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DOODLE冬至の柚子湯の話です。ほかほか。冬至の晩に柚子が三つ、湯に浮かんでいる。
TETSUは湯の中で黄色い柚子が揺れるのを眺めていた。
冬至だからと柚子を用意したのは譲介だ。TETSUが入る前に慌ててやってきて、元気よく湯船に投げ込んでいった。
「マメなやつだ……」
譲介が季節の行事に積極的なのは意外なことだとTETSUは思った。TETSUの知らないところで、暦を調べて準備をしている。楽しそうで良いことだ。
TETSUはこういうことに関して無頓着なほうだった。TETSU自身の年中行事といえば年に一度、クリスマスプレゼントを施設へ届けるぐらいである。
そんなわけで、TETSUが冬至の晩に柚子湯へ入るのは相当に久しぶりのことだった。
三つの柚子がTETSUの目の前で、それぞれ別の方向へ漂っていく。湯気にほのかな香りが混ざる。TETSUは湯の中で軽く伸びをして、息をつく。こんなにゆったりした冬の晩はいつ以来だろうか。
1339TETSUは湯の中で黄色い柚子が揺れるのを眺めていた。
冬至だからと柚子を用意したのは譲介だ。TETSUが入る前に慌ててやってきて、元気よく湯船に投げ込んでいった。
「マメなやつだ……」
譲介が季節の行事に積極的なのは意外なことだとTETSUは思った。TETSUの知らないところで、暦を調べて準備をしている。楽しそうで良いことだ。
TETSUはこういうことに関して無頓着なほうだった。TETSU自身の年中行事といえば年に一度、クリスマスプレゼントを施設へ届けるぐらいである。
そんなわけで、TETSUが冬至の晩に柚子湯へ入るのは相当に久しぶりのことだった。
三つの柚子がTETSUの目の前で、それぞれ別の方向へ漂っていく。湯気にほのかな香りが混ざる。TETSUは湯の中で軽く伸びをして、息をつく。こんなにゆったりした冬の晩はいつ以来だろうか。
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TRAINING黒猫の相棒ちゃんの話です。あのほら…サイン会行ってらしたかたの話で…ドクターの相棒 ソファの上、黒猫がドクターTETSUの膝に飛び乗る。
「どうした相棒?」
この黒猫を、ドクターTETSUは相棒とよぶ。あるいは単に『おい』と。譲介は黒猫が名前で呼ばれているのを聞いたことがない。
「そいつ、名前何です?」
「名前?」
譲介がドクターTETSUに訊ねると、ドクターTETSUは話が飲み込めないようだった。
「……つけて無ェなあ、そういえば」
「無いんですか」
「今から考えるか」
「でも、こいつ、もう自分の名前のこと『相棒』だと思ってますよ。たぶん」
黒猫はドクターTETSUの膝の上で機嫌よく目を閉じている。譲介は艶やかな黒い背に呼びかける。
「あいぼう」
黒猫は知らんぷり。
「おい、あいぼう」
やっぱり、知らんぷり。
544「どうした相棒?」
この黒猫を、ドクターTETSUは相棒とよぶ。あるいは単に『おい』と。譲介は黒猫が名前で呼ばれているのを聞いたことがない。
「そいつ、名前何です?」
「名前?」
譲介がドクターTETSUに訊ねると、ドクターTETSUは話が飲み込めないようだった。
「……つけて無ェなあ、そういえば」
「無いんですか」
「今から考えるか」
「でも、こいつ、もう自分の名前のこと『相棒』だと思ってますよ。たぶん」
黒猫はドクターTETSUの膝の上で機嫌よく目を閉じている。譲介は艶やかな黒い背に呼びかける。
「あいぼう」
黒猫は知らんぷり。
「おい、あいぼう」
やっぱり、知らんぷり。
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DOODLE部活動タグを見たので書きました。もっといろんな部活動が乱立するといいと思います。ラムちゃんネタはどこまで許されるんでしょうかね。
#ドクターTETSU虎ビキニ部
