.春涙.
REHABILITACIÓN土利前提、雑利利は出てきません。利を巡っての土と雑の戦闘シーン。
(いつかどこかで使いたいな、と思いながら供養)
「昨晩、利吉くんを抱きましたよ」
その言葉が落ちた瞬間、空気が弾けた。
土井は言葉も返さず、一閃、忍び刀を抜いて斬りかかる。
鞘を捨てた斬撃は、感情そのもの。怒りが刀を駆けていた。
「おや、冗談が通じませんね」
雑渡はくるりと身を翻し、棒手裏剣を数枚、扇状に投げ放つ。
土井は即座に身を伏せてかわし、地を蹴って斜めに跳び、距離を詰める。
「ふざけるな、貴様……ッ!」
追撃とともに、刀が唸る。雑渡は手裏剣を抜いて防ぎながら、わずかに後退。
金属と金属が激しくぶつかり、火花が飛び散る。
斬撃。回避。打ち合い。足さばきが地を鳴らし、互いの影が交錯する。
雑渡は笑みを浮かべたまま受け、かわし、時折棒手裏剣で牽制を放つ。
その余裕が、土井の怒りをさらに煽る。
580その言葉が落ちた瞬間、空気が弾けた。
土井は言葉も返さず、一閃、忍び刀を抜いて斬りかかる。
鞘を捨てた斬撃は、感情そのもの。怒りが刀を駆けていた。
「おや、冗談が通じませんね」
雑渡はくるりと身を翻し、棒手裏剣を数枚、扇状に投げ放つ。
土井は即座に身を伏せてかわし、地を蹴って斜めに跳び、距離を詰める。
「ふざけるな、貴様……ッ!」
追撃とともに、刀が唸る。雑渡は手裏剣を抜いて防ぎながら、わずかに後退。
金属と金属が激しくぶつかり、火花が飛び散る。
斬撃。回避。打ち合い。足さばきが地を鳴らし、互いの影が交錯する。
雑渡は笑みを浮かべたまま受け、かわし、時折棒手裏剣で牽制を放つ。
その余裕が、土井の怒りをさらに煽る。
おだんごふぁー
GARABATEAR⚠︎転生現パロ⚠︎中3
⚠︎未成年飲酒
⚠︎性的搾取
性描写ないけど内容に↑があるのでワンクいれました。
カップリングは特に固定してないけど私は勘くく竹くく工場の人間です。
五くくで仲良く一緒に住んでくれて良いよ 2178
れいりん
HECHO久々知の同室が尾浜じゃなかったらIF(勘くく)真っ黒尾浜が好きな方向け
⚠️捏造パーティー会場はこちらです
⚠️モブくく描写有
⚠️勘→→→→→→→→くく
⚠️いけどん
もし久々知の同室が尾浜じゃなかったらもし久々知の同室が尾浜じゃなかったら
ずっと嫌悪感を抱いていた。……訂正、嫌悪感ではないのかもしれない。少なくとも、良い感情ではないことは確かだ。
『お前が俺の同室? よろしくな!』
一年生の始めの頃、それこそ入学当初は気さくに話しかけてくれる良い奴だと思っていた。人に馴染むのが下手な俺をクラスの輪に入れてくれたり、授業の復習を手伝ってくれたり、感謝することも多かった。
違和感を抱き始めたのは、初めてのテストが返却された頃からだったと思う。
「今回のテストで、い組で一番点数が高かったのは久々知だ。皆、久々知を見習うように」
驚きに包まれる教室、疎らに聞こえてくる拍手。遠くから聞こえる「秀才だ」「い組の秀才だ」とささやかな尊敬の色を帯びた声。俺の手の中の答案用紙に書かれた百点の文字は堂々としていて、見ていて爽快な気分だった。努力が実るのは気持ちがいい。
6353ずっと嫌悪感を抱いていた。……訂正、嫌悪感ではないのかもしれない。少なくとも、良い感情ではないことは確かだ。
『お前が俺の同室? よろしくな!』
一年生の始めの頃、それこそ入学当初は気さくに話しかけてくれる良い奴だと思っていた。人に馴染むのが下手な俺をクラスの輪に入れてくれたり、授業の復習を手伝ってくれたり、感謝することも多かった。
違和感を抱き始めたのは、初めてのテストが返却された頃からだったと思う。
「今回のテストで、い組で一番点数が高かったのは久々知だ。皆、久々知を見習うように」
驚きに包まれる教室、疎らに聞こえてくる拍手。遠くから聞こえる「秀才だ」「い組の秀才だ」とささやかな尊敬の色を帯びた声。俺の手の中の答案用紙に書かれた百点の文字は堂々としていて、見ていて爽快な気分だった。努力が実るのは気持ちがいい。
donburako_6ro
HECHOこへ長で~~~っっっす!長雨の頃つつじの盛りも終わり、日ごと暑さが増してくる。そして毎年のごとく長雨が始まった。
