけれど、山岳の奥で静かに暮らしていた幼い私は畏怖を抱いてしまい、訪れる彼に自ら声を掛けることなど、しばらく出来なかった。
留雲真君の足もとに隠れ、震えている私を困った顔で見下ろすあの方の姿を忘れられない。──今のように、何気ない言葉を口に微笑み頭を撫でてくれるような所作はあの頃には身に付けておられなかった。勿論、終わりの見えない戦いに身を投じ槍を握るあの時期に、穏やかさを得る余裕などなかったはず。
あまぐり
DONE毛皮を纏った宝石/オトラン(BoF)全年齢。やや狂気。設定はれおさんにお借りしました。エルフがビーストを動物として解釈し、狩りの対象としている世界です。
掛け算になっていないかもしれない。 6