ドクターTETSU虎ビキニ部 80年代オタクのファム・ファタール。そこに込められていた物語は失われ、虎ビキニというミームだけが残った。還暦過ぎた男のボディの上に。
「ラムちゃんはブーメランパンツ履かねえんだよ」
「そこは僕の趣味です」
ソファに座るテツの困惑と羞恥の抗議をよそに、譲介は腕を組んで満足げに頷いている。
胸と腰をわずかに覆った虎柄の生地が心もとない。オリジナルより布面積の乏しい虎ビキニの間で、テツの割れた腹筋が少しひくついた。ポートを埋め込んだ古傷が疼く。
「そもそもお前ェ世代じゃねえだろ、どういうチョイスなんだよ」
元ネタは軟派な男とやきもち焼きの女のコメディだ。男を一途に追いかける女の姿はむしろ目の前の青年に似ているとテツは思う。
677「ラムちゃんはブーメランパンツ履かねえんだよ」
「そこは僕の趣味です」
ソファに座るテツの困惑と羞恥の抗議をよそに、譲介は腕を組んで満足げに頷いている。
胸と腰をわずかに覆った虎柄の生地が心もとない。オリジナルより布面積の乏しい虎ビキニの間で、テツの割れた腹筋が少しひくついた。ポートを埋め込んだ古傷が疼く。
「そもそもお前ェ世代じゃねえだろ、どういうチョイスなんだよ」
元ネタは軟派な男とやきもち焼きの女のコメディだ。男を一途に追いかける女の姿はむしろ目の前の青年に似ているとテツは思う。
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DOODLE譲介くんの盛装のお花が元ネタです。#僕のスイートピーちゃん部僕のスイートピーちゃん部 ベッドサイドのテーブルに、花を生けた。
薄紫の花弁がフリルのように柔らかくカールして、すっと延びた茎の左右についているさまは、ふわふわと蝶が舞うかのよう。
徹郎さんはベッドの中から花を見ている。
「スイートピーか」
「大通りの花屋さんで売ってたので」
「好きなのか?」
「ええ」
僕はベッドのふちに座って答えた。
花言葉を知ってから、僕はこの花が好きになった。もうずいぶん遠くなった、N県での二人暮らしと突然の『別れ』。そのあとのT村での暮らし。クエイドへの『門出』。スイートピーの花言葉は、僕にいろんなことを思い起こさせる。『やさしい思い出』として。
「可愛い花でしょ?」
徹郎さんは、フムン、と曖昧な返事をする。『やさしい思い出』のいちばん最初にいるひと、長きにわたり『私を忘れないで』いてくれたひとは、わかってなさそうな顔で花を見ている。
753薄紫の花弁がフリルのように柔らかくカールして、すっと延びた茎の左右についているさまは、ふわふわと蝶が舞うかのよう。
徹郎さんはベッドの中から花を見ている。
「スイートピーか」
「大通りの花屋さんで売ってたので」
「好きなのか?」
「ええ」
僕はベッドのふちに座って答えた。
花言葉を知ってから、僕はこの花が好きになった。もうずいぶん遠くなった、N県での二人暮らしと突然の『別れ』。そのあとのT村での暮らし。クエイドへの『門出』。スイートピーの花言葉は、僕にいろんなことを思い起こさせる。『やさしい思い出』として。
「可愛い花でしょ?」
徹郎さんは、フムン、と曖昧な返事をする。『やさしい思い出』のいちばん最初にいるひと、長きにわたり『私を忘れないで』いてくれたひとは、わかってなさそうな顔で花を見ている。
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REHABILIひさびさの更新。相棒ちゃんで遊ぶ譲テツ。黒猫を宅配「お届け物でーす」
ソファでくつろぐTETSUの膝に、ずしりと箱が乗せられた。箱の中を満たす黒い物体が小さく動き、二つの金色の目がTETSUを見る。TETSUの相棒である黒猫が、箱にみっしりと詰まっていた。
「へえ、こいつぁ良いもんだ。どこからだ?」
TETSUは箱を持ってきた譲介を見上げる。
「差出人は不明ですねえ」
譲介は機嫌よく答えてTETSUの隣に座る。
これは譲介とTETSUの間で最近流行っているちょっとした遊びである。箱に入った相棒を譲介が箱ごと持ち上げて、TETSUのところに持ってくる、それだけ。