長次は雨が好きではなかった。洗濯物がよく乾かないし、よほど気を付けないと屋外で本を持ち運べない。よってこのころの休日は大抵、じめじめとした気分のままに、既に何度も読み返した本の頁をぼんやり繰っている。
小平太も雨が好きではなかった。天気が悪くとも小平太は元気いっぱいなのだが、お日さまの光を浴びた方がもっと元気が出る気がするのだ。よってこのころの休日は大抵、早く夏になればいいのになあと思いつつ、自室で武器の手入れをしている。
ただ雨音だけが耳を和ませ、背には同室の重みがかかる。二人とも雨は好きではないけれど、こんな昼下がりがずっと続けばいいのにと思う。
321長次は雨が好きではなかった。洗濯物がよく乾かないし、よほど気を付けないと屋外で本を持ち運べない。よってこのころの休日は大抵、じめじめとした気分のままに、既に何度も読み返した本の頁をぼんやり繰っている。
小平太も雨が好きではなかった。天気が悪くとも小平太は元気いっぱいなのだが、お日さまの光を浴びた方がもっと元気が出る気がするのだ。よってこのころの休日は大抵、早く夏になればいいのになあと思いつつ、自室で武器の手入れをしている。
ただ雨音だけが耳を和ませ、背には同室の重みがかかる。二人とも雨は好きではないけれど、こんな昼下がりがずっと続けばいいのにと思う。
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HECHOこへ長と言い張る捨て猫①「今日のサークルの後、小平太の家行っていいか?」
同期に言われて私は躊躇った。
「ん~、今はな……」
「なんだ、彼女でも泊まってるのか?」
「いや、猫がいる」
「は?え?ちょっと前に行ったときはいなかっただろ」
「最近拾った」
「へえ……別に動物好きじゃないだろ」
「まあ。懐かれてもないし」
「想像つくわ」
「なんかさ、私が部屋にいるときはケージから全然出てこないんだよ。餌も、私が出かけてるか寝てる間しか食べないし」
「お前の声がデカいから怖がってるんだって」
「いや、家で一人で喋ったりしないぞ」
「それは意外」
失礼なことを言う同期を小突く。
そう、別に怖がられている感じはしないのだ。なのに全く私には近寄ってこようとしない。
1391同期に言われて私は躊躇った。
「ん~、今はな……」
「なんだ、彼女でも泊まってるのか?」
「いや、猫がいる」
「は?え?ちょっと前に行ったときはいなかっただろ」
「最近拾った」
「へえ……別に動物好きじゃないだろ」
「まあ。懐かれてもないし」
「想像つくわ」
「なんかさ、私が部屋にいるときはケージから全然出てこないんだよ。餌も、私が出かけてるか寝てる間しか食べないし」
「お前の声がデカいから怖がってるんだって」
「いや、家で一人で喋ったりしないぞ」
「それは意外」
失礼なことを言う同期を小突く。
そう、別に怖がられている感じはしないのだ。なのに全く私には近寄ってこようとしない。
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HECHOこへ長で~~~す!我啓蒙す「うおっ、何だ!?」
日課の早朝鍛練で私の前を走っていた長次が、前触れもなくぴたりと止まったものだから、私も慌てて立ち止まった。抗議の意もこめて長次の背中にどん、とぶつかる。
長次は黙ったまま前を見ている。
視線を追うと、大きな蜘蛛の巣が行く手を塞いでいた。昨日ここを走ったときにはなかったものだ。
長次は私ほど汚れることに無頓着ではないから、あれが髪に絡まることが嫌だったのだろうか。いやいや、それなら手で払えばいいではないか、と思いながら長次の顔を見る。
なるほど、と思った。
汚れるのが嫌とか、でも払うのは面倒とか、そういう地に足のついたことを考えている顔ではない。長次の心が、自分の体のありかを忘れているときの顔だ。
562日課の早朝鍛練で私の前を走っていた長次が、前触れもなくぴたりと止まったものだから、私も慌てて立ち止まった。抗議の意もこめて長次の背中にどん、とぶつかる。
長次は黙ったまま前を見ている。
視線を追うと、大きな蜘蛛の巣が行く手を塞いでいた。昨日ここを走ったときにはなかったものだ。