譲介はニコニコしながら、TETSUが相棒の狭い額や下顎の毛を指先で掻くのを眺めている。
「なんだよ」
649ソファでくつろぐTETSUの膝に、ずしりと箱が乗せられた。箱の中を満たす黒い物体が小さく動き、二つの金色の目がTETSUを見る。TETSUの相棒である黒猫が、箱にみっしりと詰まっていた。
「へえ、こいつぁ良いもんだ。どこからだ?」
TETSUは箱を持ってきた譲介を見上げる。
「差出人は不明ですねえ」
譲介は機嫌よく答えてTETSUの隣に座る。
これは譲介とTETSUの間で最近流行っているちょっとした遊びである。箱に入った相棒を譲介が箱ごと持ち上げて、TETSUのところに持ってくる、それだけ。
譲介はニコニコしながら、TETSUが相棒の狭い額や下顎の毛を指先で掻くのを眺めている。
「なんだよ」
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TRAININGジャンケンで決める譲テツ。あとで直すかも。ちょっと待て、とドクターは言った ちょっと待て、とオレは言った。
「どうしました?」
譲介はいまソファでオレの隣に座ってにじり寄り、オレのベルトに手を掛けるところだ。オレはその手を掴んで制止した。
「まあ……お前ェ若いからな、カラダも込みの関係がいいんだろうな、ってのは、わかるぜ?」
「嫌ですか?」
譲介はしゅん、と眉を下げる。こういう顔されると、弱いな……。
「ああいや、オレだってお前ェが嫌なわけじゃねえ。だがな、こんな年寄りひん剥いて楽しいわけねえだろ」
「恥ずかしいんですか」
「そういうわけじゃ……」
若い譲介と比べれば確実に見劣りするだろうこの身体。譲介の前に晒すのは確かに気後れするものだ。そこは否定できない。だが肯定もしたくない。
1910「どうしました?」
譲介はいまソファでオレの隣に座ってにじり寄り、オレのベルトに手を掛けるところだ。オレはその手を掴んで制止した。
「まあ……お前ェ若いからな、カラダも込みの関係がいいんだろうな、ってのは、わかるぜ?」
「嫌ですか?」
譲介はしゅん、と眉を下げる。こういう顔されると、弱いな……。
「ああいや、オレだってお前ェが嫌なわけじゃねえ。だがな、こんな年寄りひん剥いて楽しいわけねえだろ」
「恥ずかしいんですか」
「そういうわけじゃ……」
若い譲介と比べれば確実に見劣りするだろうこの身体。譲介の前に晒すのは確かに気後れするものだ。そこは否定できない。だが肯定もしたくない。
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DOODLE久しぶりの部活動タグ。#ドクターTETSUミニスカポリス部 ミニスカポリスむずかしかったです。ドクターTETSUミニスカポリス部 求められれば取りあえず着る。TETSUもそれくらいには譲介にあれこれ許している。だが。
「よくこんなの用意してきたな……」
今回のオーダーはエナメル素材の青い帽子とジャケット、タイトミニ。胸には大きなワッペン。ジャケットの下は白いブラウス。アメリカンポリス風の、婦人警官の衣装だ。揃いの色のパンプスまで用意されている。
譲介はTETSUの前で仁王立ちして、腕を組んで頷いている。
「この……タイトなシルエットというか、グラマラス感というか、筋肉の詰まった感じが強調されるのがとても良いです」
「詰まってるどころかケツが裾からはみだしそうなんだよこのスカート」
それを聞いた譲介はTETSUの背後に回ろうとする。
1097「よくこんなの用意してきたな……」
今回のオーダーはエナメル素材の青い帽子とジャケット、タイトミニ。胸には大きなワッペン。ジャケットの下は白いブラウス。アメリカンポリス風の、婦人警官の衣装だ。揃いの色のパンプスまで用意されている。
譲介はTETSUの前で仁王立ちして、腕を組んで頷いている。
「この……タイトなシルエットというか、グラマラス感というか、筋肉の詰まった感じが強調されるのがとても良いです」
「詰まってるどころかケツが裾からはみだしそうなんだよこのスカート」
それを聞いた譲介はTETSUの背後に回ろうとする。
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DOODLE今回の部活タグ遊びはエロくはないですがラブラブ感はあると思います あったらいいなあ あるって言って #ドクターTETSU校則違反ミニスカセーラー部ドクターTETSU校則違反ミニスカセーラー部「毎度毎度、どっから用立ててくるんだこんなもん」
しかも還暦過ぎたジジイに着せるためときた。譲介は時々、その知性と努力をおかしなベクトルに発揮することがある。今回はセーラー服だ。
丈を詰めて腹が見えそうなセーラー服に、これまた短いプリーツスカート。どんな自由な校風の学校でも生徒指導の教員をキレさせること請け合いだ。素行の悪そうな服装に合わせたわけではないが、オレはお行儀悪く椅子を横に向けて座り、背もたれに片肘を載せた。譲介はオレに合わせるように、向かい合って床に座った。
「お前ェ、セーラー服に憧れも思い出も無ぇだろ」
こういうプレイはこういうものに何かしら良い印象を持っているやつがやるものだ。譲介が泉平高校に転入する前に通っていた学校の女子制服は、セーラーだったかブレザーだったか。もう忘れてしまった。当時のオレたちにとっては通過点にすぎなかったのだ。
1199しかも還暦過ぎたジジイに着せるためときた。譲介は時々、その知性と努力をおかしなベクトルに発揮することがある。今回はセーラー服だ。
丈を詰めて腹が見えそうなセーラー服に、これまた短いプリーツスカート。どんな自由な校風の学校でも生徒指導の教員をキレさせること請け合いだ。素行の悪そうな服装に合わせたわけではないが、オレはお行儀悪く椅子を横に向けて座り、背もたれに片肘を載せた。譲介はオレに合わせるように、向かい合って床に座った。
「お前ェ、セーラー服に憧れも思い出も無ぇだろ」
こういうプレイはこういうものに何かしら良い印象を持っているやつがやるものだ。譲介が泉平高校に転入する前に通っていた学校の女子制服は、セーラーだったかブレザーだったか。もう忘れてしまった。当時のオレたちにとっては通過点にすぎなかったのだ。
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TRAININGバレンタインに間に合わなかったやつ。ホワイトデーまではバレンタインなんだよ!チョコレート・ムースの話 譲介がコーヒーを淹れていると、すぐ横に深皿がふたつ置かれた。深皿の中はチョコレート色のもので充たされている。
譲介がドリッパーから顔を上げると、TETSUがスプーンをふたつ持ってきて、深皿の横に置いた。
「コーヒーのお供ですか?」
「そんなところだ」
コーヒーを二杯淹れたところでめいめいがテーブルにつく。譲介はさっそく深皿にスプーンを入れた。褐色のムースを口に含むと、きめ細かい気泡が舌の上で柔らかく溶けていく。甘いチョコレートの味が消えるころに一瞬浮かび上がる、カカオとは違う香り。何だろう。
「おいしい!」
譲介が声をあげるとTETSUは満足げな顔でコーヒーを啜った。
「お菓子作り、出来たんですね」
「いや、これだけだ。他はやったことねえ」
1336譲介がドリッパーから顔を上げると、TETSUがスプーンをふたつ持ってきて、深皿の横に置いた。
「コーヒーのお供ですか?」
「そんなところだ」
コーヒーを二杯淹れたところでめいめいがテーブルにつく。譲介はさっそく深皿にスプーンを入れた。褐色のムースを口に含むと、きめ細かい気泡が舌の上で柔らかく溶けていく。甘いチョコレートの味が消えるころに一瞬浮かび上がる、カカオとは違う香り。何だろう。
「おいしい!」
譲介が声をあげるとTETSUは満足げな顔でコーヒーを啜った。
「お菓子作り、出来たんですね」
「いや、これだけだ。他はやったことねえ」