長次は私ほど汚れることに無頓着ではないから、あれが髪に絡まることが嫌だったのだろうか。いやいや、それなら手で払えばいいではないか、と思いながら長次の顔を見る。
なるほど、と思った。
汚れるのが嫌とか、でも払うのは面倒とか、そういう地に足のついたことを考えている顔ではない。長次の心が、自分の体のありかを忘れているときの顔だ。
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HECHOこへ長です。ある日の夢④私は学園の池を泳いでいた。
だがおかしい。いくら泳いでも池の縁にたどり着かない。その場で立ち止まろうとしたら、池の底に足が付かなかった。慌てて立ち泳ぎをする。いつもは浅い池なのに。
池には底がなくなっていた。深く、どこまでも水が続いている。ずうっと奥の方は暗くなっていてよく見えない。
その水の中、小平太が沈んでいくのが見えた。目を閉じている。顔が青白い。
さーっと血の気が引いた。まさかそんな、嘘だ。いや、まだ間に合う。すぐに助ければ。
潜ろうとするが、体が浮き上がってしまって、小平太にはたどり着けない。何度繰り返しても同じ。いくら水を蹴っても、小平太との距離は広がっていくばかり。小平太は暗い底の方へと沈んでいく。
587だがおかしい。いくら泳いでも池の縁にたどり着かない。その場で立ち止まろうとしたら、池の底に足が付かなかった。慌てて立ち泳ぎをする。いつもは浅い池なのに。
池には底がなくなっていた。深く、どこまでも水が続いている。ずうっと奥の方は暗くなっていてよく見えない。
その水の中、小平太が沈んでいくのが見えた。目を閉じている。顔が青白い。
さーっと血の気が引いた。まさかそんな、嘘だ。いや、まだ間に合う。すぐに助ければ。
潜ろうとするが、体が浮き上がってしまって、小平太にはたどり着けない。何度繰り返しても同じ。いくら水を蹴っても、小平太との距離は広がっていくばかり。小平太は暗い底の方へと沈んでいく。
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HECHOこへ長。ドルパロ。楽屋は昔からある言い方なんですね~ある日の夢③私は歌って踊るのが仕事のようだった。
その夢には同級生たちも出てきて、私と一緒に歌ったり踊ったりしていた。
我々は恋愛を禁止されていたが、小平太と私はそんなことを真面目に守る性質ではなかったので、こっそり恋仲になっていた。よく互いの家に泊まりに行った。大人の目を盗んで楽屋で口を吸った。仲間たちは見ないふりをしてくれていた。
目が覚めたあとも夢の中の気分は続いていて、小平太が先生の前で身を寄せてきたとき、思わず身体を引いてしまった。小平太が口をぽかんと開けて、少ししてから自分の身体の匂いを嗅ぎ始めたものだから、私は申し訳なくなった。お前が臭かったわけではないんだ。
284その夢には同級生たちも出てきて、私と一緒に歌ったり踊ったりしていた。
我々は恋愛を禁止されていたが、小平太と私はそんなことを真面目に守る性質ではなかったので、こっそり恋仲になっていた。よく互いの家に泊まりに行った。大人の目を盗んで楽屋で口を吸った。仲間たちは見ないふりをしてくれていた。
目が覚めたあとも夢の中の気分は続いていて、小平太が先生の前で身を寄せてきたとき、思わず身体を引いてしまった。小平太が口をぽかんと開けて、少ししてから自分の身体の匂いを嗅ぎ始めたものだから、私は申し訳なくなった。お前が臭かったわけではないんだ。
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HECHO1年生こへ長ですある日の夢②声が出なくなった。
喉ががらがらに掠れて、いくら息を絞り出しても音にならない。うーうー唸っているとみんなに笑われた。悔しくて大きな声で怒りたいのに、それもできない。自分の中にどんどんいらいらが溜まって、頭が熱くなって、破裂しそうだった。
「ちょおじ」
はっと目を開けると、小平太が私の顔を覗き込んでいた。
「うなされてたぞ」
「うん……、いやな夢見た」
「こわい夢?」
「声が出なくなって、だれにも言いたいことを分かってもらえないの」