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DOODLE家庭教師?秘密の補講?なんかそういう…?受動のエッチ…? #ドクターTETSU家庭教師部ドクターTETSU家庭教師部「お、終わった……」
僕は床に座ったまま、リビングのローテーブルにペンを放り出した。背中をソファの座面に預けて息をつく。なにが「お遊びだ、気楽にやりな」だ。試験時間二十分、ぎりぎりじゃないか。
事の発端は、僕がふざけて徹郎さんに女教師もののコスプレを依頼したことにある。徹郎さんは意外にもすんなりと応じた。
「疑問はあるが折角のリクエストだ。やるならがっつりやってやるぜ」
リクエストに応じた徹郎さんは縁の細いメガネ、ブラウスとタイトスカートに指示棒まで装備して僕の前に現れた。そして出してきたのが薬学の小テスト。その内容は実にがっつりとしたもので。
いま、徹郎さんはローテーブルの向かいで僕の答案を採点している。銀縁が囲む伏した目元に色気を感じる。ブラウスのボタンが上から三つ、外してあるのが気になる。うつむいて下がった髪のむこうで、ゆるく開いた胸元がとてもとても気になる。
1331僕は床に座ったまま、リビングのローテーブルにペンを放り出した。背中をソファの座面に預けて息をつく。なにが「お遊びだ、気楽にやりな」だ。試験時間二十分、ぎりぎりじゃないか。
事の発端は、僕がふざけて徹郎さんに女教師もののコスプレを依頼したことにある。徹郎さんは意外にもすんなりと応じた。
「疑問はあるが折角のリクエストだ。やるならがっつりやってやるぜ」
リクエストに応じた徹郎さんは縁の細いメガネ、ブラウスとタイトスカートに指示棒まで装備して僕の前に現れた。そして出してきたのが薬学の小テスト。その内容は実にがっつりとしたもので。
いま、徹郎さんはローテーブルの向かいで僕の答案を採点している。銀縁が囲む伏した目元に色気を感じる。ブラウスのボタンが上から三つ、外してあるのが気になる。うつむいて下がった髪のむこうで、ゆるく開いた胸元がとてもとても気になる。
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TRAINING何もかも遅かった感じの譲テツ。冬の終わりの最後の嵐 この腕に点滴の針を刺すたびに、僕はあの頃を思いだす。
「針を通して僕の精神状態が判るって、言ってましたっけ。どうです? いまの僕は」
「よく覚えてるな」
ドクターは笑ったきり答えなかった。僕はあの頃より細くなった腕に点滴のチューブを固定する。
窓の外では降る雪が冬の嵐に渦巻いて、向かいのビルの姿さえも隠している。気密の良い窓ガラス越しに見る景色には風の音も冷たさもない。白いカーテンが激しく揺れているかのようだ。
「荒れてるな、外」
妙に現実味のない景色を見てドクターが言う。ドクターは杖を長いソファに立て掛け、身体を沈めるように深く腰掛けて窓の外を見ている。
「天気予報では、明日の朝には止むと言ってましたよ。気温も少しずつ上がっていくそうです」
2274「針を通して僕の精神状態が判るって、言ってましたっけ。どうです? いまの僕は」
「よく覚えてるな」
ドクターは笑ったきり答えなかった。僕はあの頃より細くなった腕に点滴のチューブを固定する。
窓の外では降る雪が冬の嵐に渦巻いて、向かいのビルの姿さえも隠している。気密の良い窓ガラス越しに見る景色には風の音も冷たさもない。白いカーテンが激しく揺れているかのようだ。
「荒れてるな、外」
妙に現実味のない景色を見てドクターが言う。ドクターは杖を長いソファに立て掛け、身体を沈めるように深く腰掛けて窓の外を見ている。
「天気予報では、明日の朝には止むと言ってましたよ。気温も少しずつ上がっていくそうです」
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DOODLE人妻ものと裸エプロンものの違いが判ってない内容になってしまったのでリテイクしたほうがいいかもしれないでもせっかく書いたから載せとこう
#ドクターテツ人妻部
ドクターテツ人妻部「恥じらいっていいもんですねえ、徹郎さん」