半分布団に潜ったままぐずついた声で言うと、小平太は私の頭をぽんぽんと撫ぜた。
「夢の中で、私もちょうじの言いたいこと、分かってなかった?」
「こへいたは……、出てこなかった」
私は、夢の中の友人たちをよく思い返しながら答えた。小平太がにかっと笑う。
404喉ががらがらに掠れて、いくら息を絞り出しても音にならない。うーうー唸っているとみんなに笑われた。悔しくて大きな声で怒りたいのに、それもできない。自分の中にどんどんいらいらが溜まって、頭が熱くなって、破裂しそうだった。
「ちょおじ」
はっと目を開けると、小平太が私の顔を覗き込んでいた。
「うなされてたぞ」
「うん……、いやな夢見た」
「こわい夢?」
「声が出なくなって、だれにも言いたいことを分かってもらえないの」
半分布団に潜ったままぐずついた声で言うと、小平太は私の頭をぽんぽんと撫ぜた。
「夢の中で、私もちょうじの言いたいこと、分かってなかった?」
「こへいたは……、出てこなかった」
私は、夢の中の友人たちをよく思い返しながら答えた。小平太がにかっと笑う。
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HECHOこへ長です~~~ある日の夢①私は龍のお守り役の男だった。
私がめんどうを見ている龍は、力強い爪とふさふさのたてがみを持っていて、内心私はそのお守りをできるのが誇らしかった。
何をするのかというと、毎日うろこを水で磨いてやるという、ただそれだけの仕事なのだ。これをしてやるとき、私の龍は丸い目でこちらをじいっと見上げてくる。龍は何も喋らないし、私も何も喋らないが、私たちは互いへの気持ちを了解していた。
永い永い間私たちは共にいた。そうでなくなる時が来るとも思わなかったが、龍は私より先に死んだ。動かなくなった巨体は岩でできた彫刻のようだった。
私は新しい龍を宛がわれたが、何もかもがあの龍とは違っていた。
目を覚ました私は、隣の小平太が息をしていることにひどく安堵した。
322私がめんどうを見ている龍は、力強い爪とふさふさのたてがみを持っていて、内心私はそのお守りをできるのが誇らしかった。
何をするのかというと、毎日うろこを水で磨いてやるという、ただそれだけの仕事なのだ。これをしてやるとき、私の龍は丸い目でこちらをじいっと見上げてくる。龍は何も喋らないし、私も何も喋らないが、私たちは互いへの気持ちを了解していた。
永い永い間私たちは共にいた。そうでなくなる時が来るとも思わなかったが、龍は私より先に死んだ。動かなくなった巨体は岩でできた彫刻のようだった。
私は新しい龍を宛がわれたが、何もかもがあの龍とは違っていた。
目を覚ました私は、隣の小平太が息をしていることにひどく安堵した。
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HECHOこへ長。季節外れですみません。去る先達を待つ満開の桜の中に、男が二人うずくまっている。太い枝を選んで座り、木の下を通る道をじっと睨んでいる。誰かが通るのを待っているらしい。
一方は片膝を立て、もう一方はぶらぶらと両足を垂らして、並んで座っている。
時折、一人の男の目が涙でうるみそうになると、片割れが頬にちゅうと吸い付く。真新しい緑の衣が桜の中で戯れる様は、羽繕いする二羽のめじろを思わせる。
174一方は片膝を立て、もう一方はぶらぶらと両足を垂らして、並んで座っている。
時折、一人の男の目が涙でうるみそうになると、片割れが頬にちゅうと吸い付く。真新しい緑の衣が桜の中で戯れる様は、羽繕いする二羽のめじろを思わせる。
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HECHOこへ長未満な6️⃣ろ見送る文次郎が委員会にかかりきりな上、長次が足を捻挫したので、このところ私は一人で鍛練に出かけている。
左足を引きずって、長次は部屋と廊下を仕切る障子のところまで見送りに来てくれる。
「じゃ、行ってくるな」
長次が頷くのを見届けてから私は歩き出す。
廊下の曲がり角まで来たところで、何の気なしに振り返った。長次はまだ私の方をじっと見ていた。
(わっ!?)
驚いた。
跳ねる心臓を無視してぶんぶん手を振ると、軽く手を上げてから長次は部屋に引っ込んだ。
再び歩き出しながらも、早まった鼓動はなかなか収まらない。
私が気づいていなかっただけで、長次は今日までずっとああして、私の背中が曲がり角の向こうに消えるところを見ていたのだろうか。なんだか、「置いていかないでくれ」という声が聞こえるような顔だった。
346左足を引きずって、長次は部屋と廊下を仕切る障子のところまで見送りに来てくれる。
「じゃ、行ってくるな」
長次が頷くのを見届けてから私は歩き出す。
廊下の曲がり角まで来たところで、何の気なしに振り返った。長次はまだ私の方をじっと見ていた。
(わっ!?)
驚いた。
跳ねる心臓を無視してぶんぶん手を振ると、軽く手を上げてから長次は部屋に引っ込んだ。
再び歩き出しながらも、早まった鼓動はなかなか収まらない。
私が気づいていなかっただけで、長次は今日までずっとああして、私の背中が曲がり角の向こうに消えるところを見ていたのだろうか。なんだか、「置いていかないでくれ」という声が聞こえるような顔だった。
れいりん
LUTOとある城の調査忍務を任された五年生。順調だったが、捕まってしまうという予想外な展開に。そんな中兵助は城主に気に入られ、為す術もなく玩具同然の扱いを受ける。しかしそのことを知らない勘右衛門達は、城と兵助に対する不満が募るばかりで……⚠️キャラがキャラに酷いこと言う。閲覧注意
⚠️久々知が可哀想なのが好きな方向け
⚠️皆壊れてる
⚠️いけどん精神
⚠️モブくく
次の新刊に出来ればいいなの小説 21408
donburako_6ro
HECHOこへ長です。一年生のころ。初めての野営冷たい風に頬を撫でられて、薄く目を開く。あれ、長屋の壁が見えない。
「起きちゃった?」
小平太の声が降ってくる。いつもの元気な声と違って、押し殺したみたいな小さな声だ。数回まばたきをして、やっと今は野営の実習中なのだと思い出せた。
同じ班になったみんなの知恵をかき集めて、ようやく張れた天幕の下、横になった長次を小平太が見下ろしている。そうだ、小平太は一人で寝ずの番を。
「眠れないなら、こうしとく!」
小平太が長次の手をとって、指と指をきゅっと絡める。そんな、こんな子供っぽいこと、同級生たちがいるのに。
「恥ずかしいよ……」
「そうかなあ?他のやつらも、ほら」
言われて見渡すと、三々五々眠っている忍たまたちも、いつのまにか同室どうしでぴったりと身を寄せあっていた。
435「起きちゃった?」
小平太の声が降ってくる。いつもの元気な声と違って、押し殺したみたいな小さな声だ。数回まばたきをして、やっと今は野営の実習中なのだと思い出せた。
同じ班になったみんなの知恵をかき集めて、ようやく張れた天幕の下、横になった長次を小平太が見下ろしている。そうだ、小平太は一人で寝ずの番を。
「眠れないなら、こうしとく!」
小平太が長次の手をとって、指と指をきゅっと絡める。そんな、こんな子供っぽいこと、同級生たちがいるのに。
「恥ずかしいよ……」
「そうかなあ?他のやつらも、ほら」
言われて見渡すと、三々五々眠っている忍たまたちも、いつのまにか同室どうしでぴったりと身を寄せあっていた。
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HECHOこへ長です。たまにある光景委員会活動のない日、自主的な整理と称して書庫にこもることが、長次は好きだった。目についた本を手にとって書庫の床に座り込み、誰にも邪魔されないまま、飽きるまで文字の洪水に溺れるのだ。