譲介は顎に手を当て、オレのことをしげしげと眺めている。
「なんて言ったらいいか。新妻感?」
「新妻感」
オレも裏稼業を長いこと続けてきて、道理の通らねェ事態にもそこそこ遭ってきたが――この歳で新妻と呼ばれるとは思わなかった。
オレはいまエプロン一枚でキッチンにいる。
風呂場以外の場所に下着も着けずにいるのはとても居心地が悪い。エプロン一枚が胴体の前面を覆ってはいる。だが胸も腰も布幅の頼りねェこと。迂闊に動いたら多分はみ出る。このぎりぎり加減は全裸よりよっぽど問題があると思う。
そんなわけで、シンクを背にして立ったオレはささやかな抵抗とばかりに、エプロンの裾を引っ張っている。
1131譲介は顎に手を当て、オレのことをしげしげと眺めている。
「なんて言ったらいいか。新妻感?」
「新妻感」
オレも裏稼業を長いこと続けてきて、道理の通らねェ事態にもそこそこ遭ってきたが――この歳で新妻と呼ばれるとは思わなかった。
オレはいまエプロン一枚でキッチンにいる。
風呂場以外の場所に下着も着けずにいるのはとても居心地が悪い。エプロン一枚が胴体の前面を覆ってはいる。だが胸も腰も布幅の頼りねェこと。迂闊に動いたら多分はみ出る。このぎりぎり加減は全裸よりよっぽど問題があると思う。
そんなわけで、シンクを背にして立ったオレはささやかな抵抗とばかりに、エプロンの裾を引っ張っている。
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DOODLE部活タグを見てしまったので書いた…これ書くのに検索でフレーメン画像いっぱい見た…#ドクターTETSUラブリーキャットフレーメン反応部
ドクターTETSUラブリーキャットフレーメン反応部 ドクターTETSUが住み処に戻ると、玄関の上がり口に黒猫が待っていた。
「おう。大人しくしてたか相棒」
ブーツを脱いで、ドクターTETSUは黒猫に声を掛ける。黒猫は抱き上げようとする手のあいだをぬるりと抜けて、ドクターTETSUのブーツに歩み寄った。
「あッお前ェまた!」
黒猫は一度ブーツに顔を突っ込むと、顔を上げて口を半開きにし、目を見開いた。ドクターTETSUがいくら止めても、この黒猫は脱ぎたてブーツの中を嗅いではこの顔をする。
ショックを受けているような、独特の顔。この顔は猫の生理現象であって、けして黒猫がブーツのにおいに精神的ダメージを受けているわけではない、はずだ。
放っておくと前脚でブーツを抱えてさらに嗅ぎに行くので、ブーツを脱いだらまずは黒猫をブーツから引き剥がすのが、ドクターTETSUの帰宅ルーティーンだ。
832「おう。大人しくしてたか相棒」
ブーツを脱いで、ドクターTETSUは黒猫に声を掛ける。黒猫は抱き上げようとする手のあいだをぬるりと抜けて、ドクターTETSUのブーツに歩み寄った。
「あッお前ェまた!」
黒猫は一度ブーツに顔を突っ込むと、顔を上げて口を半開きにし、目を見開いた。ドクターTETSUがいくら止めても、この黒猫は脱ぎたてブーツの中を嗅いではこの顔をする。
ショックを受けているような、独特の顔。この顔は猫の生理現象であって、けして黒猫がブーツのにおいに精神的ダメージを受けているわけではない、はずだ。
放っておくと前脚でブーツを抱えてさらに嗅ぎに行くので、ブーツを脱いだらまずは黒猫をブーツから引き剥がすのが、ドクターTETSUの帰宅ルーティーンだ。
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DOODLEドレスじゃないけどチャイナなので許してつかあさい。譲テツ謎時空。#ドクターTETSUドラゴンチャイナドレス部
ドクターTETSUドラゴンチャイナドレス部 ドクターTETSUはスマートフォンを掲げた。シャッター音。リビングの壁際に立っていろんな角度から自分の姿を撮影すると、今度はその場で写真を確認し始めた。
譲介はリビングから続くキッチンでコーヒーを淹れながら、その様子を怪訝な顔で見ている。突然自撮りを始める同居人もかなり不審だが、何より気になるのはその服装である。
今のドクターTETSUの装いは中華風だ。スタンドカラーの上衣は深みのある赤色で、膝下までの丈の長いもの。白のゆったりしたズボンを合わせている。上衣の前面では、精緻に刺繍された龍が巻き付くようにうねって、天に昇ろうとしている。
派手な衣装を着た姿には存在感があった。自撮りなどしてないでいつもの通りに振る舞っていれば、悪の親玉のような威厳さえ感じられたことだろう。
1524譲介はリビングから続くキッチンでコーヒーを淹れながら、その様子を怪訝な顔で見ている。突然自撮りを始める同居人もかなり不審だが、何より気になるのはその服装である。
今のドクターTETSUの装いは中華風だ。スタンドカラーの上衣は深みのある赤色で、膝下までの丈の長いもの。白のゆったりしたズボンを合わせている。上衣の前面では、精緻に刺繍された龍が巻き付くようにうねって、天に昇ろうとしている。
派手な衣装を着た姿には存在感があった。自撮りなどしてないでいつもの通りに振る舞っていれば、悪の親玉のような威厳さえ感じられたことだろう。
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DOODLE遅刻? ミニスカサンタ部は松の内までやっていいんだよ!(ロシアのクリスマスは1月7日だから)#譲テツミニスカサンタ部
譲テツミニスカサンタ部 譲介は天井を仰いでガッツポーズをした。
自身を取り巻く様々な縁と偶然の糸が縒り合わされた人生という組紐。その先端に今この瞬間がある、そのことに感謝した。クリスマスイブの夜のことである。
「お前ェにこういう趣味があったとはなァ」
TETSUからの呆れ気味の視線すら心地よい。愛する人のミニスカサンタ姿を見る譲介の返事は決まっている。
* * *
クリスマスになんか欲しいモンあるか? 譲介がTETSUに尋ねられたのは、アドベント期間が始まったばかりのある日のこと。
「欲しいものはありませんが、して欲しいことは……無くもない、です、けど……」
「なんだ遠慮か? 言うだけ言ってみろ」
「ええと……その。なにか楽しい思い出を、といいますか」
1510自身を取り巻く様々な縁と偶然の糸が縒り合わされた人生という組紐。その先端に今この瞬間がある、そのことに感謝した。クリスマスイブの夜のことである。
「お前ェにこういう趣味があったとはなァ」
TETSUからの呆れ気味の視線すら心地よい。愛する人のミニスカサンタ姿を見る譲介の返事は決まっている。
* * *
クリスマスになんか欲しいモンあるか? 譲介がTETSUに尋ねられたのは、アドベント期間が始まったばかりのある日のこと。
「欲しいものはありませんが、して欲しいことは……無くもない、です、けど……」
「なんだ遠慮か? 言うだけ言ってみろ」
「ええと……その。なにか楽しい思い出を、といいますか」
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DOODLEドクターTETSUにバニーさんの格好をさせるハッシュタグの正確な表記がわからないのであった※追記:正しくは #ドクターTETSUバニーガール部
ドクターTETSUバニーなんだっけ部 いつもの白いコート姿に違和感を覚え、僕はドクターTETSUを見た。ここ数日続いている寒さからか、コートの前を閉じている。年中ノースリーブで平気な人が、コートの前を? 玄関で彼を出迎えた僕は、体調でも崩したかと身構える。
だからドクターTETSUが変なカチューシャを頭につけていることなんて認識から外すべき些細なことだったのだ。
ドクターTETSUはコートを脱ごうとした。僕はその背後に立って、ドクターTETSUの肩からすべり落ちるコートを受け取った。
ドクターTETSUの整った背中の筋肉がむきだしになった。
「なんで裸なんですか!」
「変質者みてえに言うんじゃねえ」
くるりと振り向いたその姿を見た僕はコートを取り落とした。