本を開いてしばらくは、ざわざわと木の葉の擦れる音や、楽しげな誰かの声が耳に届く。だが読み進めるうちに、周りの音も気配も一切が消える。意識は書き手の故郷へと飛び、自分の手が頁をめくっていることもわからなくなる。目にうつるのは天竺の景色で、日差しに灼けついた熱い空気を確かに肌に感じる。
「……っ !」
長次はふと顔を上げ、ぼんやりと正面の書棚に視線をやった。ここはどこだろう。
頁に目を戻そうとすると、再び何かが聞こえた。
「ちょーじっ!」
517本を開いてしばらくは、ざわざわと木の葉の擦れる音や、楽しげな誰かの声が耳に届く。だが読み進めるうちに、周りの音も気配も一切が消える。意識は書き手の故郷へと飛び、自分の手が頁をめくっていることもわからなくなる。目にうつるのは天竺の景色で、日差しに灼けついた熱い空気を確かに肌に感じる。
「……っ !」
長次はふと顔を上げ、ぼんやりと正面の書棚に視線をやった。ここはどこだろう。
頁に目を戻そうとすると、再び何かが聞こえた。
「ちょーじっ!」
donburako_6ro
HECHOこへ長です。お前を愛してもいいか?長次は昔からテストが得意ではなかった。
本を読んで知識を蓄えることは好きだ。だが問われたことに当てはまる知識をひねり出して、さらにそれが唯一の正解でなかったらバツをつけられる、というのがどうも腑に落ちない。幼い頃は答案用紙に向かうだけで、自分自身の価値を評定されているように感じて不安だった。だから座学のテストよりも、鍛練で体を動かす方がずっと好ましかった。
さて今、目の前には同室の男がいて、長次にとてつもない難問を吹っ掛けている。けれども不安は感じなかった。自分よりも相手の方がよっぽど不安そうな顔をしているし、どんな答えを差し出そうとも、この男が長次にバツをつけることはないと知っているからだ。
301本を読んで知識を蓄えることは好きだ。だが問われたことに当てはまる知識をひねり出して、さらにそれが唯一の正解でなかったらバツをつけられる、というのがどうも腑に落ちない。幼い頃は答案用紙に向かうだけで、自分自身の価値を評定されているように感じて不安だった。だから座学のテストよりも、鍛練で体を動かす方がずっと好ましかった。
さて今、目の前には同室の男がいて、長次にとてつもない難問を吹っ掛けている。けれども不安は感じなかった。自分よりも相手の方がよっぽど不安そうな顔をしているし、どんな答えを差し出そうとも、この男が長次にバツをつけることはないと知っているからだ。
donburako_6ro
HECHOこへ長です。例の回を見ました。お絵描き 鍛練仲間の同室が、後輩にせがまれて妙なアルバイトをしてきたらしい。鍛練仲間がそれはそれは楽しそうに教えてきた。私の同室の男はすっかり興味を惹かれたらしく、私も絵の上手になるのだと息巻いている。てっきりモデルは件の美しい同級生に頼むのかと思いきや、女装用の服を引っ張り出してきた同室は、それを私に着せかけてくる。筆を手にああでもないこうでもないと唸っていたかと思うと、がくりと肩を落とす。
「うまく描けないのか」
「うーん、下手ではないと思うのだがな……なかなか似ないのだ」
手元を覗くと、とても人間とは思えない黒い塊が力強い筆遣いで描き散らされている。
「……」
「わっ、見るな見るな!」
似ていないから恥ずかしいと照れるこれが、絵の上手になる見込みはないだろう。私はそっとその胸にもたれかかった。
495「うまく描けないのか」
「うーん、下手ではないと思うのだがな……なかなか似ないのだ」
手元を覗くと、とても人間とは思えない黒い塊が力強い筆遣いで描き散らされている。
「……」
「わっ、見るな見るな!」
似ていないから恥ずかしいと照れるこれが、絵の上手になる見込みはないだろう。私はそっとその胸にもたれかかった。