2243だからドクターTETSUが変なカチューシャを頭につけていることなんて認識から外すべき些細なことだったのだ。
ドクターTETSUはコートを脱ごうとした。僕はその背後に立って、ドクターTETSUの肩からすべり落ちるコートを受け取った。
ドクターTETSUの整った背中の筋肉がむきだしになった。
「なんで裸なんですか!」
「変質者みてえに言うんじゃねえ」
くるりと振り向いたその姿を見た僕はコートを取り落とした。
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MOURNINGイベントで譲テツ新刊を買ってくれた人に無配おまけをつけようと思ってたけど間に合わなかったヤツです。ひとつ前に投稿した本のサンプルと合わせてごらんください。 1157kidd_bbb_g
PAST同居しはじめたばかりの頃の譲介とTETSUの会話。 pixivに置いてたやつ。カレーにおける福神漬けの その人は医者だと言った。およそそうは見えない、もっと胡乱な空気を纏っていたが。だから一緒に暮らすことになった最初の日、この人が改めて自己紹介をしたときに、僕はこう尋ねた。
「それ、本名なんですか」
「偽名使ってもしょうがねえだろ」
そうして僕は真田徹郎――ドクターTETSUと呼ばれる闇医者の弟子になった。高校に通う傍らで、違法行為の徒弟として医学を学ぶのだ。
ようやく患者が帰ったあとの深夜の食卓。僕はカレーの皿を、ドクターTETSUはコーヒーを注いだマグカップを持って席に着いた。
今日の夕食はドライカレーだ。挽肉と野菜を香辛料で炒め、米の上に載せている。
カレーを食べながら、僕は今日の患者について尋ねた。
1647「それ、本名なんですか」
「偽名使ってもしょうがねえだろ」
そうして僕は真田徹郎――ドクターTETSUと呼ばれる闇医者の弟子になった。高校に通う傍らで、違法行為の徒弟として医学を学ぶのだ。
ようやく患者が帰ったあとの深夜の食卓。僕はカレーの皿を、ドクターTETSUはコーヒーを注いだマグカップを持って席に着いた。
今日の夕食はドライカレーだ。挽肉と野菜を香辛料で炒め、米の上に載せている。
カレーを食べながら、僕は今日の患者について尋ねた。
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TRAINING譲テツ。ダッシュボードに手紙を残してから何年も後、譲介がTETSU先生を迎えに行く話。※追記:加筆修正した同人誌をとらのあなさんにて通販しています
https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031113228/
パパゲーノのゆくえ※パパゲーノ:オペラ「魔笛」の登場人物。恋人と引き離されて絶望し、自殺を試みるが思いとどまる。
「今日じゅうにT村まで帰るのは無理だろ。宿を取ってあるなら、そこまで送るぜ」
「それが、まだ。日本に着いてから探せばいいかと思って」
譲介は助手席の窓から、夜の東京の街を眺めていた。話しながら運転席へ向き直る。
「あのう、たとえばあなたの――」
「オレんとこは駄目だ」
TETSUが間髪入れずに拒否すると、譲介は声のトーンを落とした。
「まさか、廃病院とかに住んでるんじゃないでしょうね」
「……」
信号で車が停まる。ハンドルを握るTETSUは沈黙し、横目で譲介を見た。譲介は眉間に皺を寄せてTETSUを見つめている。
4693「今日じゅうにT村まで帰るのは無理だろ。宿を取ってあるなら、そこまで送るぜ」
「それが、まだ。日本に着いてから探せばいいかと思って」
譲介は助手席の窓から、夜の東京の街を眺めていた。話しながら運転席へ向き直る。
「あのう、たとえばあなたの――」
「オレんとこは駄目だ」
TETSUが間髪入れずに拒否すると、譲介は声のトーンを落とした。
「まさか、廃病院とかに住んでるんじゃないでしょうね」
「……」
信号で車が停まる。ハンドルを握るTETSUは沈黙し、横目で譲介を見た。譲介は眉間に皺を寄せてTETSUを見つめている。